「できる範囲でがんばります」と言う若手社員たち
■「できる範囲でがんばります」
「できる範囲でがんばります」
「自分なりにやってみようと思います」
と言う若手社員が増えている。これらのフレーズを聞いて「?」と思う上司もいれば、
「よし! キミのできる範囲でがんばってみたまえ!」
「そうだ。自分なりにやってみることが大事だ」
と激励する上司もいるだろう。
私は当然、前者だ。目標の絶対達成をテーマにクライアント企業の支援に入るコンサルタントだからだ。
以下の図を見てもらいたい。
(1)部下がすべきこと
(2)部下がわかること
(3)上司がわかること
この3つに分解した場合、部下がすべきことは何だろうか? 文字通り「(1)部下がすべきこと」である。
ところが、
「できる範囲でがんばります」
と言う部下は、赤い箇所しかやらないことになる。当然、その考え方だと、どんなにがんばっても結果が出ない。
したがって、「できる範囲でがんばる」ではなく、期待通りの成果を出すためには、何をすべきなのか? まず上司に問うことが先だ。上司でもわからないことがあれば、一緒に考えたり、他にわかる人を探したり、調べる努力が不可欠である。
■「それ、やっていいんですね」
「できる範囲でがんばる」部下が成果を出さない。期待通りの仕事をしない。見かねた上司は当然、
「これはやったのか?」
と聞きたくなる。すると、驚くほど”呑気な答え”が返ってくることがある。
「それ、やっていいんですね」
上司は反射的に、「やっていいに決まってるだろ」「ちょっと考えたらわかるじゃないか」と問い詰めたくなる。しかし、若手社員に厳しく言うと辞めてしまうかもしれない。そう思い込む上司は、口にできない。
■「そこまでやる必要があるのでしょうか?」
実際に成果を出すためには、「(3)部下がすべきこと」をやらなくてはならない。
当然上司としては、
「できる範囲でがんばるのもいいけど、わからないこと、自分一人ではできないことは言ってくれ」
と言わなければならない。
部下は「わかりました」と言うが、部下と上司だけが「わかること」「できること」をやっているだけでは、期待通りの成果を出せないことも多い。
そういう場合は、前述した通り、どうすれば目標達成できるか、「あるべき姿」に近付けるか、調べたり、他者に協力を求めたりすべきだ。
そのような事態になって、たびたび聞くのがこのフレーズである。
「そこまでやる必要があるのでしょうか?」
このフレーズを言われると、さすがの上司も愕然とする。たとえ厳しく言うと辞めてしまうかもしれない、と思っても、
「そんなに大変なことか? 仕事とはそういうもんだよ」
「そこでまでやらないと、いつまで経っても成長しないだろうが」
と声を荒らげたくなる。
■「厳しく言うと辞めてしまうかもしれない」という固定観念
「わからないなりに考えろ」
と言っても、
「わからないなりに考えろとは、どういうことですか?」
と言い返されたり、
「この企画、どう修正したらいい?」
と質問すると、
「課長はどう思うんですか?」
と質問で返されたり、
「来期から厳しくいくからな」
と釘を刺すと、
「それ、心理的安全性的に大丈夫ですか?」
と流行語を使って、やんわり反論されたり。
厳しく言うと辞めてしまうかもしれない。このような固定観念に囚われている上司はおそらく、歯噛みする毎日を送っていることだろう。
だからまずは「できる範囲でがんばる」という部下を承認せず、相手のストレス強度に合わせてリードする。それが、リーダーである上司の務めだ。手詰まり状態になる前に、対話を通じて図の赤い部分を広げる努力をしていこう。