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DeNA・池谷蒼大がプロ入り以来の無失点記録を継続! まだ8回3分の2だけど……

楊順行スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

 ありゃ、っと思った。横浜DeNA・池谷蒼大のことだ。昨晩の阪神戦では、救援で1イニングを無安打2三振。プロ2年目、通算8試合目の登板で初勝利を飾った……のはいいのだが、腕の位置が記憶と違う。静岡高、そして社会人のヤマハと見てきた池谷は、菊池雄星(当時西武、現ブルージェイズ)を参考にした左腕の本格派だったのだ。それが、サイドハンドに変身している。

 静岡・浜松市で育った池谷は、静岡高では2016年の秋季東海大会で優勝し、17年センバツに出場。そこでは1回戦を突破したあと2回戦で、優勝する大阪桐蔭と対戦した。初回こそ打ち込まれたが、2回以降は最速144キロの速球主体に7回まで0を並べ、9回途中まで7つの三振を奪っている。

 高卒後は「小学校時代、野球教室に参加した記憶があります。(フェリペ・)ナテルさんのサインをもらった記憶がある」という地元のヤマハ入り。1年目こそ、社会人のレベルの高さに戸惑ったが、

「バットが高校の金属から木に変わり、"ちょっと芯をずらせば飛ばないな""球の強さがあれば詰まらせられるな"と感じました」

 とポジティブだった。むろん、目論見通りにいくほど甘くはない。ストレートの力を求めたフォームはうまくいかず、まだ体に強さがないため肩を痛めた。だが19年、石井隆之投手コーチが就任すると、同じ高卒左腕だったこともあり波長が合った。さらに体幹や柔軟性など、1年目から取り組んだトレーニングの成果もあり、最速は145キロに伸びた。おもに救援で公式戦の登板機会を増やしたこの年は、17回で18三振という成績を残している。

現在無失点、そして奪三振率も高いぞ

 そして「自分の感覚よりも、球の強さが出てきたと周りにいわれます。打者の反応を見ても、それは感じますね」と自信を持って臨んだ3年目。上げた右足でタメをつくるフォームと、切れ味を増したチェンジアップなどのコンビネーションでエースに成長し、いまだ健在のナテルとの二本柱で、チームを都市対抗出場に導くことになる。

 ドラフト5位でプロ入り1年目の昨年は、6試合6回3分の2と投球回こそ少ないものの無失点。ただ、4月10日の阪神戦では1イニング3盗塁を許し、ダイナミックなフォームの課題を露呈。二軍落ちしたのを機に、クイックモーションの習得に取り組んだという。

 ファームでは、意図的に走者のいる場面を任され、36試合に登板。変化球の精度も磨き、9月に再び一軍に登録されると、ヤクルト戦でクリーンアップを含む打者7人を無安打、2回を1四球無失点に抑えた。同年齢の主砲・村上宗隆との初対決は中飛に打ち取っている。

 報道によると「また村上と対戦できるように」と迎えた今季は、左キラーに活路を見いだし変則フォームに改造。それが「ありゃ?」と感じた理由だったわけだ。もともと中学時代から、左利きにもかかわらず、二塁や遊撃もこなしていたほど器用だから、新しいフォームもすんなりとはまったのかもしれない。

 今季は二軍スタートも、チームに新型コロナウイルスの感染者が多数出たこともあり、4月に一軍登録された。いまのところ2回を無安打で、プロ入り以来の連続無失点も8回3分の2。無走者記録を続ける佐々木朗希に比べればささやかだが、これもどこまで伸びるかが楽しみだ。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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