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超高速で仕事を片付ける「サクタスチーム」のつくり方

横山信弘経営コラムニスト
さくさくタスクを処理する(写真:アフロ)

「サクタス」という意味

さくさくタスクを処理することを私のコンサルティング会社では「サクタス」と呼びます。成功を意味する「サクセス」と似ているし、何より語感がいいので、気に入って使っています。

日ごろから使う言葉は、仕事のパフォーマンスに影響を与えます。さくさく仕事ができないのは、単に感覚的なもの。したがって、感覚的に気持ちが上がる言葉を意識して使っていきましょう。

「すぐやる」「やり抜く」という表現は、私は好きですが、感覚的に重い。「先送りはやめる」といった否定形の言葉は、さらに重苦しい。その点「さくさく」という擬態語を混ぜた造語「サクタス」は、ポジティブな感じがするし、何より心を軽やかにする作用があります。

「よし、今日も1日サクタスでいこう!」

とチームリーダーが職場でいえば、「よっしゃあ!」とメンバーの心に火種ができることでしょう。リーダーがどのような言葉を選択するかでチームの雰囲気はがらりと変わります。

「さくさく」とはどういうことか?

「サクタス」の意味はわかったが、具体的に「サクタス」とはどういう状態のことなのでしょうか。何となくさくさくタスクを処理していれば「サクタス」なのかというと、違います。

「さくさく」とは、「きらきら」とか「つるつる」と同じ擬態語。軽快で、心地よく物事が進んでいく様を表現しているので、さくさくタスクを処理するというのであれば、軽快さ、心地よさがキーとなります。

感覚的でもいいので、時間という切り口で「さくさく」を考えてみます。どれぐらいの時間で終わるタスクを処理していると「さくさく感」がするでしょうか。

●1日で終わるタスクか?

●5時間で終わるタスクか?

●1時間で終わるタスクか?

●30分で終わるタスクか?

●10分で終わるタスクか?

●5分で終わるタスクか?

このように選択肢を並べるとわかりやすいでしょう。

少なからず、終えるまでに5時間も6時間もかかるようでは「さくさく感」はありません。

家事で考えるとイメージがつきやすい。洗濯物を干して、風呂を掃除して、部屋の片づけをして、掃除機をかけて、ゴミを出して――といった一連のタスクが心地よく処理されていくイメージがなければ「さくさく感」を味わえません。

感覚的ですが、ひとつのタスクが30分を超えるようでは、さくさくと物事が進むとは表現しないでしょう。10分程度で終わるタスクが次々と処理されていく様子――これが「サクタス」です。

あくまでも目安ですが、さくさく処理するタスクの時間単位は「10分程度」とします。

(※10分で終えられないものであっても、とりあえず10分だけやってみる、という姿勢も大事)

(写真:アフロ)
(写真:アフロ)

タスクとは何か?

現場でコンサルティングをしていると、そもそもタスクという言葉の定義を正確に理解している人が少ないと感じます。

「もっと生産性を上げていこう」「もっと集客を増やそう」「新商品の開発をしよう」

こういった表現はすべてスローガン。行動計画でもないし、もちろんタスクでもありません。このような表現だけをリーダーが口にしていても、チームでさくさくと仕事が片付いていくことはないのです。

仕事の単位は大きくわけると「プロジェクト」と「タスク」に分解できます。

まずは、言葉の定義をそろえてみましょう。

■「プロジェクト」……目標を達成させるための計画、タスクの集合体

■「タスク」……スケジュールに記入できるほどの作業や課題の最小単位

たとえば、「イベントの集客をする」「部下を育成する」「職場の整理整頓をする」……。これらはすべてプロジェクトです。

プロジェクトだと、作業時間を見積もることができないため、スケジュールにも記載できない。ですから、いつ誰がどれぐらいの時間を使ってその仕事をやるのかハッキリしないため、結局は先送りされていきます。

正しく「サクタス」するためには、やるべき仕事がタスクなのかプロジェクトなのかをまず識別するところからはじめるのです。そうすることにより「考えるクセ」が身についていきます。

「サクタスミーティング」

とはいえ、プロジェクトをタスク分解することが苦手な人もいます。「来月のイベントに向けて、しっかり集客していこう」などと抽象的な表現なら言えるけれども、その目的を果たすための具体策(タスク)が何かと問いかけても思い浮かばない人が多い。

