大ざっぱな「達成主義者」と、緻密な「完璧主義者」、ストイックな「記録主義者」

私は企業の現場に入って、目標を「絶対達成」させることを主眼においたコンサルティングをしています。目標は最低でも達成させる、が基本的な考え方で、そのための「大量行動」を推奨しています。このような発想でコンサルティングや講演、情報配信をし続けてきて、現在、とても強く感じていることがあります。それは、目標を常に達成し続けるためには、相当な努力、頑張り、厳しい鍛練とトレーニングが必要だと受け止めている人がとても多いということです。しかし、ほとんどのケースで、それは勘違いです。

昨今、日本では100万人以上の方が「気分障害」を患っているという統計があります。「うつ病」や「気分変調症」といった心の病気のことです。これまでの研究結果では、抑うつ傾向が強い人ほど「目標達成意欲が高い」「努力家で頑張り屋」であることもわかっており、そのせいで目標は絶対達成だ! 宣言したことは、とにかくやり切れ! という考え方の人は、心が疲れてくるのではないか、と思われがちです。「抑うつ傾向が強い人は、頑張り屋さんが多い」という表現を、都合よく反転させてはいけません。要するに「頑張っている多くの人は、抑うつ傾向が強くなる」という表現に、です。「交通事故に遭う人はご老人が多い」と聞いて、「ご老人の多くは交通事故に遭う」と解釈する人はまずいません。このことと同じです。

とはいえ、絶対数はともかく、頑張っている人が心の病気になることはあるわけで、努力している人が報われるように、どんな考え方をすればよいかを、今回は解説したいと思います。私は、心が苦しくならずに達成できる「達成主義者」になることをお勧めします。私が定義する「達成主義者」を正しく理解してもらうために、比較対象を2つ挙げます。「記録主義者」と「完璧主義者」です。

●「完璧主義者」……自分が掲げるあるべき姿を完璧に実現しようとする思想

●「記録主義者」……過去や他人と比較し、記録を塗り替えようとする思想

●「達成主義者」……最低でも目標は達成すればいいという思想

まず「達成主義」と「記録主義」とを比較して解説します。

何らかの目標を達成するためには、それなりの努力や頑張りが必要なことは当然であり、そのことに異論を唱える人はいないでしょう。問題は、その「努力」や「頑張り」が、どのぐらいの期間、継続するのか、ではないでしょうか。苦しい修行や激しいトレーニングが、10年も20年も続きそうであれば、気持ちが萎えてくる人もいることでしょう。向き不向きもあるかもしれません。トップレベルで活躍するアスリートなどは、現役である限り、試練や苦難の連続です。幾多の挫折を乗り越えながら記録や勝敗にこだわり続けなければなりません。強靭なメンタルが要求されることと思います。

「記録主義者」は、まさにトップアスリートのごとく、常に記録更新を狙っています。比較対象は「過去の成績」もしくは「他者の成績」です。常に増収増益を目指したい経営者も「記録主義者」です。会社の中で常にナンバー1を狙いたい営業パーソンも同じく「記録主義者」。記録主義に走る人の気持ちは、私もよく理解できます。「話題性」があります。「アピール度」が全然違うので、自己顕示欲が満たされるのです。

「5年連続で売上ナンバー1を達成した!」

「10年連続で売上、利益ともに伸ばしてきた」

という表現は、とても刺激的です。しかし問題もあります。それは比較対象の成績を落としたくなるという欲求が付きまとうからです。社内でナンバー1になりたい人は、2位以下の人を応援したいという気持ちになりにくいでしょう。また、過去と比較したい人は、大幅に達成してしまう年があると翌年が大変になるため、無意識のうちに力をセーブしてしまう事に繋がります。「常に記録を狙いたい」と思っている「記録主義者」の人は、自分が打ち立てた記録に酔うことで自己顕示欲を満たしてはくれますが、精神的に疲れやすいと言えます。それに1度でも記録を逃すと、それが挫折だと勘違いし、そのままズルズルと落ちこぼれていくこともあります。

ビジネスで表現すると、年間目標が5年間で

「1.0億」「1.0億」「1.2億」「1.2億」「1.3億」

であれば、「記録主義者」の実績は

「1.1億」「1.2億」「1.5億」「1.6億」「1.7億」

と、こんな感じになります。3年目で、たまたま「1.5億」の実績を出してしまったため、4年目の目標が「1.2億」なのに、前年実績を超えようと思うため「1.6億」の実績を、5年目ではそれをさらに超える1.7億の実績を出そうとし、頑張ります。これは前年実績を塗り替えたいという「記録主義者」独特の傾向です。

