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高校野球の雑談①どこのユニフォームが好きですか?

楊順行スポーツライター
北陸のユニフォーム。かつての阪急によく似ている(撮影/筆者)

 オリックスがこどもの日バージョンで胸文字などがカタカナのユニフォームを着用したり、海の向こうではダルビッシュ(パドレス)のパステルカラーが目にチカチカしたり……。いつごろからだろうか、プロ野球ではイベントがらみの限定ユニフォームが目を楽しませてくれるようになった。ただ、このSDGsの世の中、ほんの何回かしか着ないユニフォームの行方が気になるところだ。

 高校野球でも、34年ぶりにセンバツに出場した北陸(福井)のユニフォームが「かつての阪急ブレーブスにそっくり」と話題になったが、それは昨年10月、このページで紹介したのが発端だったのではないかとひそかに自負している。2019年の夏、県内のライバル・敦賀気比のコーチから同校に移った林孝臣監督曰く、

「就任したとき、学校がなにをしてもいいといってくれたので(笑)、ユニフォームを変えたんです。県内には、赤(を基調としたユニフォーム)のチームがなかったし、強かった時代の阪急ブレーブスにあやかりたい、と。阪急の流れを汲むオリックスが22年、先に優勝しましたが……」

 さて、これは個人的な好き嫌いと断っておく。センバツで優勝した山梨学院のユニフォームは、ちょっとピンとこない。ストッキングのほとんどの部分と上着の袖口、さらに胸文字の縁取りに明るいブルーを配したのが、22年のセンバツだ。なんでも「C2Cブルー」というそうで、同校を運営する法人名が「C2C Global Education Japan(シートゥーシー グローバル エデュケーション ジャパン)」に、スクールカラーがターコイズブルーに変更されたことから、ユニフォームも一新したらしい。そのときはアンダーシャツは黒だったけど、同年夏からそれも「C2Cブルー」になった……のだが、どうも見た目がフワフワする。

高校野球はシンプルがいい

 またまた個人的な話をすれば、早稲田カラーが好きだ。白地に白のアンダーシャツ、白の帽子、ロゴとストッキングのくるぶしあたりまでがエンジの早稲田実(東京)。思えば自分の中学、高校の野球部がそれだったし、どこか落ち着く。ただし中学のユニフォームは、シャツが黒。高校のユニフォームはシャツがエンジ。本家に遠慮しているわけではなかろうが、そっくりそのまま、というわけではなかった。もっとも早実のユニフォームも、王貞治の時代の写真を見ると襟に1本、ソデに2本、そしてズボンにも1本線が入っていたし、そもそも色も違っていた。

 高校球界を見渡すと、もろに早稲田カラーのユニフォームの学校は意外と少ない。土佐(高知)、東筑(福岡)あたりだろうか。強豪校では松山商(愛媛)が近いが、シャツがエンジで、しかも攻撃のときヘルメットが黒というのがどうも落ち着かない。同じ“シャツエンジ組”なら、常総学院(茨城)のほうがすっきりしている。

 白地が基調で、ロゴなどの基本カラーが紺、というのはけっこう多い。甲子園史上初の完全試合を達成した松本稔の前橋(群馬)がそうだし、伝統校の高松(香川)、よく見ると日大三(東京)あたりもこれだ。

 日大三は左胸に校章があしらわれているが、左胸に大きくアルファベット1、ないしは2文字、というのも高校野球らしいスタイルだ。岩手の古豪・福岡のH、小倉(福岡)のK、下関商(山口)のS、福島商のFc、膳所(滋賀)のZ……アニメ『巨人の星』では、プロ野球チームのユニフォームが胸に1文字で、あれは明らかに作業プロセス上の手抜きだろうが、高校野球の1文字ユニフォームはいい。

 69年、初めて甲子園に出てきた東海大相模(神奈川)のタテじまを見たときは新鮮だった。これも“あり”か、と思った。胸の筆記体のロゴと合わせて、あか抜けていた。たとえば23年のセンバツなら東海大菅生(東京)を含む7校がタテじまで、いまでは一大勢力。ただ常葉大菊川(静岡)のヤンキースもどきは、胸のTKの文字が無理矢理すぎる気も……。タテじまのひとつ・帝京(東京)は、甲子園に縁があるように阪神にあやかったものだが、プロチームの模倣はうまくいかないことがある。92年夏、もろにオリックスのパクリだった能代(秋田)、97年、西武のビジターばりに青かった文徳(熊本)は、定着したのだろうか。

 高校野球のユニフォームは、シンプルがベストだと思う。素人が変に凝ろうとするから、収まりがつかなくなる。白地に無難な紺か黒、あるいはエンジ、できれば花文字のロゴ。早実はもちろん立て襟が復活した中京大中京(愛知)、PL学園(大阪)あたりが好ましい。23年センバツ出場校では、グレー地の仙台育英(宮城)と慶応(神奈川)、古豪の東邦(愛知)、龍谷大平安(京都)もシンプルでいい。

 もっとも、われわれどっぷり昭和世代には、智弁学園(奈良)が出てきたときのあの赤が奇異に映ったものだが、近年の高校野球ファンには智弁のユニフォーム、好感度が高いのだとか。それも、智弁和歌山を含めた両校の実績があるからだろう。してみると山梨学院のC2Cブルーも、同校が強くなれば、すんなりと風景にとけ込むのかもしれない。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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