ですからチームで、タスク分解すべきです。

チームの問題を解決するための策は、たいていがプロジェクトです。それをメンバーに「やっておいて」と言っても、なかなか処理されません。このようなときは「サクタスミーティング」を活用しましょう。さくさく処理できるぐらいにみんなで力を合わせてタスク分解します。そしてサクタスミーティングで落とし込んだタスクをリーダーが最後に読み上げます。

「電話フォローする100社のリストをAさん、顧客データベースから抽出してほしい。Bさんは昨年のチラシを今年のバージョンに修正してほしい。フォロー電話は10人で手分けしてやる。今週の金曜日、集中してやるからCさんが営業10人にメールで連絡してくれないか。重要な取引先10社は訪問して交渉するので、今日じゅうに私が専務と相談する。それじゃあ、サクタスでいこう!」

このような感じで。

物事を「なあなあ」にしておきたい人には緊張感を与え、反対に物事を「はっきり」させたい人には安心感を与えます。チームに締まった空気ができるため、チーム全体でタスク分解することは大切なプロセスです。

(写真:アフロ)
(写真:アフロ)

「サクタスノート」

プロジェクトからタスクへどのように分解するのか。個人でやる場合、そのプロセスをメモとして残す専用ノートを作っておくと、あとで見直すのがラクになります。アイデアは発散と収束というプロセスを経てまとまっていくものですから、ノートにいろいろと書き込んで、頭が空っぽになるぐらいに発散させることが大事です。

たとえば「提案書を書く」というプロジェクトの場合、このプロジェクトにどんなタスクが内包されているかを、キーワードでいいので思いつくまま書き出していきます。

「お客様の問題点」「あるべき姿」「提案する商品の特徴」「過去に成功した提案書のテンプレートの調査」「誰に提案するのか」「稟議のプロセスを知る」「提案書を確認する人は誰か」「提案する金額」「お客様が確保している予算」「紙で渡すか、PDFもか」「社内の承認プロセス」「お客様のメールアドレス」「現在使用しているシステム」「お客様の社内の決裁者」……

キーワードを書き出していくことで頭が整理されていきます。何を最初にすべきで、何をまだ知らないか、などが。細かくすればするほど、10分以内で終わるタスクに変えていくことができます。

また、今日1日さくさく処理するためのタスク一覧を書くためにもノートは使えます。さくさくと処理が終わったら、タスクを一つ一つ消していきます。

「サクタス」するためには、あらかじめ処理するタスクを準備しておくことが大事です。場当たり的にタスクを考え、処理しようとしないこと。ノートに書きだしたタスクを1時間以内で終わる分だけ一括り(クラスタリング)にし、一気にさくさくやってしまいます。

途中で思い浮かんだ仕事や、誰かに頼まれたタスクはクラスター化されたタスク群が終わってからやるようにします。すると「さくさく感」を味わいながら仕事を片付けていくことができます。サクタスするためのルールは守ります。

運気を呼び込む「サクタスチーム」

「ついていない」「最近落ち込むことが多い」など、気持ちが下がっているときほど、私は目の前にあるタスクをさくさく処理しようとします。やるべきことをスピーディに片付けていくとストレス発散に繋がるのです。

「ついてる」「ついてる」と口ずさんでいれば、いずれやる気が湧き上がってくるという人も多いでしょう。しかし私は手を動かしていたほうが気がまぎれます。

「サクタス」を心掛けていると、運気が上がっていきます。不安や不満なことを誰かに話すことでスッキリする人もいますが、いくら人に話をしたところで、やらなければならないタスクがどんどん先送りされるだけ。

よけいに自分を苦しめることにも繋がります。ぐずぐず言って、タスク処理を先延ばしにするのは「グズタス」です。

だからサクタス。いつもサクタスを意識していれば、抱えていたもの(タスク)が手放されていく快感を味わえます。

そしてチーム全体でサクタスを心掛けたら雰囲気もよくなるし、チームの運気もあがっていきます。

誰かが悩んでいるとき「サクッと助ける」という意味も「サクタス」には込められていますから、自分の抱えているタスクを片付けたら、他のメンバーのタスク処理を手伝います。そういう余裕が生まれることがサクタスのよさです。

ぐずぐずして、いつまで経ってもタスクを処理せず、雰囲気を悪くしている「グズタスチーム」にならないよう、常にタスク単位で物事を考える風土をチームに定着させていきたいですね。長時間労働ができない時代ですから、リーダーが中心となって「サクタスチーム」を作っていきましょう。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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