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豊洲新市場へ「移転すべき」37%、反対上回る=JX通信社 都内世論調査第3回

米重克洋JX通信社 代表取締役
「豊洲は安全」と小池百合子知事を強く批判する石原慎太郎元知事(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

「科学が風評に負けることはあってはならない」ー 厳しい追及を尻目にそう言い切った石原慎太郎元知事の言葉は、都民の世論にどう影響したのか。

7月2日投開票の東京都議会議員選挙に向けて、筆者が代表を務める報道ベンチャーのJX通信社では、1ヶ月おきに都内での世論調査を実施してきた。3回目となる今回の調査(3月25日・26日実施)では、豊洲新市場をめぐる問題で微妙に変化する、小池知事への評価が透けて見えた。

※注:JX通信社は共同通信グループなど他の報道機関との資本関係があるが、今回の調査は自社調査サービスの準備企画として単独で行ったものであり、他社とのデータの交換や提供などは一切行っていない。

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調査の概要はこの図の通りだ。これまでと同様、RDD方式による電話調査の結果得られたデータをもとにして、定性的な情報や過去の選挙結果などを加味して分析している。この方法による調査は一昨年からここYahoo!ニュース上の記事で紹介している通り、首長選、衆院補選、参院選などで繰り返し実施しており、その都度情勢判断を公開してきている。

今回の世論調査のポイントは下記の通りだ。

・小池知事の支持率は前回より2.5ポイント減って62.7%に

・築地移転問題への知事の対応を「高く評価する」と答えた人は前回比11ポイント減

・豊洲新市場へ「移転すべきだ」と答えた有権者は37%。移転反対を14ポイント上回る

・「都民ファーストの会」が引き続き4割近くと最も高い支持を集める

石原氏会見、百条委証言が影響?小池知事への「評価」減る

今回の調査で小池知事を「支持する」と回答した人は62.7%で、前回2月の調査から2.5ポイント減となった。一方、「支持しない」と答えた人は10.0%にとどまり、前回から1.5ポイント減っている。小池知事は引き続き、全ての年代で過半を大きく超える支持を集めており、全体としても依然高水準の支持率を維持している。

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一方で、小池知事への評価に大きく変化が見られた項目がある。それは、築地市場の移転問題への対応についてだ。

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この問題については、1月の第1回調査から今回までの3回とも「築地市場の豊洲への移転における問題で、小池百合子知事の対応や姿勢をどう評価しますか」という質問文を変えず、回答を集めている。経時的な変化を適切に捉えるためだ。

その結果、今回の調査で知事の対応を「高く評価する」と答えた層が31%にとどまり、前回から約11ポイントの大幅減となった。一方で「ある程度評価する」と答えた層は前回より約4ポイント増の46%となっている。また、「あまり評価しない」「全く評価しない」とした層は合計で17%に上り、前月比6ポイント増となった。

前回調査から今回調査までの期間に最も都民の注目を集めたトピックは、恐らくは豊洲新市場を巡る石原慎太郎元知事の発言だろう。

石原氏は3月3日に記者会見を開き「科学が風評に負けることはあってはならない」などと豊洲新市場の安全性を強く主張したほか、同20日にも都議会が設置した百条委員会に証人として出席し、同じ趣旨の主張を繰り返した。その前日の19日には、都が実施した地下水再調査でベンゼンが環境基準の100倍、ヒ素が3.6倍、また不検出が基準とされるシアンも検出されるという結果が発表されたが「地下水を使うわけではない」「地上の安全とは関係ない」と説明している。また、調査結果を分析した都の専門家会議でも、平田健正座長が「地上の安全は大丈夫」と改めて指摘している。

「豊洲は安全」と主張し小池知事を強く批判する石原氏の発言は、上記のように、小池知事の対応に関する評価に対して一定程度の影響を与えた可能性が高い。

加えて、豊洲新市場への移転そのものへの賛否を聞いた質問でも、やや意外とも言える結果が得られた。

豊洲新市場へ「移転すべき」37%=反対を14ポイント上回る

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今回の調査で「築地市場の豊洲への移転の是非について、どう考えますか」と質問した結果、豊洲新市場へ「移転すべきだ」と回答した層は37%に上り、反対の23%を上回った。昨年来、有害物質の検出やそれに伴う安全性への懸念がかなりの量報道されたことを考えると、明確な反対は2割強にとどまることはやや意外と言ってもよい。

ただ、この質問に関しては「どちらとも言えない」と回答した層が41%と最も多く、都民に広く豊洲新市場の「安全性」への理解が進んでいるとは到底言い難い。

「都民ファーストの会」への支持は引き続き高水準

都議選における投票意向先を聞いた項目では、今回まで3回連続で「都民ファーストの会」に投票すると答えた層がトップとなっている。その率は39.6%と前回より2.7ポイント下落しているものの、1月から4割前後の支持を一貫して集めており、他の追随を許していない。

現在の都議会で主要4会派を構成している他の政党については、自民が前回比2.7ポイント増の16.1%、共産党が0.6ポイント減の6.5%と続き、民進は4.5%(前回比+0.5ポイント)、公明は4.4%(+0.3ポイント)となっている。

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なお、都議選各選挙区の情勢を個別に調査した選挙ドットコムは、都民ファーストの会は現時点で過半数(64議席)を上回る66議席を確保する見通しとしている。こうしたモメンタムを支える小池知事への支持はなお高止まりしており、築地市場移転問題に関する評価そのものは支持・投票意向先の動向に対してさほど影響していない。

JX通信社 代表取締役

「シン・情報戦略」(KADOKAWA)著者。1988年(昭和63年)山口県生まれ。2008年、報道ベンチャーのJX通信社を創業。「報道の機械化」をミッションに、テレビ局・新聞社・通信社に対するAIを活用した事件・災害速報の配信、独自世論調査による選挙予測を行うなど、「ビジネスとジャーナリズムの両立」を目指した事業を手がける。

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