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「ニューロロジカルレベル」とは? 組織マネジャーが理解すべき用語解説

横山信弘経営コラムニスト
(提供:shutterstock)

■なぜ「環境」が人に大きな影響を与えるのか?

ニューロロジカルレベルとは、5階層に分けた意識レベルのことだ。「NLP(神経言語プログラミング)」の基となった理論のひとつである。

ビジネスでは人材マネジメントなどに活用できるフレームワークなので、必ず覚えておこう。

では、階層ごとに解説する。

・アイデンティティ:自分が何者か?(私は営業部長である、私は母親である)

・価値観:自分が大切にしている考え方は?(私はお客様の利益を支援したい)

・能力:自分が持っているスキルは?(私はコミュニケーション力が高い)

・行動:自分がしている行動は?(私は8月3日に10件電話した)

・環境:自分が所属しているのは?(目標達成しなくてもいい職場にいる)

ニューロロジカルレベルを使って成長を考えると、下の階層から変えることが基本だとわかる。なぜなら下の階層のほうが、自分の思考に影響を与える回数が多いからだ。

思考プログラムは「インパクト×回数」で、できている。インパクトは弱くても、回数が多ければ、思考プログラムは徐々に変化していく。

最下層の「環境」は、職場環境、家庭環境、学校環境……など身近な環境のことだ。当然、自分の思考に影響を与える回数は多い。

自分を変えたければ、環境を変えることが最も早い、とよく言われるが、このニューロロジカルレベルの図で確認すれば、よくわかるだろう。

■行動を変えれば価値観も変わる

次の階層は「行動」だ。自分が何者であるか、どんな価値観を持っているか、なんてそう簡単に変えることはできない。

能力だって、そう簡単に変えられない。

だが「行動」なら、すぐにできる。決断して、やればいいだけである。行動を変えたり、行動の量を増やすことは、自分の意志で変化させることができる。環境は変えられなくても、行動は変えられるだろう。

次に「能力」だ。

「行動」を変えることで「能力」は変わっていく。これは説明不要だろう。

次が「価値観」だ。

人の価値観、考え方、信条は、そう簡単に変えられない。まさに「思考プログラム」そのものである。たとえば、

「お客様を満足させれば、あとから数字はついてくる」

と考えていた人が、環境が変わり、行動を変え、新しい能力を身につけているうちに、

「お客様を満足させれば、あとから数字はついてくるなんてことはキレイごとだ。お客様を満足させることと、自分の数字を達成させることの両方を考えなければ」

と思うようになる。このように、行動が変わり、成果を出し続け、新たな能力が備わっていくことで、考え方が変わることはたくさんある。

最後は「アイデンティティ」だ。

「私は結果を出せない人間だ」

と思っていた人が、

「私は結果を出せる人間だ」

と自信を持てるようになる。これは、アイデンティティそのものが変わったことを意味する。行動レベルや能力レベルとは比べ物にならないほどの成長だ。

ここまでの成長を実感するには、2~3年はかかると考えたらいいだろう。

■人を劇的に成長させる「インパクト」とは?

いったん、アイデンティティが変わると、劇的に人は変化する。価値観も、能力も、行動も、周りの環境に与える影響も、まるで変わってしまう人がいる。

たとえば、あなたの周りにこういう人はいないだろうか?

・部下に厳しくて有名だが、孫に対してはデレデレで「今日も可愛いでちゅねー」と赤ちゃん言葉を使ってしまう本部長

・日ごろからおとなしく口数が少ないが、車のハンドルを握るととたんに狂暴になり、「はやく行け、こらァ!」「ノロノロ運転してんな!」と言いながら前を走る車を煽るような人

・入社して10年経っても結果を出せず、上司からいつも怒られているが、地域の子どもたちを集めた「週末ソフトボール部」の監督としては熱血指導で有名。子どもたちだけではなく、保護者の皆さんからも絶大な信頼を得ている営業

環境によって、自分が何者であるか(アイデンティティ)は変わるものだ。上司を前にしたら「部下」であるし、部下を前にしたら自分は「上司」だ。

妻を前にしたら「夫」であり、夫を前にしたら「妻」である。子どもの前だと「父親」「母親」になり、親を前にすると「子ども」である。

「地位が人を作る」という言葉がある。

・課長職にふさわしい働きをする人に、課長になってもらう

ではなく、

・課長にすることで、課長職にふさわしい働きをするようになる

という意味だ。

これまでは何事にもだらしなかった人が、子どもができたとたんに責任ある行動をとるようになった。日本では輝けなかった人が、海外で現地責任者になったらあっという間に能力を開花した、というのはよくある話である。

アイデンティティの変化は、とても強いインパクトがかかる。

みずからの意志で自分のアイデンティティを変えることは簡単ではないが、何らかのきっかけでアイデンティティが変わる。そうであれば、そのチャンスを活かし、そして劇的に成長させたほうがいい。

社会人になったとき、結婚したとき、子どもが生まれたとき、課長に昇進したとき、そういうアイデンティティが変化するときは、できる限り儀式(セレモニー)をしよう。

そうすることで、よりインパクトの強い体験をすることでき、劇的に思考プログラムを変えることができる。思考プログラムは、体験の「インパクト×回数」でできているからだ。

<参考記事>

【スライド11枚】成果・成長・成功に導くマネジメントの「メリハリ」(前編)8500字

<参考図解>

ニューロロジカルレベルの要点

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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