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センバツ出場校が決定! 1年生スラッガー『ビッグ3』が大注目

楊順行スポーツライター
昨夏の甲子園は無観客。センバツは、通常開催できるだろうか(写真:岡沢克郎/アフロ)

 オミクロン株で列島は厳戒態勢だが、プロ野球のキャンプインが迫り、いよいよ球春間近。今日28日は、第94回選抜高校野球大会(3月18日開幕)の選考委員会が開かれ、出場32校が決まる。なんといっても注目は、スケールの大きい1年生スラッガー『ビッグ3』だ。

 超高校級のスラッガー3人が、しかも1年生(大会時は新2年生)がそろい踏みするというのは、きわめて希有な例だろう。その3人、佐々木麟太郎(花巻東・岩手)、真鍋慧(広陵・広島)、佐倉侠史朗(九州国際大付・福岡)。

 まず、佐々木麟太郎。勝海舟(幼名・麟太郎)が好きな父・佐々木洋監督の命名だ。優勝した秋季東北大会では三番として打率・385、1HR、4打点。秋の日本一決定戦・明治神宮大会でも、開幕戦から見せてくれた。

 国学院久我山(東京)戦。初回の打席、2球目を叩いた打球が弾丸ライナーで右翼席に飛び込む。高校通算48号は、高校の3年間で56本塁打した先輩・大谷翔平をはるかにしのぐ超ハイペースだ。

「たくさんの方に応援していただき、いい形で先制点を取れてよかったです。ただホームランというのは、そのときの状態を示す結果だと思っていて、あまり意識していません」 

 とは本人だが、東北大会中に左すねを疲労骨折した「そのときの状態」での一打だから恐れ入る。

高橋由伸? バリー・ボンズ?

 威圧感あふれるスイングは中学時代、大谷の父・徹さんが監督を務める金ヶ崎シニア時代に築いたものだそうだ。その中学時代には、「たまたま抽選で当たり(笑)」高橋由伸氏(元巨人)からリモートで指導を受ける機会があった。そのときに教わった、「上からさばくようなバットの出し方を心がけています」。なんでも、メジャー歴代最多の762本塁打を記録しているバリー・ボンズも参考になっているそうだ。

 チームは準決勝で広陵に敗れたが、その試合でも佐々木は、一時の7点差から1点差に迫る2ラン。3試合で10打数6安打2HR、しかも9打点と大暴れした。

 花巻東が敗れた広陵には、中井哲之監督からまさに『ボンズ』のあだ名を授かった真鍋がいる。「スイングスピードは、歴代でも最高じゃないですか。しかも、スイングが柔らかいから、変化球にも対応できる」というのが、中井監督の評価。本人曰く、

「中学時代から、水の重みを利用したトレーニングなどでパワーをつけました。スイングスピードは150キロくらいです」

 高校生のスイングスピードは、平均で120キロ前後というから、これはもうべらぼうな数字。花巻東との準決勝では、佐々木よりお先に2回、通算10号となる右越3ランをぶち込んでいる。真鍋は、準優勝したこの大会で15打数8安打6打点と、佐々木にヒケをとらない。広陵といえば2017年夏、中村奨成(広島)が一大会6本塁打の甲子園記録を達成しているが、「中村みたいに大舞台に強くなってくれれば」(中井監督)、センバツでの量産があるかもしれない。

 また同じ日には、九州国際大付の佐倉も大阪桐蔭戦でライトへ先制ホームラン(通算8号)を記録。重心を低くし、バットを高く構える西武・森友哉に似たフォームから、クラーク国際(北海道)との初戦でもダメ押しのタイムリーを放っている。桐蔭には敗れたものの、佐倉も2試合で通算9打数3安打、1HRの2打点で、

「いまは全然向こうが上ですが、東の佐々木、西の佐倉といわれるようになりたい」

 と、お互いの存在を意識はしているようだ。佐々木は183センチ117キロ、真鍋189センチ89キロ、佐倉183センチ106キロと、1年生とは思えない堂々たる体躯も、ビッグ3にふさわしい。同じ日に神宮でアーチをかけるなど、目に見えない華もある3人。センバツでもアーチの競演となれば、大いに盛り上がることが確実だ。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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