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好きでもない「SNS」を頑張る中小企業の激しい誤解

横山信弘経営コラムニスト
(写真:アフロ)

「SNSでバズって、お客様を獲得したい!集客を増やしたい!」

そう考えてユーチューブをスタートさせた会社がある。従業員40名の不動産会社だ。最初から社長がノリノリで、動画編集のためのスタッフまでも増やし、部門まで新設した。

ところがこのユーチューブチャンネル、一年で閉鎖してしまう。社長がチャンネル登録者や再生回数にばかり気をとられ、事業とは関係のない趣味や大食いの動画をアップしたりしたからだ。

案の定、そんなユーチューブチャンネルは長続きしない。お客様からのお問合せも頑張った割には期待外れで、投資した時間と労力は水の泡となった。

他にもこうした失敗例が増えている。ほとんどが中小企業のケースで、コロナ禍になってインスタグラムをはじめたがうまくいったのは最初の一年だけだったとか、SNSのフォロワーは増えたが、本来の目的である集客や売上アップに繋がっていないとか、そういった声が上がっている。

そこで、私は伝えたい。

好きでもないSNSを頑張っても疲弊するだけ。とくに中小企業は基本に立ち返ろう、と。

■「SNSは最小の努力で最大の成果を出す」という幻想

好きでもないSNSを頑張っても、疲弊するだけだ。とくに中小企業は基本に立ち返るべきである。SNSは難しい。理由は2つある。

①ムダなリーチが多すぎる

②お客様視点が欠如する

まず1つ目の理由は「ムダなリーチが多すぎる」だ。

広告ならお金をかけた分だけリーチする数は増えるだろう。まさに「下手な鉄砲も数撃てば当たる戦略」である。

SNSの場合もそれができる。しかし広告と違ってSNSの場合、お金ではなく時間と労力をかける。フォロワーやチャンネル登録者が増えない限り、どれだけ情報発信しても多くの人にリーチしないためだ。

たとえば1000人のフォロワーがいたとしよう。何らかの情報発信をしたら、フォロワーである1000人に届くと思っている人がいるが、そんなわけではない。インプレッションはあっても、その情報に触れるのはせいぜい30人とか50人だ。

たしかにバズることによって、フォロワー以上の人にリーチすることはできる。それがSNSの最大の魅力だ。しかし、バズるといっても再現性がないし、定期的にバズらせるには、才能やセンス、ふだんからの努力も必要だ。

しかもリーチできたとしても、その人がお客様としてポテンシャルがあるかどうかは別の話。

だからよほど影響力のあるインフルエンサーにならない限り、投資対効果はとても低いのである。

■なぜか「商売」の基本中のキホンを忘れる訳

次に2つ目の「お客様視点」について解説しよう。目的が「お客様を増やしたい」「集客を伸ばしたい」というのであれば、お客様視点は不可欠だ。お客様視点は、商売の基本中のキホンである。

しかし前出したとおり、フォロワー数のアップや維持をしなければ、リーチ数がまったく足りない。

だからSNSを始めたころは、フォロワーやチャンネル登録者を増やすための「ネタ探し」がどうしても必要だ。結果的に、そちらにばかり意識を向けしまうことになり、お客様視点が欠如してくる。

当然そうなると、社内から「遊んでるのか?」と指摘されることも増えるだろう。「そんなことやってないで、キチンと仕事をしろ」と言われる声も無視できなくなる。

■「地域密着・顧客満足」が理念の会社なのにSNSの矛盾

以前、デザイン性の高い印刷物をインスタグラムに投稿しはじめた印刷会社があった。始めたころは、それなりに人気を博し、フォロワーも集まった。しかしこの取組みは、当社の理念である「地域密着」「顧客満足」に合致していなかった。

2年続け、それなりに認知度は向上したものの、結局はメインの担当者が会社を辞めるタイミングで中断することになった。十分なお客様獲得にまでには繋がらなかったのが理由だ。

SNSは、力を入れていた個人が異動もしくは退職した時点で継続が難しくなる。採用難の時代でもあり、中小企業にとってはハードルの高い問題だろう。

■意外と知られていない!正しいアプローチ3つの手順

では、どうしたらいいのか?

基本に立ち返り、マスではなくパーソナルアプローチをしっかりやることだ。

広告宣伝費も十分にかけられない。チームでSNSマーケティングできる体力も十分に確保できない。そういう中小企業なら、なおさらだ。リーチする絶対数を増やさなくてもいいのだから、今日からでも効果を期待できる

それでは具体的に、どんな順番で実施したらいいのか。カンタンに書き出してみよう。

1)ポテンシャルのあるお客様のリストを作る

2)お客様のメールアドレスや電話番号を入手する

3)当たり障りのないメルマガ、たまに電話&面談などして接点を持つ

重要なポイントは2つだ。

「ポテンシャルのあるお客様リスト」を、しっかりと作成すること。3)の接点のとり方は、当社と「相性のいいもの」を選ぶこと。この2つである。

今はメルマガや電話、面談のみならず、ウェビナーでもリアル展示会でも、ホワイトペーパーでもいい。あの手この手を使って継続的に接点を持つ。

正しくパーソナルアプローチを継続すれば、お客様のマインドシェアを獲得することができる。そうすれば購買タイミングで

「●●をどこかに頼みたいんだけど、●●といえば……あの会社か」

という純粋想起してもらえるのだ。このメリットははかり知れない。

■SNSを活用してうまくいく中小企業の正体

SNSは多くの人に見られたいという自己顕示欲、承認欲求を満たすのに最適なツールだ。影響力を持ちたいという人にとっては、うってつけのメディアでる。

しかし、誰にでもできるものではない。たまにユーチューブやインスタグラム、ツイッターを使って成功する中小企業を目にするが、一時的なブレイクにとどまっているケースも多い。センスの塊のような社員がたまたまいたからできた、というケースもあって注意が必要だ。

もちろんSNSを継続すればお客様獲得や売上アップはできるだろう。しかし、投資対効果が悪すぎるのである。

したがって効果効率的なマーケティングツールとは言い難いのが実情だ。

というわけで年末年始は、パーソナルアプローチをする絶好の機会。とくに中小企業はこのチャンスを逃すことなく、お客様への個別接触を試みるべきである。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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