Yahoo!ニュース

[高校野球]2022年の私的回顧(5) 2023年も、大阪桐蔭が高校球界をリードする?

楊順行スポーツライター
神宮大会は、大阪桐蔭が史上初の連覇(撮影/筆者)

「すべての精度。桐蔭マニアの僕としては、追いかけるべきすばらしいお手本だと確認した試合でした」

 神宮大会準決勝で、大阪桐蔭に4対5と惜敗した仙台育英(宮城)・須江航監督の言葉である。2022年のセンバツを制した大阪桐蔭と、夏の選手権を制した仙台育英。意外なことに、同じ年の春夏の王者が、神宮大会で対戦するのは史上初のことだった。まあ、どちらも新チームになっているのだが。その試合を制した大阪桐蔭は、やはり史上初めて2年連続同じカードとなった決勝でも広陵(広島)に逆転勝ち。もうひとつおまけに史上初めての大会連覇を飾ることになる。

 それにしても強い。かつて全盛を誇った池田(徳島)、PL学園(大阪)よりも、その牙城は強固かもしれない。池田には夏春連覇、PLには春連覇、春夏連覇があるが、2010〜20年代にかけての桐蔭には2回の春夏連覇、春連覇、さらに神宮連覇まであるのだ。こうなると残る偉業は、唯一の夏の甲子園3連覇(1931〜33年、中京商[現中京大中京・愛知])、97〜98年に横浜(神奈川)が達成した神宮+春夏連覇+国体という、4大会制覇の公式戦不敗記録しかないのではないか。

42勝1敗。勝ち星では根尾世代を上回る

 4大会制覇に関して、桐蔭が惜しかったのは根尾昂(現中日)らがいた17〜18年だ。18年のセンバツで、歴代3校目の春連覇を飾ると、春季大阪府大会から近畿大会、夏の北大阪大会、夏の甲子園、さらに国体まで29連勝。台風の接近で準決勝以降が中止になった国体を優勝と数えれば、春夏連覇+国体の同一年度三冠。17年の秋も、大阪府と近畿大会を制覇し、神宮大会に出場したが、ここでは準決勝で創成館(長崎)に敗退。同一チーム不敗の完全制覇まであと1歩の、公式戦41勝1敗だった。

 藤浪晋太郎(いまのところ阪神)がいて、やはり春夏連覇した12年のチームはどうか。センバツから春の大阪と近畿、夏の大阪と甲子園、国体と無敗で優勝(このときの国体も台風で決勝が中止となり、仙台育英との両校優勝扱い)。前出の横浜に次ぐ、2校目の同一年度三冠を遂げている。だが前年秋は、大阪を制したものの近畿大会では2回戦で天理(奈良)に敗退。神宮大会への出場はかなわず、公式戦は40勝1敗だった。

 21〜22年のチームも、ヒケをとらない。21年秋は大阪府大会、近畿大会から14連勝で神宮大会初優勝を果たし、22年もセンバツ、春の大阪と近畿、夏の大阪を勝ちっぱなしで連勝を36まで伸ばす。だが、40連勝を目前にした下関国際(山口)との準々決勝は9回に逆転を許し春夏連覇は消滅。それでも国体で優勝したから、神宮、センバツとの三冠を成し遂げた。公式戦通算では42勝1敗。勝ち星に関しては、17〜18年のチームを上回る。

 そして、現チーム。秋の大阪、近畿、神宮を制して目下15連勝中だ。来春のセンバツでも当然、優勝候補の筆頭。神宮大会の決勝では、ラッキーもあって広陵を逆転しており、西谷浩一監督は、

「完全な負けゲームでしたが、粘り強く戦えた。発展途上のチームにとって、勝ち切れたことは大きな財産です」

 と評価する。そういえばやはり神宮を制した前チームでも、「旧チームのレギュラーはほとんどいず、発展途上のチーム」といいながら、22年のセンバツを制したんだよなぁ。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

楊順行の最近の記事