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タイパ最悪!「飲みニケーション時代」の終焉

横山信弘経営コラムニスト
アフターコロナでも飲みニケーション時代は終わるか(写真:アフロ)

■「飲みニケーション」はタイパが悪すぎる

私は52歳。缶ビール一本で酔っぱらうほど、お酒は弱い。それでも飲みニケーションは好きだ。

部下や同僚、ビジネスパートナー、SNSで知り合った著者仲間、もちろんお客様と飲んで語るのは楽しい。オンライン飲み会も慣れてきた。

いっぽうで、なくても構わないとも思っている。なぜなら私にとってレクリエーションのようなものだからだ。休養や娯楽という意味だ。

もう以前のように、人間関係を良好に保つための手段として「飲みニケーション」を考えてはいない。その目的であればタイパが悪すぎる。

タイパとは、タイムパフォーマンスの略。

聞き馴れているのはコスパ(コストパフォーマンス)であろう。支払った費用に見合ったメリットを享受できるか。その意味で使う。

だからタイパとは、費やした”時間”に見合ったメリットを得られるか、という意味だ。観るならTikTokなどのショート動画。本を読むなら、flier(フライヤー)などの要約サイト。

学び直し(リスキリング)も集合型研修ではなく、スマホを使ったマイクロラーニングが普及しはじめている。

短い時間でサクッと目的を果たそうとする人たちにとって、人間関係の構築や維持のために1時間も2時間もかけるのは投資対効果が低すぎる。懐の事情も厳しい人にとっては、タイパどころかコスパも悪い。

飲みニケーションは、もはやそんな存在だ。

■飲みニケーション嫌いはZ世代だけではない!

Z世代は「電話嫌い」で有名だ。ショートメッセージをやり取りしたほうがタイパが高いからだろう。しかし、これはZ世代だけとは限らない。ホリエモンこと堀江貴文氏を筆頭に、キングコングの西野亮廣氏など、電話嫌いを公言する有名人は増えている。

いずれも理由は「タイパが悪い」だ。相手の都合で、自分の時間を奪われることを極端に嫌う。

飲みニケーションはどうか?

2021年の年末。忘年会が「必要か?」「不要か?」のアンケート結果が話題になった。「不要」と答えた人が調査以来はじめて60%を超えた。しかも20代よりも50代のほうが「不要」と答えた人が多く、そのこと自体がニュースになった。

つまり電話嫌いと同様、飲みニケーション嫌いもまたZ世代の価値観だけではないと言える。

飲みニケーションが教養や娯楽目的ならいい。それなら楽しいに決まっている。友人や仲間と一緒に街に出かけたり、テーマパークへ遊びにいくと同じ感覚だからだ。しかし一般的には、ビジネス的成果を出すための手段として使う。

日本生命保険の調査で明らかになった「飲みニケーションが必要である理由」は、以下のとおりだった。

・本音を聞ける・距離を縮められるから(57.6%)

・情報収集を行えるから(38.5%)

・ストレス発散になるから(33.6%)

・悩み(仕事)を相談できるから(29.2%)

・人脈を広げられるから(29.2%)

・悩み(プライベート)を相談できるから(12.8%)

これらの理由を知って「たしかに飲みニケーションはメリットが大きいな」と思う人もいるかもしれない。だが、いっぽうで「飲みニケーションでなくても、できる」と受け止める人も多いだろう。私もその一人だ。

■やり過ぎ!飲みニケーションをKPIにする組織

私の支援先のクライアント企業では、組織内コミュニケーションを活性化させる目的で飲みニケーションをKPIに設定していた。私は社長に直談判して、このKPIを廃止させた。

飲みニケーションは当然、営業時間外で行われる。そのため会社は強要できない。同調圧力で参加させようとすれば、世代など関係なく現場から反発の声が上がるだろう。

今はそんな時代ではない。

だから目標を達成させるうえでの成果指標(KPI)として、飲みニケーションの実行回数はふさわしくない。

飲みニケーションはすでに、お中元、お歳暮、年賀状といった風習のようなものの一つである。実施するメリットはあるが、時代が変わり、多くの代替品が登場した。

コミュニケーションを活性化させる手段はテクノロジーの進化とともに多様化している。飲みニケーション支持者は、単に”飲み会でコミュニケーションをとるというスタイル”に馴れているだけだ。

新しいコミュニケーション文化に馴れれば、他の手段でも、相手の本音を聞けたり、悩みを相談できたり、人脈を広げたりすることは可能だと理解できるだろう。

居酒屋に集まって飲み会を開き、その後2次会や3次会にまで繰り出すのは、ビジネス上の慣習としては残っていかないだろう。時代は大きく変わった。多様化するコミュニケーションスタイルに、誰もが対応できなければいけない時代だ。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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