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なぜテレビや新聞広告は「BtoB企業」にとって意味がなくなってきたのか?

横山信弘経営コラムニスト
(写真:イメージマート)

「ついに出た! テレビで当社の宣伝が始まった!」

そのようにはしゃぐ社長から連絡があった。苦節40年。会社を起ち上げてからずっとテレビCMを出すことを夢見てがんばってきた。そんな社長だった。

それが社長のメルクマールだったのだから、私は素直に「おめでとうございます!」と称えた。社長は本当に嬉しそうだった。

「これで当社も世間に認められた」

と顔を赤らめながら言っている。……が、私はしばらくしてこう助言するつもりだ。

「テレビCMは思い出作りと割り切り、しばらくしたらやめましょう」

と。

法人をお客様とするBtoB企業には、テレビやラジオ、雑誌、新聞といった四大広告はほとんど効果を出せなくなっている。DXの恩恵により、営業活動が高度化しているからだ。

現代の「BtoB営業」の最前線をレポートする。

※本記事のスライドは以下のツイートでも紹介

■BtoB企業の営業が絶対に間違えてはいけない手順

広告の基本機能は認知度アップ。一般消費財を個人に販売するのでない限り、広告宣伝だけでBtoB企業の売上がアップすることはない。

BtoB企業で売上をつくるには、必ず営業活動が必要だ。それではBtoB企業の営業活動で最も重要なポイントは何か? まずはここから考えていこう。

営業プロセスをチェックすれば、カンタンにわかる。

一般的な営業活動は、以下4つのプロセスに分類される。とくに営業の本分はお客様との「関係構築」そして「関係維持」。したがって営業活動の大半が①と②に費やされる。

①見込み客発掘

②見込み客育成

③商談(課題発見・提案)

④顧客維持(契約継続・追加)

③商談④顧客維持はもちろん大切だ。しかしお客様との関係ができていない限り、どんなにお客様の課題解決に役立つ提案をしても受け入れられない。

①②がほとんど不要のケースは、営業個人ではなく会社との関係が十分にできているケースしかない。歴史があり、技術力が高い会社にこのケースは多く見られる。

(参考記事:なぜ歴史があり、技術力の高い会社ほど、今「営業教育」が必要なのか?

これらの営業プロセスを踏まえたうえで、売上アップする秘訣について解説しよう。

絶対に間違えてはいけない手順がある。それは①の見込み客発掘のプロセスだ。このプロセスを間違えると、後プロセスのすべてのコンバージョン率が悪くなる。

当然だ。当社の商材を必要としないお客様に営業活動をするのだから。

■なぜテレビや新聞広告は意味がなくなってきたのか?

戦略とは、

・やるべきこと

・やるべきでないこと

を組織で明確に決めることだ。

したがって、①見込み客発掘のためには、見込み客がいる市場を特定しなければならない。市場を特定することで、当社の商材を必要としないお客様へのアプローチを避けることができる。

たとえば誰でも彼でも目や耳にできるテレビやラジオ、新聞、雑誌の広告は、現代においてとても効率が悪い。

キチンと当社の商材が解決できる課題を持っているお客様を、しっかり見極めよう。そうすることで、たとえ発掘した見込み客が少なかったとしても問題はない。その後のコンバージョン率はとても高くなる。

(戦略に沿ったマーケットを狙い撃ちできる「デジタルマーケティング」の技術が進化した現代、広く浅く周知できる広告の出番は少なくなっている)

■効率的に営業成績をアップするための着眼点

このように考えれば、

・当社の商材が解決できる課題をもっている

・当社の商材を認知している

・営業と関係ができている

これらが重なり合う領域を増やしていけばいいとわかる。

もしも当社の商材が解決できる課題をもっているのにもかかわらず、商材の認知が広がっていないのであれば、マーケティング活動に問題があると考えよう。

いっぽう商材が解決できる課題を持たない相手に営業活動をしたら、当然「ごり押し営業」になる。

「当社にはそんなもの必要ない」

とお客様にも言われても、

「そこを何とか」

とごり押しすることになるからだ。

ほとんどないケースだろうが、本来攻めるべき先でもなく、商材を認知もしていないお客様に営業活動をしてはいけない。まるで詐欺師のような行為だからだ。

「これはどんな商品なんですか?」

「あなたと私の関係じゃないですか。お願いしますよ」

「しょうがないですね……。よくわかりませんが、買いますよ」

■効率的に営業成績をアップするための着眼点

まとめると、

・当社の商材が解決できる課題をもっている市場を特定する

・その市場にのみ当社の商材を認知させる

・商材を認知したお客様と営業が関係を構築・維持する

このプロセスがとても重要だ。これらは営業プロセス全体を見たとき、かなり前半の部分である。

お客様の課題解決で悩む人がいるが、営業が提案する商材はほぼ決まっている。お客様に合わせて少しはカスタマイズするが、ゼロから商材をフルカスタマイズすることなどない。

したがって営業が効率的に結果を出すためには、

「どのようにお客様の課題を解決するか?」

ではなく、

「どのように当社の商材が解決する課題をもっているお客様を探すか?」

ここなのだ。そして、こういったお客様を広告などではなく、デジタルマーケティングなどでピンポイントで特定し、認知させ、関係を構築するのだ。このやり方が最も効率がいい。

同じような取引先とばかり仕事をしていると、このような視点が欠けてくるため気をつけよう。VUCAの時代になり、BtoB企業に必要なのは営業のマーケット感覚だ。

決してテレビや新聞の広告ではない。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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