【withコロナ時代】もう限界だ!「トップダウン」や「ボトムアップ」の企業は壊れる!

「トップダウン」でも「ボトムアップ」でもダメだ……(写真:アフロ)

■近付く日本型雇用の終えん

2019年5月、経団連の中西会長は終身雇用制度について「制度疲労を起こしている」という発言をした。同時期にトヨタの豊田章男社長もこう発信した。「なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と。

日本の経済界において、極めて影響力の高い人物がこのように発言していることから、日本型雇用の終えんが近付いていることは容易に想像できる。

そういうなかで起こった、今年に入っての「コロナ禍」である。

多くの企業がテレワークを導入させた。

中小企業のテレワーク実施率は急上昇し、東京商工会議所調べでは「67.3%」にまでいたったという。働き方改革関連法が施行される以前から、テレワークの普及を政府は後押ししてきた。だから、この流れはもう止められない。

そして皮肉にも、このテレワークの普及が日本型雇用の崩壊へと導いていくのである。日本型雇用というのは、メンバーシップ型雇用を指す。

日本型雇用の転換期を迎えた現代、企業はどのように組織マネジメントをすればいいのか。「トップダウン」や「ボトムアップ」、はたまた「ミドルアップダウン」などという考え方は、もう通用しない。

今回は、新しい組織のマネジメント形態について解説したい。まずは、日本的なメンバーシップ型雇用と、欧米的なジョブ型雇用について言及する。

■日立や富士通はジョブ型雇用へ転換か?

それそれの言葉の定義を、わかりやすく紹介する。

メンバーシップ型とは、「人に仕事をつける」考え方だ。人がまず先にあって、仕事があとにある。社員を大切にする日本らしい考え方だ。中長期的な視点で考えたら、メンバーシップ型雇用のほうが、安心して働けるため社員の満足度は高いだろう。

いっぽう欧米流は「仕事に人をつける」ジョブ型雇用。こちらは会社にとって都合のいい考え方だ。極端な話、仕事があるときだけ人を調達すればいいからだ。仕事が安定的にある場合は、メンバーシップ型が、反対に不安定な時期ならジョブ型のほうがいい。

では、今後の日本はどうなっていくのか?

日立の「ジョブ型」「半分在宅」の働き方が成功するカギとは?に書いたとおり、日立製作所や富士通、資生堂がジョブ型雇用に切り替えることを公表した。

日本企業が進む方向性は、もう明らかである。

■「プロ野球」にたとえると……

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントである。したがって、どちらかというと社員よりも会社目線で物事を考える。目標を絶対達成させるために必要なプロジェクト、タスクをどの経営リソースに配分するか。そればかりを考え、神経を尖らせる。

だからまず最初に考えるのが「目標」だ。そしてその目標を達成させるために、どんな「仕事」が必要で、その仕事をできる「人」は誰なのか、を考える。「人」から先に考えることはない。

「プロ野球」にたとえると、わかりやすいだろうか。

たとえば長いペナントレースを勝ち抜くためには、どのような方針、戦略でいくのか。まずそれを考えてから、監督やコーチを招聘し、そして選手を選考する。育成する。

対戦相手によってはスターティングメンバ―も変えるし、試合の展開次第では、ピンチヒッターやピンチランナー、特定の打者だけを打ち取るためのワンポイントリリーフ等を考える。

完全にジョブ型だ。

しかしプロ野球がメンバーシップ型だったら、どうだろう。

メンバーがほぼ完全固定になる。選手を大事にするチーム運営を、オーナーはどう感じるだろうか。その方針で勝っていれば文句はないだろう。しかし、もし十分な戦績を残せないのであれば、当然「選手を入れ替えろ」と言われる。ファンもそっぽを向くだろう。あまりにひどい場合は「監督がクビ」だとバッシングされる。

私も「企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタント」と公言している以上、結果が出なければ「このコンサルタントは不要」と言われる。当然だ。だからこそ社長から、

