「経団連」は今すぐ中田英寿氏を招聘しろ

この顔ぶれで日本経済は変われるのか?(写真:つのだよしお/アフロ)

恐るべき同質集団――経団連

日本経済新聞の西條編集員が書いた「経団連、この恐るべき同質集団」が反響を呼んでいます。

経団連の役員は会長が1人に副会長が18人(!)です(総理大臣1人に、副総理が18人もいるようなもの)。この19人に共通していることが5つあり、それが全員「男性」「日本人」「60歳以上」「サラリーマン経営者」「転職経験ゼロ」だというもの。(もちろん、日本を代表する大企業のトップであることも共通)

なるほど、とても興味深いコラムです。経団連は日本経済界のドン。非常に強い政治力を保持しており、政府に政策提言をも行っています。

その経団連が――コラムのタイトルにもある通り――これほど「同質集団」であると、多様な人材を積極的に活用しようという「ダイバーシティ経営」を普及させることができるのか、とても不安を覚えます。

それに日本企業の99.7%は中小企業であり、中小企業が抱えている最大の問題は事業承継です。

事業承継できず、毎年4万社の中小企業が減少していること、70歳を超える経営者が245万人いて、存続の危機に陥っている中小企業が100万社以上にのぼっていることを、経団連の役員19名はどれほどの危機感を持って受け止めているでしょうか。大企業のサラリーマン経営者は、同族企業の事業承継の難しさを、頭でわかっても、体で理解することはできません。

有効求職者182万人に対し求人数が264万人であり、人手が中小企業にまでいきわたらないのも深刻な問題です。中小企業の「人手不足倒産」が急増している背景は、1%しか存在しない大企業サイドにもあるのです。

なぜアメリカとこれほど差をつけられたのか?

日本の「TOPIX(東証株価指数)」は、1990年から横ばいなのに比べ、アメリカの代表的な株価指数「S&P500」は、同期間で5倍以上にまで成長しています。マイクロソフトにアップル、アルファベット(グーグル)やアマゾンといった、常に時代の先端を走る企業が入れ替わり成長を遂げ、アメリカ経済を支えています。

経団連銘柄の株価がどのように推移してきたかは割愛しますが、TOPIXを押し上げるほどの貢献ができていないことは確かです。

なぜ日本株は、これほどまでにアメリカ株と差をつけられてしまったのか? 

理由は簡単。イノベーションを起こせていないからです。

イノベーションとは「新結合」と呼ばれ、異質なものの組み合わせによって起こります。

「同質集団」である経団連は、サッカー日本代表の監督・コーチでたとえると、全員が日本代表経験のない、あるJリーグチームのディフェンダー(しかも全員が同世代、移籍経験もない)で構成されているようなもの。

監督コーチがこのような属性であるなら、それぞれのポジションについては当然のこと、海外でプレーする選手の事情、何より日本代表として戦うたとえようもないプレッシャーなども、理解できるはずがありません。チームを率いる上層部が同質集団では、革新を起こせず、チームを強くすることができないのです。

中田英寿氏はイノベーションの塊

私は同質集団である経団連には、元サッカー日本代表の中田英寿氏のような方が必要だと感じています。

日本企業が真の「働き方改革」を進めるには、ダイバーシティなど多様性を認める考え方が不可欠です。そしてそのためには、異質な経歴、価値観をもった人材の発想が求められるのです。

もちろん、単に「異質」であればいいということではありません。そして現場感覚がわからない「頭でっかち」な大学教授や研究者でも困るのです。現場も知り、世界も知り、実績もある「クレバーな異質」が一番。

だから、中田英寿氏なのです。

日本のナショナルチームの一員として、U-17W杯から、オリンピック、コンフェデレーションズカップ、そしてワールドカップすべてにおいてゴールした唯一の日本人選手。そして海外で活躍するサッカー選手のパイオニアであることは、あまりにも有名。

その他にも「nakata.net」というオフィシャルサイトを起ち上げ、良質なコンテンツを今も配信しつづけています。この功績は非常に大きいと言えるでしょう。

今でこそ、芸能人やスポーツ選手がブログやツイッター、フェイスブックなどで、自分の言葉をお茶の間に発信することが当たり前になっていますが、その先駆者は中田英寿氏です。

当時、マスコミに強い不信感をもった中田英寿氏が、自分の言葉を直接ファンに届けるにはどうすればいいか。考えに考えたうえで起ち上げたサイトであり、非常に革新的(イノベーティブ)な試みでした。

あれほどの実績を残し、まだまだ期待されていたにもかかわらず中田英寿氏が現役を引退したのは29歳。フリーランスとなり、世界を旅し、社会貢献活動を繰り返し、6年半も旅をしながら日本文化の発信もつづけています。

実業家としてもいろいろな顔を持ち、ビジネスにも精通しています。世界のトップ人事との交渉事にも慣れています。

中田英寿氏は、存在そのものがイノベーションの塊。実績も発想も「異質」。しかも日本を愛し、世界(トップレベルで)を肌で感じてきた、日本において稀有な人材です。

中田英寿氏本人が経団連の役員に名を連ねることは、今後もないかもしれません。しかし、何事にも先駆者でありつづけた、このような実績のあるビジネスパーソン(日本人である必要はないが、日本を愛している人がベター)が経団連に求められているのは間違いないでしょう。

世界における、日本経済の相対的なプレゼンスは、低下の一途です。歯止めをかけてくれる異質な人材が、経済界には必要なのです。