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コロナ時代には不可欠! ビジネスリーダーの太くて固い「絶対軸」の作り方

横山信弘経営コラムニスト
(写真:アフロ)

■「軸」の4つの特徴

「軸を持て、軸を持てって、うるせーよ」

と言っている人がいた。

「そもそも軸って何だよ? 俺だって、俺なりの軸ぐらい持ってるわ!」

とも言っていた。

怒り心頭に発したこの人は、上場会社の営業課長である。本部長に呼び出され、課長としての責任感のなさを責められたのだと言う。

「リーダーシップを発揮するためには、ブレない軸を持てって言うけどさ。だいたい何だよ、軸って」

そのように愚痴る営業課長の話を聞いて、私も「確かに」と思った。ビジネスの世界では、よく「軸」という言葉を使う。とくに経営者や役員が好んで使う。コロナの時代において、ますます耳にするようになった。外部環境が激しく変化するから、よけいに重要視されている。

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。熱い気持ちで目標を必達させたいという経営者やビジネスパーソンが、私の周りに集まってくる。まさに「ブレない軸」を持っている人たちばかりだ。

それでは「軸」とはどういう意味か。辞書でひくと「回転運動の中心」とか、「活動の中心となる人物や信念」とか、こういう表現を目にする。

これらの表現と、私の経験上「軸」には以下の特徴があると私は考える。

●「回転の中心」

●「固い」

●「動かない」

●「棒」

この4つだ。

「軸」とは、【固くて動かない、回転の中心となる棒】のようなもの。信念とか価値基準という言葉ともよく似ている。とらえどころのない「ふわっとした抽象的なもの」ではなく、「長さの概念がある具体的な棒」と書けばいいか。

■重要な3つの切り口

いっぽうで「棒」というのは「線」とも表現できる。線は線でも、点と点とを結んだ直線。つまり、現在と将来という2点間を結ぶ直線。これを「軸」だと理解すれば腑に落ちると思う。

先述したとおり、明確な目標がある人ほど「軸」という言葉を使いたがる。

したがって強い「軸」を持つためには、将来の「あるべき姿」「ありたい姿」をハッキリさせるといい。そこが曖昧で、抽象的すぎると「軸」が定まってないように見えるからだ。「軸」がないからこそ悩みが多く、意思決定も遅い。他者に惑わされるし、時代の流れに翻弄される。

だから「あるべき姿」「ありたい姿」を、ハッキリと明確にする。

とはいえ、これがなかなか簡単ではない。

「どうあるべきでないのか」「どうありたくないのか」そのことはわかっている人は多いが、「どうあるべきなのか」「どうありたいのか」それを明瞭に言葉にできる人は少ない。

「どうあるべきでないのか」では当然「点」と「点」を結ぶことができない。だから「どうあるべきか」をハッキリさせる。そのための切り口を紹介したい。私は以下の切り口で考えれば、わかりやすいと考えている。

1)自分

2)周囲

3)社会

この3つだ。それぞれに貢献する、それぞれを幸福にする、という点で考えるとわかりやすいだろう。

たとえば、まずは「自分」。「あるべき姿」「ありたい姿」を「自分」という軸で考えてみる。「年収1千万稼ぎたい」「会社を起ち上げたい」「グローバルで活躍する人材になりたい」。このように自分に貢献する、自分を幸せにするという視点で「ありたい姿」を考える。

ただ「自分」という切り口だけで考えていると「軸」はまだ細い。固くもならない。なので、

「自己実現の欲求を満たしたい」

などと言っている人は、単なる自己満足レベルだ。想定外のことが起これば、すぐに軸がぶれる。自分さえ我慢すればいいからだ。

それでは次の切り口「周囲」で考えてみよう。周囲とは、家族、同僚、部下、お客様、地域の人たち。「お客様の問題解決ができる新ビジネスを開発する」「家族のために35歳までにマイホームを建てる」。これらは周囲の人たちに貢献したいという欲求だから「軸」は太くなり、ブレにくくなる。それに、このような願いが叶えられることによって、自分もまた幸福な気分を味わうことも多くなるだろう。

次の切り口は、周囲の人よりもさらに外側の「社会」だ。最も高いレベルの「ありたい姿」と言える。「介護事業で働いている人たちの労務環境を変えたい」「新しいITソリューションで中小企業の経営効率を劇的に改善させたい」。このような姿を理想とする人は、とても太い軸を持っている。軸が太いからこそ今自分が何をすべきなのか、周りの人たちをどうモチベートして巻き込んでいくのか、常に考えられる。

「自分」や「周囲」の人たちの幸福のみならず、「社会」にも貢献する。こうしたほうが「軸」はブレなくなっていくのだ。

■太くて固い「軸」にするために

ただ、気を付けるべきことがある。

「軸」が内側から「自分」「周囲」「社会」という層でできあがっているとしよう。ならば折れない「絶対軸」を作り上げるには、それぞれの層が固くて強い必要がある。つまり、社会貢献する意欲は強くても、自分のことなどどうでもいい。家族のこと、部下のことは二の次という姿勢では弱い。中途半端。軸の中心部分が柔らかい、もしくは空洞であるため、軸は折れやすくなる。

「自分のことはいいんだよ。でも家族には幸せになってもらいたい」

「最近、家族の顔を見てないな。でもこの事業を成功させれば、いずれ子どもたちもわかってくれるさ」

自分を犠牲にしたり、家族との関係を崩してまで何かを成し遂げようとする姿勢は、映画やドラマに出てくる主人公のそれと似ている。とてつもない強固な信念があれば別だ。しかし一般的には「体が持たない」「モチベーションが続かない」「妻が理解してくれない」などといった理由でブレやすくなる。

私もそうだった。21歳の頃から知的障がい者のボランティア活動をしている。20代の頃は、家族からも職場の同僚からも、誰からも応援されなかった。

「いいことやってるのはわかるけど、もっと大事なことが他にある」

多くの人に指摘された。葛藤の多い日々を送った。そんな20代を過ごした。しかしビジネスでも成果を出し、家族を大切にするようになってからは、多くの人が私のボランティア活動を支持してくれた。

社会に貢献したいと声高に宣言する経営者は多い。しかし事業の基盤を築かない限り、どんなに崇高な想いがあろうと成し遂げられない。

社会に対して貢献するつもりもないし、家族やお客様、部下たちの幸せも心から願っていない我欲だけの人も同じ。「自分軸」しかない人は、ブレやすい。(尋常でないほどの私利私欲にまみれた人なら別だが)

ブレない「絶対軸」を作るためには、3つの層をバランスよく固くする。分厚くしていく。

まずは「自分軸」だ。自分を大切にする。私欲に正直になる。しかしそれだけではブレる。「自分軸」のまわりに「周囲軸」を持つ。周りの人たちを幸せにするのだという価値観を持つのだ。そしてこの2つの層でガッチリ軸を固めたうえで「社会軸」をその外側に巻いていく。

「社会軸」はどうしても抽象的なものになる。「業界を変えたい」「世界の貧困をなくしたい」と言っても、ほとんどの人は具体的な指標を決めて到達させるまでには至らないはず。だから「社会軸」はふわっとしたものでいい。軸がブレないように、方向を示すだけの概念で十分。

しかし概念だけでもあるとないとでは大違いである。「九州を活性化したい」「日本の若者を元気にしたい」「ベンチャー企業を応援したい」という概念的なものだけでも、進むべき方向を指し示してくれるからだ。

太くて固い「絶対軸」を持つためには、3つの層を意識して軸を強くしていく。とくにその順番が大事だ。コロナの時代だからこそ、弱くて折れやすいようではいけない。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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