「この課長を使ってくれ」

と言われても、私が従うかどうかはわからない。

「3人、営業部へ異動させたい」

と営業部長から言われたら、その選考に私は関わらせてもらう。まず「人ありき」では戦えないからだ。

もちろん企業は「勝利至上主義」ではいけない。しかしメンバーシップ型からジョブ型に変えるとは、そういうことだ。

■それぞれの「メリット」と「デメリット」

次にメンバーシップ型とジョブ型の、それぞれのメリット、デメリットを書きだしていこう。

まずメンバーシップ型だ。

メンバーシップ型だと、長期的な視点でキャリアを考えられるのが利点だ。メンバーの育成にも、しっかり時間をかけられる。

当社は純日本風のコンサルティング会社だから、外資系コンサルティング会社とは社風がずいぶんと異なる。外資系に勤める知人は、どちらかというと「目先の結果」にこだわる節がある。短期的に成果を出せないと、仕事が来なくなるからだと言っていた。だからか、安心して働きつづけることはけっこう難しい。

いっぽう、安心だからこそ、どうしても多くの人が受け身になってしまう、というデメリットがある。仕事は会社が与えてくれるもの。教育は会社がやってくれるもの。本人にそのつもりがなくても、無意識のうちに、みずから自己研鑽しようという意識がなくなるため、何か問題が起こると”他責”にする傾向もある。

最大の問題は外部環境の変化スピードに弱いことか。受け身だと、どうしても感度が鈍くなる。今回のコロナ禍においても、外部環境の変化についていけず、感情のコントロールができなく人も多かった。

変化耐性が低いと、冷静さを失ってしまうのだ。

山口周氏のベストセラー『ニュータイプの時代』には、新時代を生き抜ける人材は問題を「解決」できる人ではなく、問題を「発見」できる人だと書かれてある。

感度が低いと、問題を発見することができない。このことも大きな問題だ。問題を発見できない人は、仕事(ジョブ)がなくなっていく。

こういう人がテレワークで働く場合、苦労するだろう。

では、ジョブ型はどうだろうか。

メンバーシップ型の反対と捉えてもいい。

主体的に研鑽しないと仕事(ジョブ)が割り当てられない可能性があり、絶え間なく自己投資するメンバーが増える。そのようなメンバーは、意識が高く、感度が高い。問題を発見するスキルも高い。

しかし、だからこそワーカホリックな風土になりがちだ。長く安心して働けないため、離職率も高いだろう。いつも採用の問題を抱えており、組織は優秀な人財のリテンション(維持)に神経を尖らせることになるだろう。

仕事があっても、任せる人がいない、という事態にもなりかねない。

■「ゴールダウン」という新しい発想

メンバーシップ型、ジョブ型、それぞれメリットとデメリットがあるが、今後はハイブリット型のスタイルになっていくのは間違いない。

ハッキリしているのは、仕事ができる人によくりたくさんの仕事が割り当てられ、仕事ができない人には、いつまでたっても仕事が充当されなくなっていく、ということだ。

「プロ野球」ほど極端ではないが、それに近いスタイルになっていく。

このスタイルを私は「ゴールダウン」と名付けた。

経営マネジメントのスタイルは、長らく「トップダウン」と「ボトムアップ」の2種類だった。最近は経営者と現場担当者の間に入るミドルマネジャーが主体的に動く「ミドルアップダウン」というスタイルも取り沙汰される。

しかし、上からだろうが、下からだろうが、真ん中からだろうが、どんなにアップダウンさせても、人から人への流れであることに変わらない。これだと、結局は「人ありき」の経営マネジメントになる。

メンバーシップ型のやり方なのだ。

「トップダウン」だと、上層部の好き嫌いでアサインする人が変わることもあるだろうし(つまり贔屓される人は贔屓されっぱなし)、ボトムアップだと、その人の「やりがいが」だの「モチベーションが」などと言われる。

そうではなく「経営目標=ゴール」を頂点にし、そこからブレイクダウンさせる発想を取り入れる。

まず経営目標があり、その目標を達成させるための、いくつかの大プロジェクトに仕分けする。それら大プロジェクトをもう少し細かい中プロジェクトに分けて、さらに小プロジェクトへと分解する。最後にはその小さなプロジェクトを作業単位の「タスク」にまで落とし込む。

