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2020年東京都知事選 小池知事の「再選可能性」

米重克洋JX通信社 代表取締役
(写真:つのだよしお/アフロ)

今年7月、東京オリンピック直前に行われる東京都知事選挙。小池百合子東京都知事は未だ再選出馬を表明していないが、各党は小池知事出馬を前提に「勝てる対抗馬」の擁立を模索している。そこで、小池知事が再選される可能性はどの程度なのか、弊社(JX通信社)調査をもとに分析してみたい。

無党派と自民支持層に支えられる小池知事

昨年10月下旬の小池知事の支持率(最新の弊社調査)を国政政党の支持層別に見ると、無党派層と自民党支持層のそれぞれで過半に達していることが分かる。無党派層は全体の37%、自民党支持層は33%だから、この2つの層が占める割合は合計7割に達する。その2大ボリュームゾーンのそれぞれで過半から支持を得ていることが、小池知事の「強さ」を象徴している。

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実は、こうした状況は前回の2016年都知事選から「希望の党」結党後の一時期を除いて変わらない、一貫した傾向だ。2016年都知事選では、自民党は岩手県知事や総務相を歴任した増田寛也氏(現日本郵政社長)を擁立したが、増田氏の得票は179万票にとどまり、小池知事の291万票に遠く及ばなかった。この時、増田氏は自民党支持層の4割前後と無党派層の2割前後しか固められなかったことが当時の各社出口調査から明らかになっている。

増田氏は地方自治の専門家であり、政官界でこそよく知られた存在だが、東京の一般有権者に広く知られた存在であるとは言い難い。そうした人物に、仮に「自民党」の金看板をつけて戦っても、とりまとめられるのは自民党支持層の半分未満に限られるー これが、2016年都知事選の結果から得られる教訓だ。

加えて、戦後公選都知事で再選を目指して出馬した現職が落選したことは1度もない。更に、2期目の選挙に挑む現職は例外なく自身の最高得票を獲得してきた。これが都知事選の歴史だ。こうした状況こそが、自民党東京都連の候補者擁立を極端に難しくしている。

では、自民都連が「勝てる候補者」を立てられる可能性はあるのだろうか。

小池知事に「勝てる候補者」の2条件

先に触れたように、小池知事は無党派層と自民党支持層それぞれで過半の支持を獲得している。従って、政党支持層の内訳をベースに考えた場合、自民党東京都連の候補者には「自民党支持層を小池知事よりも有利な配分で獲得できること」、且つ「無党派層でも小池知事以上に広い支持を得られること」の2点が求められる。

前者に必要なのは、元々自民党議員であり且つ閣僚経験もある小池知事を上回る「自民党色」であり、後者に必要なのは小池知事と同等以上に高い知名度だ。この2条件をいずれも満たし得る候補者は東京・中央政界いずれにも殆どいない。加えて、安倍首相や二階幹事長が小池知事の再選を容認ないし支持する発言が伝わっていることにも留意が必要だ。自民党都連が立てた候補者に、肝心の自民党支持層がついていかない「名分」が増えるからだ。

更に、国政では自民党と連立を組む公明党は、都議会では「小池知事の与党」として振る舞っている。山口代表も年始に「都政の継続性を活かす」と発言し、小池知事再選に期待感を示すような発言をしている。「知事与党」の立場を変えて、自民党都連の候補者を支援する兆しは全くない。こうした環境からも、自民党都連の候補者が小池知事に勝てる可能性は前回2016年以上に低くなっていることが分かる。

知事選の結果は来年の都議選にも影響?

それでも自民党都連が自ら候補擁立に漕ぎ着けて、小池知事と一戦交えることになったとする。そこからまた1年と経たずに今度は東京都議選が行われる。前回2017年の都議選で小池知事率いた都民ファーストの会の都議が大量当選したが、彼らが再選をかけた選挙に臨むわけだ。結果、知事選の構図を引きずって「小池対反小池」の構図がまたも再現する可能性が高い。

前回都議選で都議会自民党は改選第3党に転落する惨敗となったが、知事選で敗北することで、その後の都議選でも再び議席を伸ばせない選挙になるリスクもある。二階幹事長はそれを懸念しているから都知事選で「勝つことが大事」と発言しているのではないだろうか。

勝てる候補者の擁立において、厳しい現実に直面しているのは野党も同じだ。国政野党は小池知事の対抗馬となる候補を「野党共闘」で擁立する方針だと伝えられている。しかし、立憲民主党と国民民主党の支持基盤である連合東京は、小池知事支持に傾いていると伝えられる。更に、上記でも紹介した弊社・JX通信社の調査(昨年10月下旬時点)で、国政政党としての立憲民主党を支持するとした層の約6割は小池知事を支持していることも分かっている。野党各党は、ボリュームが大きいとは言えない党支持層を小池知事に更に分断されているのだ。

こうした状況を踏まえると、小池知事は舛添前知事級の致命的スキャンダルないし健康問題に見舞われない限り、2016年と同等以上の得票で再選される可能性が高い。

JX通信社 代表取締役

「シン・情報戦略」(KADOKAWA)著者。1988年(昭和63年)山口県生まれ。2008年、報道ベンチャーのJX通信社を創業。「報道の機械化」をミッションに、テレビ局・新聞社・通信社に対するAIを活用した事件・災害速報の配信、独自世論調査による選挙予測を行うなど、「ビジネスとジャーナリズムの両立」を目指した事業を手がける。

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