身近にいる「動じない」「気にしない」人たち2つの生態
■身近にいる「動じない」「気にしない」人たち
「なぜ気にならないのか?」
他人から何かネガティブなことを言われても、まるで気にしない人がいる。リスクのあることに挑戦するとき、動じることなく自ら手を挙げる人がいる。
客観的に見ると「強い精神力だ」「信念がある」「覚悟が決まっている」と思われるかもしれない。「あんな風になりたい」「少々のことでは動じない強さがほしい」と憧れの念を抱く人も多いことだろう。
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。いろいろなクライアント企業に入り込んでいると、結果を出す営業ほど堂々としている。失敗を恐れない。まだ取引きしたことがないお客様に対しても果敢に新しい提案をしようとする。
このように、多少のことでは「動じない」「気にしない」ような人はどういう人なのか、今回は解説する。
■2種類のタイプ
多少のことでは「動じない」「気にしない」ような人は、2種類のタイプに分けられる。それは「強い人」「鈍い人」の2種類だ。
■ 強い人……後天的(トレーニングで手に入る)
■ 鈍い人……先天的(もともとの性格)
私が現場で見ている限り、もともとの性格で「鈍い人」は多くいる。驚くほど、鈍いのだ。こういう人は全方面で「動じない」し「気にしない」。大事なことまで気にしないから、問題も起こす。しかし先述したとおり、先天的だ。真似しづらい。
脳は「刺激―反応モデル」だ。これをまず覚えてほしい。何らかの刺激を受けて、反応を起こす。
その反応の種類・強度は、過去の体験の「インパクト×回数」でできた「思考プログラム」によって操作されている。だから、「強い人」はトレーニングによって思考プログラムを強固にした過去があり、「鈍い人」はもともと反応が鈍い思考プログラムを持っていたことになる。前者が後天的で、後者が先天的。この2種類のタイプを見分けられないと、真似しようと思ってもうまくいかない。
「当社で一番結果を出している先輩のように、もっとズケズケとモノが言えるようになりたい」
と考えることもあるだろう。しかしアドバイスを求めても、その人が「鈍い人」なら、
「そんなの、思ったこと口にすればいいんだよ。イチイチ気にしてたら何もやれないだろ?」
という助言しかもらえない。
私にも、
「昨日、電車を待っているとき、ホームで見かけた会社員風の人4人と名刺交換しました」
と、事もなげに言う部下(女性)がいる。理由を尋ねたら、「電車を待っている時間がもったいないじゃないですか。以前、新幹線の隣に座った人とビジネスの取引きに発展したこともあります」と言う。
最初は「勇気があるな」「ビジネスのために、そこまでやるなんて強い人だ」と思っていた。しかし付き合いが長くなると、
「単純に、鈍いんだな。とても真似できない」
と確信するようになった。他の部下に「彼女の真似をしろ。あれぐらい勇気をもって人脈を広げようとしろ」とも言えない。
■「強い人」に変貌する人たち
いっぽう「インパクト×回数」を意識し、「強い人」に変貌することもある。
私の場合もそうだろう。最初に入った会社で、あるイベントがあった。同期社員でのイベントだった。そのときに司会を任されたのだが、緊張してうまくできず、「ヘタすぎる」「同期の前なんだから、もっと堂々とやれよ」とイベント後に辛らつな言葉をかけられた。
そんな気弱な性格は35歳まで続いた。しかし、今では200人や300人の前で、2時間でも3時間でも独演会ができる。多少緊張はするが、聴いている方々に「この人、緊張しているな」とは思わせない自信だけはある。
そんな私に、
「どうやって100人、200人の前で、あんな風に堂々と1時間も2時間も話ができるんですか」
と質問されたら、こう答える。
「最初は、5人の前でセミナーするのも嫌でした。1週間前からそのことばかりが気になって眠れない日々が続いたほどです」
「でも、職業柄やらないといけませんから、最初のうちは徹底的に準備をしました。見習いたいセミナー講師のビデオを見て研究し、顔の表情や手の動きなど、すべてを完璧に真似できるよう、何度も何度も練習しました」
つまりトレーニングによって鍛えた、と伝えたいのだ。決して、
「5人や10人の前で話すのも、100人、200人の前で話すのも一緒だって。緊張する? 緊張しないよ。ただ喋るだけなんだから、殺されるわけじゃないし」
このように言わない。
だから「鈍い人」ではなく、訓練によって動じなくなった人、多少のことを気にしなくなった人から習うべきだ。営業の世界で仕事をしていると、天性の才能で結果を出す人をたびたび見つける。その人たちを味方につけてもいいが、凡人のロールモデルにはなりづらいことを知っておこう。