こうすると、いろいろなことがスッキリするはずだ。

ジョブ型雇用を考える際、誰もが疑問を覚えるのは、そもそも「ジョブ」とは何か? という疑問だ。

ジョブとは職業のことを指すのか、それとももっと小さな単位――作業(タスク)を指すのか。

私はこの作業(タスク)をジョブと定義したほうがいいと思っている。そのほうがハッキリするからだ。抽象的すぎると、人は意識しづらくなる。だから経営目標に直接つながっている、最小単位の作業(タスク)であれば、誰がいつどのように動けばいいのか具体的になり、迷うことがなくなる。

チームマネジャーも楽だ。この「タスク=ジョブ」という発想でマネジメントをすればいいからだ。

「あの人は今、何をやってるんだろう?」

と考えることはなくなる。

「あのタスクの進捗具合はどうか?」

と思いめぐらすだけでいいのだから。

担当者のほうも、具体的に処理すべきタスクがハッキリしているので気分がいい。

それこそ、そのタスクをどこで処理すればいいかなど、関係がなくなる。オフィスワークだろうが、テレワークだろうが、適切なタイミングでタスクがさくさく処理されているのであれば、マネジャーも評価がしやすい。

■タスク処理は「人」でなくていい

最も生産性が悪いスタイルは、それぞれの人が、その日その日、それぞれ何をやろうか、何をやったらいいかと考えながら仕事をすることだ。

オフィスへ通勤しなくても、自宅でテレワークでもかまわない。今日1日の仕事がスタートする前に、どんな目的で、どのような仕事(タスク処理)をするのか、わかっていないというのは問題だし、それに不憫だ。

そのような日常を毎日送っているような人が在宅勤務となったら、チームマネジャーは恐ろしくて仕方がないだろう。

自宅で何をしているのか、さっぱりわからないし、それが組織目標を達成させるための仕事に繋がっているのか、評価できないからだ。

ペナントレースを勝ち抜くために、今日の勝利をめざして球場へ向かっている選手がいるのに、そういう目標とはまったく関係のない仕事を、その日に考えてやっているようなものなのである。

それがどんなに苦労し、努力を要する仕事であったとしても、とても残念なことだ。本人たちも、やりがいを感じないだろう。

だからゴールからブレイクダウンしたタスクを意識するのだ。そのほうが仕事に「やりがい」を感じられるし、努力して成長しようという意欲もアップする。

ただ、「ゴールダウン」という「目標ありき」の発想をすることによって、分解されたタスクは「社員」が処理しなくてもいい、ということになるのも忘れないでほしい。

たまにしか発生しない類のタスクであれば、社外に適切な人を見つけてお願いすればいい。そのプロジェクトを完遂するためだけに、チームメンバーに入ってもらってもいいのだ。

しばらくプロジェクトがつづくなら、それなりに長期の契約をしてもいいし、そうでないなら短期的な契約だけでいい。

現在は「クラウドソーシング」を活用してアウトソーシングしたい業務(タスク)への応募者を募り、委託することもできる。

また、コンピューターに任せたり、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)のようなロボットに処理してもらうことも選択肢に入れてもいい。

■DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用

私は2020年になってから、6年間秘書にお願いしていた仕事を全部自分でやるようにした(秘書が育休に入ったため)。スケジュール調整や管理、顧客とのコミュニケーション、取材や講演依頼の取次などは、便利なITツールを駆使して効率的にこなしている。

秘書がいたほうがいいと思うこともあるが、自分で直接やったほうが効率がいいケースも多い。

また、3月にYouTubeチャンネルを開設して、毎日のように動画をアップしているが、その撮影や編集処理も自分ひとりで完結している。その際に活躍しているのが、有料のスマホアプリである(有料といっても月額500円程度)。

自分自身も変容させなければいけないが、このようにDX(デジタルトランスフォーメーション)の恩恵を受けて、タスク処理がとても楽になっている。

昔と異なり、タスク処理する「チーム」のあり方が変わってきていると言える。

こう考えると、タスクが分配される人材がどれぐらいその会社に必要なのか。そのことを再考しなければならない時期に来ているのではないか、そう思う。シビアに「ゴールダウン」の発想からすると、そうだ。

