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[高校野球]甲子園通算勝利数、ベストテンはどこ?

楊順行スポーツライター
大阪桐蔭は2018年、史上初めての2度目の春夏連覇(写真:岡沢克郎/アフロ)

 選抜高校野球大会と、全国高校野球選手権大会。第1回のセンバツ(当時は全国選抜中等学校野球大会)は1924年だったから、来年がちょうど100周年になる。1世紀を積み重ねてきた両大会の歴史。47都道府県のうち、もっとも勝ち星を上げているのはどこか。以下にランキングを示してみた。表は左から順位、都道府県名、春夏通算勝敗数、()内はそのうち選抜大会、選手権大会で○数字は引き分け。さらに勝率、選抜大会優勝回数、選手権優勝回数の順。

1  大 阪 394勝230敗(212⑤140 182-90).631 12 14

2  兵 庫 320勝248敗(176③151 144-97).563 6 7

3  東 京 316勝267敗(132①125 184①142).542 5 7

4  愛 知 309勝205敗(176③112 133-93).601 11 8

5  和歌山 233勝189敗(107②109 126①80).552 5 8

6  広 島 215勝153敗(96②75 119①78).584 5 7

7  神奈川 210勝130敗(81①54 129-76).618 7 7

8  京 都 207勝183敗(83①90 124①93).531 2 4

9  高 知 191勝127敗(93-64 98-63).601 2 2

10 愛 媛 188勝128敗(66-58 122①70).594 4 6

 なんといってもすごいのは大阪で、もしこの夏に大阪代表が優勝したら、400勝にも届こうかという勢いだ。春夏の優勝回数26回もダントツ。どちらも10回以上で、ほかにどちらかで10回以上優勝しているのは愛知のセンバツ11回しかない。通算勝率も、2位の神奈川を引き離すトップだ。

 とくに2010年代以降は大阪桐蔭の荒稼ぎが目立つ。12年、18年の春夏連覇に加え14年夏、17年春と、12年以降春夏通算21大会(中止になった20年を除く)のうち6回を優勝し、その期間55勝9敗である。

 大阪といえばPL学園も、KKのいた3年間を含む1980年代で5回優勝し、44勝4敗という驚異的な成績を残しているが、同じ10年間で区切れば12〜22年の大阪桐蔭は52勝8敗と、勝率はともかく勝ち数ではあのころのPLをもしのぐのだ。

 そのPLがやや失速した2000年代の大阪は、さほど勝ち星を上げていない。08年夏の大阪桐蔭の優勝はあるものの、春夏通算30勝26敗で、センバツに関しては15勝16敗と負け越している。それでも、弱小県なら100年かかってようやく達する勝ち星だが。

 そして大阪、兵庫、愛知は、センバツの通算勝利数が夏のそれを上回っている。強豪府県とあって、基本は1代表の夏に比べ、春は複数のチームが出場することも多いためだろう。春の勝ちが夏を上回るのは、この3府県のみ。夏の勝ち星は、74年以降2代表が出場する東京がトップだが、記念大会以外は1校しか出ない大阪が、夏の勝利数でその東京に迫るのもすごい。

 19年に東邦がセンバツで優勝した愛知は、それにより300勝カルテットの一角に加わった。これに次ぐのは和歌山で、45勝している和歌山中(現桐蔭)をはじめ草創期の強豪、そして90年代中盤から力をつけた智弁和歌山の70勝が大きい。ただ、トップ4との差は大きく、300勝まではまだ時間がかかるだろう。

 以下京都まで、8都府県が200勝以上で、ここまでが日本の高校野球ベスト8といえそうだ。ベストテンの残り2つは高知と愛媛の四国勢。特筆は9位の高知で、実は戦前はまったく甲子園出場がない。つまり、戦後だけでベストテンに入っているわけだ。

甲子園通算100勝以上は47都道府県の半分以上? 以下?

 さらに、11位以下を続ける。

11 福 岡 155勝171敗(62①83 93-88).475 0 4

12 奈 良 148勝124敗(60-64 88-60).544 2 2

13 千 葉 145勝118敗(46-40 99-78).551 0 3

14 静 岡 143勝155敗(56-69 87①86).480 4 1

15 岐 阜 142勝116敗(67①48 75①68).550 3 1

16 徳 島 139勝111敗(73⑤52 66①59).556 5 1

17 香 川 133勝133敗(63-63 70-70).500 3 2

18 埼 玉 120勝99敗(49①34 71-65).548 2 1

19 山 口 118勝132敗(36-59 82-73).472 1 1

20 北海道 118勝244敗(46-86 72②158).326 0 2

21 宮 城 112勝107敗(34-40 78-67).511 0 1

22 岡 山 109勝121敗(45①55 64-66).473 1 0

23 熊 本 107勝110敗(41-46 66①64).493 1 0

24 群 馬 106勝117敗(36②45 70-72).475 0 2

25 栃 木 104勝100敗(43②37 61-63).510 1 2

26 沖 縄 102勝86敗 (31-33 71-53).543 3 1

 ここまでが100勝以上。沖縄は21年夏に、通算100勝に達した。初出場は58年だったから、高知同様急ピッチで勝利を積み重ね、60年強で大台に到達したことになる。

 この100勝クラブ、47都道府県の半分強にあたるから、プロ野球ならさしずめAクラスか。ただ、Aクラスでも負け越しはあって、福岡、静岡、山口、北海道、岡山、熊本、群馬がそれにあたる。宮城は、27年の夏に仙台一中が県勢として初出場して以来、ずっと黒星が先行してきたが、昨夏の仙台育英の優勝で借金を完済、勝率5割以上の仲間入りをした。

 春夏の内訳を見るとほかにも、愛媛、神奈川、千葉、宮城あたりの夏の強さ、逆に徳島を筆頭に高知、香川の四国勢が春に強いことがうかがえる。(つづく)

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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