かんぽ生命「不適切販売」の謝罪会見で、またも取沙汰される「過剰ノルマ」発言

(写真:ロイター/アフロ)

■ 現場を知らなさすぎる報道陣

かんぽ生命「不適切販売」の謝罪会見から一夜明けました。そして、同社に関するニュースの見出しに、このような文字が躍っています。

「ノルマ偏重の見直し」

「過剰ノルマ是正」

「営業目標の引き下げ」

……。

私は、企業の現場に入って目標を「絶対達成」させるコンサルタントです。絶対達成のコンサルタントからしたら、「勘違いも甚だしい」論調ばかりで、ニュース記事を読んでいると、うんざりしてきます。

複数の企業経営者とも意見交換しましたが、皆、同じ意見。

「現場を知らなさすぎる」

■「勝て」と言われたら反則するのか?

会見で謝罪した社長たちも、会見で質問をした報道陣も、現場をまるで知らないようです。知らない者同士が話しているので、現場を知っている者からすると、何とも言えない気持ちになります。

たとえばボクシングの世界タイトルマッチで、選手が対戦相手にキックしたとします。ボクシングは拳で戦うスポーツですから、もちろん足を出したら反則。

しかし、そのボクサーが所属するジムの会長が謝罪会見で、

「選手に勝て、とプレッシャーをかけすぎたのではないか」と報道陣から質問されたら、どう答えるでしょうか。

「たしかに、絶対に勝て、と言いすぎたかもしれない」

などと答えるジムの会長など、いるでしょうか。世界中どこを探してもいないでしょう。

ですから、この記者会見で報道陣から「目標が過剰だったのか」という質問が飛び出したとき、世の中の多くの経営者、そして現場の営業たちも、「え? その質問する?」と驚いたでしょうし、

日本郵便の社長が「販売目標を引き下げる」と語ったことも、驚きとともに受け止められたことでしょう。

「たとえ足を使ってでも、相手をぶちのめせ」とジムの会長が指示したのなら、もちろんダメです。しかし、「なんとしても勝て」と選手を鼓舞するのは当然のこと。

同じように、

「たとえお客様を騙してでも、ノルマを達成しろ」と社長が指示したのならダメ。しかし、「なんとしてもノルマを達成しろ」と営業を鼓舞するのは普通です。

というか、やらなければなりません。社長なんですから。

■ 営業は特殊な職種

営業職というのは、スポーツ選手と同じ。社内の事務作業、工場でのモノづくりをしている方々とはまったく異なる特殊な環境の中で仕事をしています。これをやったら、確実にこうなる――という「勝利の方程式」のような拠り所がありません。

常に「不確実性の海」の中を泳いでいる職種なのです。ですから「気持ち」が重要。どんなに失敗しても凹まない精神力が、そこそこ必要な仕事なのです。営業は。

したがって、ちゃんと成績を上げている営業は「結果を出せ」と言われたほうがやる気が出ます。アスリートと同じ。「今度の大会では、優勝しなくてもいい」と言って喜ぶ人は、力のある選手ではありません。

今回の「営業目標を引き下げる」という社長発言で、喜ぶのは、数千人いるかんぽ生命の営業のなかで、成績の芳しくない者だけであって、キチンと成績を上げてきた営業は、当然のことながらやる気を失います。

この独特な世界を知らずに、「過剰なノルマに限界」などと記事を書くべきではありません。報道陣も記者も、もっと現場に足を運ぶべきです。

有事のときにだけ現場に足を運び、記事になりやすい人にだけマイクを向けるのではなく、日ごろから数多くの現場に足を運んでいれば、優秀な営業ほど、どのように物事を考え、行動しているか、目で見て理解できるようになります。

■ 問題はどこにあるのか?

約4年前。2015年5月に発覚した、東芝の「不適切会計」事件を覚えているでしょうか。

この事件により、当事者である東芝のみならず、この会計処理を見逃した新日本監査法人も、存亡の危機を迎えるほどダメージを受けました。

それほどの大事件であった、この東芝事件は、経営陣の強烈な「予算達成」圧力に起因すると言われました。この執念の大きさが歪みに繋がり、「(会計処理を)工夫しろ」という言葉に繋がったのだとされます。

しかし先述した通り、元来、経営者が企業の予算計画達成に執念を燃やすのは常識であり、そうでなければ経営者が務まるはずがありません。

執行した「策」は間違っていたわけですが、その「姿勢」に問題があったわけではない。

経営陣の圧力を受け止め、予算達成のための戦略やアクションプランを立案するのが上級管理者の役割です。さらに、これらの戦略を行動プロセスに分解し、正しくマネジメントサイクルをまわすことが、現場に近い中級管理者の役割です。

かんぽ生命も同じ。

もしも経営陣と同じように、上級管理者も、中級管理者も、ただ「結果を出せ」と部下に連呼しただけであれば、組織が機能していなかったと言えます。

つまり問題は、営業目標のレベル感の話ではなく、マネジメント層が機能不全に陥っていることなのです。問題の箇所を間違えたら、正しい解決策を導きだすことはできません。

■ 問題は「結果を出せ!」

管理者層が正しいマネジメントをせず、単に「結果を出せ」と連呼しつづけたことが、真の問題でしょう。毎日のように、こんなことを言われつづけたら、現場の営業は思考停止状態になります。

ボクサーも同じ。

対戦相手の研究もせず、戦略も、戦術も考えず、単に「勝て」「勝て」「勝て」「勝て」としかコーチが言わなかったら、足が出てしまう選手もいることでしょう。拳で勝てないと思ったら。

営業目標を引き下げても、問題は何も解決しません。

それどころか財務状況が悪化し、経営資源が目減りしていくだけです。企業体力が落ち、5000人以上いるかんぽ生命の従業員を支えることができなくなります。

このように、過大なノルマを課せられると、営業がお客様本位でなくなる――というのは、まるで論理性に欠ける主張です。

目標に過大も過小もありません。どんなに引き下げても「まだ過大だ」と主張する者が出てくるだけ。

目標は目標です。「お客様の利益を支援する」という基本姿勢を保ちつつ、その目標に向かって組織一丸となり、健全に創意工夫することが重要なのです。

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。メルマガ「草創花伝」は4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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