ただ、私は決して、タスクが分配されない社員を組織から排除すべきだと唱えているわけではない。

タスクが割り当てられない人材には、それ以外の仕事を割り当てれば良いのだ。企業は経営目標を達成させるため「だけ」に存在しているわけではないからだ。

ただ、現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントとして強く主張したいのは、経営目標を達成しなければ、企業の存続が危ぶまれるということである。

■VUCAの時代に組織が膨張する結末

Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べて「VUCA」という。現代は、「VUCAの時代」だと呼ばれて久しい。

現在、社内にいる人たちに仕事を割り当てなければならない。だからその人たちの言い分を尊重しすぎるのはよくない。ましてや、そもそもの経営目標が達成できなくなることは、この「VUCAの時代」には許されない。

もう平時には戻らないのだ。万年「有事」だと受け止めよう。

タスクが十分に割り当てられない人がいてもいい。

プロ野球を見てほしい。優勝するチームにも、1軍で活躍できない選手はたくさんいる。選手全員が9回プレーすることはできないし、全員を試合に出させることもできない。それでも同じチームなのだ。腐らず、出番が来るのを虎視眈々と狙い、日々トレーニングを続けているメンバーも多いことだろう。

企業もそうだ。

社員全員が毎日7時間や8時間、やるべきタスクで埋めようとする必要はない。目標を達成させるためのタスクが割り当てられたら、それを全力でやればいい。

最もマズいのは、上司が時間を持て余している部下を見て、「こういう仕事でもやっておけ」と場当たり的に仕事を増やすことだ。

そうして各々が身勝手に仕事を創出すると、その仕事を処理するための新しい仕事が現れ、ゆくゆくは新たな部署ができ、そしてさらに仕事量が増えると、人を採用したいといって、知らぬ間に人が増えていくことになる。

これを組織の「膨張」と呼ぶ。「成長」ではなく「膨張」だ。

プロ野球でベンチ入りできる人数は、本来25人である。それを膨張させ、50人にしたとしよう。

このような状態で「トップダウン」マネジメントしたらどうなるか。コーチのお気に入りの選手がいたら、実力がなくても「あいつを使ってくれ」と監督に耳打ちするだろう。

「ボトムアップ」だったらどうか。当然誰もが試合に出たいと主張するに違いない。「たまには4番を打ちたい」とか「抑えだけでなくて、先発ピッチャーをやらせてほしい」とか、「代走ばかりだとモチベーション下がる」だの、いろいろ言ってくる選手が増える。それらの言い分をすべて聞いていられるはずがない。勝利をめざすなら。

企業は利益を出さなくてはならないから、膨張した組織の経営目標もまた当然、膨張する。そうなれば、達成するのが難しくなるのは明白だ。経営目標から逆算した組織構成になっていないからだ。

膨張してしまった組織には、当然のことながら経営リソースの再構築「リストラクチャリング」が必要である。

リストラが行われる企業は、過去に膨張させた失策が響いている。ゴールありきの経営をしてこなかったツケがまわってきた、ということだ。

■「人」ではなく「タスク」をマネジメントする時代

繰り返すが、もし組織が膨張していないのであれば、たとえタスクが十分に割り当てられない社員がいても排除する必要はない。経営目標の達成に向けた仕事以外にも、企業活動における仕事はいくらでもあるのだ。

大事なことは、まず手順として目標を達成させること。現在の経営リソースを維持するために必要な収益さえできていれば、組織に「無駄」や「遊び」があっていいのだ。その「無駄」や「遊び」が組織を活性化させるうえで大切な資源となる。

結果的に、経営活動に必要な3つの余裕――「経済的余裕」「時間的余裕」「精神的余裕」が手に入る。

これからの時代は「トップダウン」でも「ボトムアップ」でもなければ「ミドルアップダウン」でもない、「ゴールダウン」の経営マネジメントが重要だ。

無駄な仕事(タスク)を、いかに増やさないようにするか。それがリーダーが最もすべきマネジメント項目だ。「人」ではなく「タスク」を管理する時代がくる。

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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