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上司に腹が立ったときは「送らないメール」を書くといい理由

横山信弘経営コラムニスト
メールを書いても決して送らない……(写真:アフロ)

「送らないメール」

夜に書いたラブレターは送らないほうがいい、と言われているように、感情的に書いたメールも送らないほうがいいでしょう。しかし、最初から「送らない」と決めたメールならどうでしょうか。そういうメールなら、書いてもいい。それどころか、書いたほうがいいケースがあります。

たとえば上司に対して、ひどく立腹しているときです。ここ数日、上司の顔を見るのがイヤ、話しかけられても気のない返事をしてしまう。一緒の空間にいるだけでイライラする……。そういうときに「送らないメール」を書いてみるのです。

メールの書き方はこうです。

宛先には自分のメールアドレスを指定します。「送らないメール」ですから、決して上司のメールアドレスをセットしてはいけません。何かの拍子に送信ボタンを押してしまうこともあります。繰り返しますが、宛先には自分のメールアドレスを入れましょう。

メール本文は、相手のことを考えながら書きます。出だしは結論から。どうせ「送らないメール」なのですから、ストレートに書きます。「最近、私は課長のことが好きになれません」「課長と一緒に仕事をしているとモチベーションが下がります」「どうして課長は私にイヤな仕事ばかりさせるのですか。おかしいと思います」……などなど。感情が高ぶるとエスカレートした表現になるので、抑え気味に書きます。

「送らないメール」には事実を書く

そして次が大事です。なぜそのような感情をいま抱いているか、その「論拠」を書いていくのです。感情的になっているときは、論理的な思考が減退しています。ですからここで、無理やりにでもロジカルな文面を作るようにしましょう。もちろん論理的に書くには、筋が通っていないといけません。つまり「主張」に対する「論拠」に因果関係があること。そしてその論拠は必ず「事実」であることを、必ず意識して書きます。

「みんなそう思っているに違いありません。だから……」「課長は私のことを見下しているんです。だから……」「他の会社だったら、きっとこういうことはないと思います。だから……」

――こんな思い込みによる「意見」は「論拠」になり得ません。「意見」と「事実」は違うのです。正しく現象をとらえ、その中の真実を言語化してみましょう。たとえそうに違いないと確信していても、見てもいないこと、聞いてもいないことは「事実」とは呼びません。

「課長って、私にばかり残業を頼みますよね。だから……。いや……。どうだろう。本当に私にばかり残業を頼んでるだろうか。Mさんにも、Jさんにも残業をお願いしていた気もする。私に残業を頼んだのって、今月は……。よく考えると、2回だけ、だ。1時間で終わったときが1回。1時間半かかったときが1回。でも、あのときは課長からねぎらいの言葉をもらったっけ……」

「部長はよく俺のことを怒ってる。だから、俺は最近、部長のことが……って……。あ……そういえば、どれぐらい怒ってるだろうか。見積りの数字を間違えてお客様に提出したときはメチャクチャ怒られた。でも、それは……当然か。この前、会議のときも怒られたけど、俺の態度が悪かったから、それもしょうがないか……」

上司に腹が立っている理由を、「意見」ではなく「事実」の形式でメール本文に列挙しようとすると、意外と書けないものです。言葉にしようとすればするほど、どうして腹が立っているかわからなくなることも多いはずです。

感情的になっているときは、頭を整理することで冷静になれることがあります。モヤモヤするとき、イライラするときなど、「送らないメール」を使って、感情のコントロールをしてみてください。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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