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「褒めて伸ばす」のすべて――ホメジメント5つのステップ徹底解説【横山塾】

横山信弘経営コラムニスト
(写真:PantherMedia/イメージマート)

■「褒める」と「期待する」の違いとは?

「褒めて伸ばす」とよく言われるが、それができない上司がたくさんいる。

理由は二つある。一つ目は上司の問題。二つ目は部下の問題だ。褒めて育てられた経験がない上司は褒め慣れていない。そういう人が「褒めグセ」をつけるためには少し訓練が必要だろう。

それでは部下の問題とは、どういうことか。

「褒める」は、「後」にすることだということを忘れてはならない。部下が何かしら褒められることをやってくれない限り、上司は褒めたくても褒められない。

”濡れた手をタオルで拭く”ケースで考えてみよう。タオルで手を拭くためには、まず手を濡らさなければならない。濡れてもいない手をタオルで拭くことは確かにできる。が、それは意味をなさない。おかしな感じになる。

それと同じで、褒められることをしていない部下を「褒める」とおかしな感じになるのだ。

私はある部長から、このような不満を聞いた。

「マネジャー研修の講師が『褒めて伸ばせ』というものですから反論したんです。部下に褒めるところがない、と。そうしたらなんて言われたと思いますか?」

「なんて言われたんですか?」

「『褒めるところを探せ』ですよ。アホかと思いました」

私は苦笑するしかなかった。この部長の言い分はわかる。研修のワークで、同じグループになった参加者を相手に「褒める」練習をすることはある。

「笑顔がステキですね」

「いつも丁寧な話し方ですね」

「髪型が似合っています」

こんな感じで、褒める練習をするのだ。「褒める」場所を探す訓練にもなるし、大きな気付きもある。

しかしその気付きは研修の中でしか通用しない。実際に職場に戻れば、そんなことは誰も再現できないだろう。

誰が、

「笑顔がステキですね」

「いつも丁寧な話し方ですね」

「髪型が似合っています」

などと言って、部下を褒められるのか。研修の後、一度や二度ぐらいなら可能かもしれないが、それを日々ずっと続けることなんて現実的ではない。

褒めるなら、きちんと褒めたい。誰もがそう思うはずだ。そのためには上司ではなく、まず部下が期待にこたえてくれなければならない。だから上司は苦労する。

ちなみに「期待にこたえなければならない」と書いたが、まさに「期待」は「褒める」とは逆だ。

部下が何らかの成果を出す「前」にするのが「期待」であり、「後」にするのが「褒める」だ。

「褒めて伸ばす」と言われると混乱するが、「期待して伸ばす」なら、上司も混乱しないだろう。

ところが、である。

■「ピグマリオン効果」と「ゴーレム効果」

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経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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