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私的興味の夏の甲子園!(7) 知ってますか? 甲子園でガソリンを燃やしたことがある

楊順行スポーツライター
(写真:アフロ)

 甲子園は19日も雨にたたられ、第1試合が5回裏途中でノーゲームに。またも日程の変更を余儀なくされ、決勝は現時点ですでに、史上最も遅い8月29日となった。

 とにかく異常である。こちらも、甲子園にいる間に「暑いね」という言葉を今年はまだ一度も発していない。白状すると19日は、第1試合がノーゲームとなったあと、「3時開始を目ざす」という第3試合を待たずにホテルに戻った。あの田んぼのようなグラウンド状態では、3時開始は無理だろう……と決め込んだのだが、その時間にテレビをつけてみると、京都国際と前橋育英の第3試合は、なんと2時57分にプレーボール。あらためて甲子園の水はけのよさ、阪神園芸の「神整備」に敬意を表する。

 ただ、甲子園というと水はけがいい印象があるだろうが、もともと河川敷を埋め立てた土地のため、1924年に開場してからしばらくは、大雨が降るとすぐに試合ができなくなっていたのだ。

 28年夏の全国中等学校優勝野球大会(いまの全国高校野球選手権大会の前身)は、準決勝が雨のために2日順延した。3日目にようやく雨はやんだが、グラウンドは水がたまっていて、とうてい試合ができそうにない。

 そこでどうしたか。なんと、グラウンドにガソリンをまいて火をつけ、乾かして試合を強行するという挙に出た。なんとも無茶で、いまではとても考えられない。そもそも、火をつけてグラウンドは乾いたとしても、土の状態は最悪になる。しかも強烈なニオイが残るから、プレーする選手も見ている観客も大変だっただろう。

 そして、そこまでしてせっかく試合開始にこぎつけたはいいものの、松本商(今回も出場している現松商学園・長野)対高松中(香川)の試合は、0対3と高松劣勢の6回、無死二塁となったところで、またも無情の雨。2時間20分の中断を経ても降りやまず、大会初の雨によるコールドゲームとなった。現在の規定では、6回の攻撃中で続行不可能ならノーゲーム扱いなのだが……。

 準決勝を勝ち上がった松本商は、結局その大会で優勝を果たしている。対して、敗れた高松中はこれ以後、春夏を通じて一度も準決勝まで進んでいない。ちなみに阪神園芸は、68年の設立。この時代に「神整備」があればねぇ。今回はちょっと短めで失礼しました。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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