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【注意】ファイナンシャルプランナーの忠告で気になる「きれいごと」とは?

横山信弘経営コラムニスト
何のためにお金を貯めるの?と問われても……。(写真:アフロ)

■「お金儲け」は悪か?

「お金儲けを追及してはならない。理念が大事なんです」

「またその話か」と辟易する。

ある事業成功者の講演で「お金に執着してはならない」と、聴いた。そんなことはわかってる。「ご飯を食べたら歯を磨くのよ」と母親かから何度も言われてきた。そのセリフと同じ。このフレーズに触れて新鮮に感じる人は、よほど日ごろから勉強不足と言えよう。聞き飽きたフレーズである。

成功した人ほど「お金に執着してはならない」と言う。当然、お金に困っていないからだ。私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。成功者が成功するまでの過程もずいぶん見ている。

だから、

・お金に困らなくなるまでは → 執着する

・お金に困らなくなったら → 執着しない

という文脈を理解しないと誤解する、と知っておこう。

「お金を稼げなくても、お金よりも大事なものがある」という考えも、もちろんある。が、そのような文脈で、このような事業成功者は口にしていないことも知っておいたほうがいい。

「業績が悪いんだったら、お金に執着しなくちゃいけないでしょ」

講演後、その方に話しかけると、当然次のように返ってくるものだ。

「そんなこと当たり前ですよ、横山さん。あなたが一番わかってるでしょ」

と。

■それでもお金には執着したほうがいい理由

とはいえ、お金に困っていない状態になっても、私は少しぐらい執着したほうがいいと思っている。一般レベルであれば、頑張ったって10億とか100億とかの資産を作れるわけではないからだ。せいぜい年収1億円のレベル。年収1億円といっても、その状態が50年続くならともかく、そうでないならお金に対してそれほどナーバスにならなくていい。

それだけのお金では大したものも買えないし、大したサービスを受けられるわけでもない。

お金に対する恐怖感は、「お金を持ちすぎると性格が変わる」「大切なことを忘れてしまうかも」という先入観からきている。しかしそれは「毎日バッティング練習してたら大リーグに来ないかと誘われるかも?」とムダな心配している人と同じぐらいの過剰反応だ。

そんな心配などせず、無邪気にお金儲けぐらいすればいい。お金を増やしたいという純粋な気持ちに正直になるのだ。そう私は勧める。そういう人が存在しないと、経済が発展しないからでもある。

■ファイナンシャルプランナーの意見

ファイナンシャルプランナーの忠告には、気を付けたほうがいい。私はそう思っている。

お金の専門家であるファイナンシャルプランナーたちは、お金儲けや資産運用する際、必ずといっていいほど、まずは「目的(アウトカム)」を決めたほうがよい、と指南する。

「お金を稼ぎたい、増やしたい、と考えるのはいいですが、あなたが何をやりたいのか。将来どういう生活をしたいのかをまず決めることです。それが決まらないうちは、むやみやたらにお金を増やしても幸せになれません」

……と。

こういったファイナンシャルプランナーの言い分は、もちろんわかる。しかし自分のやりたいことが見つからない人、自分の理想の姿がまだわかからない人は、どう考えたらいいのだろう。普通に生活できる分だけのお金があればいい、という話にならないか。

10年後でも、20年後でも、30年後でも、「普通の生活でいい」と、”現在の自分”が考えたらどうなるだろうか。大半の人が「頑張ってお金儲けする必要なんてない」と思うはずだ。

しかし、こういう考え方の人ばかりであれば、なぜ「宝くじ」はあんなに売れるのか。「宝くじ公式サイト」によると、直近1年間に1回以上の購入経験がある「宝くじ」購入経験者は、なんと5000万人以上にのぼるという。

日本人の2~3人に1人は購入している計算だ。赤ちゃんも含めての数だから、相当な数と言えるだろう。

当選確率は、交通事故に遭う確率よりも低い。なので宝くじなんて買うのはバカバカしいと受け止める人も多いだろう。とはいえ購入人口は相変わらず、これほど多いのだ。この多様性の時代なのにもかかわらず。

では、宝くじって何の目的で買うのか?

もちろん「お金が欲しい」からに決まっている。何か目的があって、そのための資金が必要だから宝くじを買っているのではなく、単にお金目的で宝くじを買っているのだ。ゲーム感覚で。この姿勢を不真面目ととらえる人もいるかもしれないが、私はそう思っていない。

■キーワードは「サムシングニュー」

何に使うかはともかく、一所懸命お金を稼ぎたいと思っていると、お金という「ご縁」を引き寄せる。

どういうことか? たとえ話を書こう。

来春から社会人になる。だからスーツを一着買いたい。そのスーツが3万円するのであれば、買うのに「3万円」を稼ぎたいと思うだろう。そうしてアルバイトして手に入れた3万円というお金は、スーツを買うために必要な手段だ。

3万円を手に入れても、何の感覚も得られないかもしれない。なぜならすぐ「スーツ」に価値交換されるとわかっているからだ。しかし「手段」ではなく「目的」としてのお金だったら、この「3万円」を手に入れたときの感覚は違うものになる。

何を手に入れたいかはまだ決まっていないが、とにかくお金を稼ぎたい。そう思ってアルバイトをしたら3万円の報酬が手に入った、とすると、どうだろう。この3万円を使って何を買おうか、どんなことをしようかと考え巡らす権利が手に入る。食べたことのない高級料理を体験してもいい。両親に何かプレゼントしてもいい。行ったことのない何か新しい場所へ小旅行もできるかもしれない。

キーワードは「サムシングニュー」だ。

お金が手に入ることによって、何か新しいことができるかもしれない。何か新しいものが買えるかもしれない。目的がなく稼いだお金は、何か新しい可能性をもたらしてくれる。使うかどうかは別だ。そのワクワク感を獲得できるからお金をほしがる人が多いのだ。

だから宝くじも買われるのである。

■お金が増えることで幸福感も増す

お金を使って何か新しいものを手に入れられる、というだけでなく、何も購入しなくても「幸福感」を得ることはある。これまで給料が20万円だったのが、昇格したことで給料が25万になった。30万円になった。……こういう事実だけでも、リッチな感覚は得られる。

人間は「成長の実感」を得ることによって幸福物質と呼ばれる「ドーパミン」が分泌される。

過去できなかったことが今日できるようになると、今できないことも将来できるようになるかもしれない。未来の可能性を感じることができるから、幸せを覚える。お金もそうだ。他人との比較ではなく、過去との比較で考える。過去もらったこともない給料をもらえるようになると、成長の実感を覚える。だから豊かな気分になるのだ。

必要があるかどうかではない。今よりももっと給料を増やしたい。もっとお金がほしいという気持ちになるのは、常に幸福感を覚えたいという人間の自然な心理欲求からきている。

お金は価値交換の「手段」に変換できる。だからややこしく考える人が増えるのだ。しかしオリンピックや世界選手権で手に入れるメダルとか記念品とか、そういった「勲章」のようなものと受け止めると、たくさん獲得したいと考えても健全ではないか。

■お金儲けに罪悪感を覚えなくていい理由

これまで書いたことを、FOLMとFMLOという2つの思考原理にまとめてみる。先入れ後出しの考え方(First in, Last Out)と似せた。

FOLM(First Outcome, Last Money)

まずやりたいこと、ありたい姿が先で、その目的に沿ってお金を稼いだり貯めたりする思考原理。はじめに目的(アウトカム)で、後でお金(マネー)。

FMLO(First Money, Last Outcome)

まずお金を手に入れ、お金を使ってやりたいことや、ありたい姿を後で考える思考原理。はじめにお金(マネー)で、後で目的(アウトカム)。

FOLMの発想だと、やりたいことや実現したい夢がない人は、がんばってお金を稼ぎたいとか、収入を増やしたという気持ちにはならない。大事なのは「可処分所得」である。

収入を増やすだけでなく、節約も大事。節税対策も重要。収入を増やす努力だけでなく、お金の特性を知って管理する技術が不可欠だ。企業でいうと「管理会計」の知識があったほうがいい。

反対にFMLOは、収入そのものが目的だ。お金は手段ではなく目的なので、手に入れることが一つの「ゴール」。何のためにお金をほしがったのかというと、お金がほしいからほしい、という論理だ。これは車とか家とかを欲しがる衝動とも通じる。

あの車が欲しい。あんな家に住んでみたい。そこまでのスペック、そこまでの広さは必要ないとわかっていても「情緒的ベネフィット」を得たいがために、人はその欲求を隠そうとしない。

それは、新しいスマートフォンがほしい。あんな家具がほしい。という購買欲求と同じだ。本当に必要なのかと追及されれば、要らないかもしれない。しかし「欲しいものは欲しい」という衝動が人を動かし、その衝動が、もっと仕事に頑張りたいという意欲に繋がったりする。

したがって、はじめにお金(マネー)で、後で目的(アウトカム)――FMLO(First Money, Last Outcome)という価値観でもいいのだ。

大半の人が、目的だけを厳密に考えて消費活動をしているわけではないのだから。

「お金に執着してはならない」という言説は、ある意味で正解だし、ある意味で不正解だ。ケースバイケース。お金は誰もが関心を寄せる重要な存在だから、正しく理解し、素直に受け止めたほうがいいだろう。

人を騙してお金儲けをするのは、言うまでもなくいけないこと。しかし、お金儲けそのものを目的とすることに、それほど罪悪感を覚えなくてもいいのである。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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