いっぽう「達成主義者」の実績は、

「1.1億」「1.2億」「1.5億」「1.3億」「1.3億」

とかで良いわけです。前年実績と比較するのではなく、目標が達成すればいいわけですから。「記録主義者」と比較すると、とりあえず目標を超えればいいし、限界にチャレンジするつもりはない、と考える分だけ気持ちは楽です。

次に「達成主義」と「完璧主義」を比較してみます。

「完璧主義者」は、文字通り完璧を目指す考え方の人であり、あらためて説明する必要はないでしょう。完璧主義と精神疾患との関係は、以前から取りざたされています。妥協を許さない姿勢が仇となり、意思決定できないままズルズル先延ばしをし、目標が達成できない人は多く存在します。完璧でありたいと願うゆえに、本来の目的が果たせなくなる可能性が高まるというジレンマに悩むことになります。

私どもが掲げる目標の「絶対達成」は、この「完璧主義」と混同されることが多いと言えます。100点満点のテストがあったとき、100点を目指すのが「完璧主義」です。以前の点数や、他人の点数よりも高い点数を目指すのが「記録主義」。そして私どもが考える「達成主義」は、自分が掲げた目標の点数(たとえば80点)は、最低でも超えようという発想です。他人とも過去の点数とも比較はしません。

「完璧主義者」は、目標を「天井」だと考えます。その天井にぴったり着くような感覚で【目指す】ことになるので苦しみます。どうすれば、あの「天井」に届くのかと考えます。「達成主義者」にとっての目標は、単なる「合格点」もしくは「通過点」に過ぎません。目指すものではなく、【通過する】ものです。目標に到達することは当たり前であって、当然です。このように、「完璧主義者」と「達成主義者」とを比べると、目標ラインに対する受け止め方が根本的に違うのです。

要するに「達成主義者」は目標から逆算せず、目標を超えるその先から逆算して動きますので、初動スピードも、初動エネルギーも、「完璧主義者」よりも大きくなります。しかも大ざっぱに、「この時期から、これぐらいの行動をすれば、少なくとも目標未達成にはならないだろう」といった感じで行動を起こします。「10回やって1回や2回、うまくいけば儲けものだ」という発想です。「完璧主義者」が「50の行動をすればいいだろうか、それとも60の行動をすればいいだろうか」と悩んでいる間に「200の行動をすれば、いくらなんでも達成するはず」という大胆な発想をします。計画性もあるようで、なかったりするのです。チェックリストも作らないし、タスク管理もやらず、無駄な動きがやたら多いように見えます。

「約束の時間に遅刻しなければいい」という発想と似ているので、朝10時の約束なのに、9時半ぐらいに到着して「早く着いてしまったが、まァいいか。遅刻したわけでもないんだから」と思うタイプです。すべてのことが大胆でかつ、大ざっぱなのです。

「完璧主義者」はちょうど目標に達するように逆算し、考えます。最短距離で実現したいからです。綿密な計画を立てようとします。「1回の成功のために、2回も3回もトライをするのは損なので、完璧な戦略や計画を立てて実行し、1回で成功させたい」と願います。朝10時の約束なら、できる限り10時ちょうどに到着したいし、10分も15分も前に到着すると、損をしたという感覚を持ちます。目標に対してもそうで、目標を110%も130%も達成すると、超えた分だけ損だ、という感覚になるため、なるべく100%に合わせたくなるのです。リスクを恐れることになるため、緻密でセンシティブです。――だから、疲れるのです。

このように、「完璧主義」と「達成主義」は似て非なるものです。「完璧主義者」はいろいろとナーバスに考えます。物事に対する意味づけや、モチベーション、やりがいに関して神経質に受け止めます。「この仕事に何の意味があるのか」「自分はなぜこの目標を達成しようとするのか」……など等、いちいち立ち止まって考え、納得できないと前に進めないという発想をしがちです。したがって私が考える「達成主義者」とは気が合いません。何しろ「達成主義者」はあまりゴチャゴチャ物事を考えず「達成すりゃあいいんだろ」「難しいことよくわかんないので、とりあえず動きます」的な思想の持ち主だからです。「完璧主義者」は「達成主義者」を見て「お前は気楽でいいよ」「私もそんな風に楽観的になりたい」と思うことでしょう。

前述したとおり「達成主義者」は計画性なく動きます。一見、「非効率的」と思われがちです。しかし実際には、いちいち立ち止まって考え込んだり、綿密な計画を立てようとするがゆえに悩む時間の多い「完璧主義者」の達成プロセスのほうこそ、効率が悪くなります。また、高度情報化時代になり、「完璧主義者」はさらに悩みを深めることになっています。完璧にやるためにはどうすればいいか、ネットを通じていろいろな人の意見を聞きたいし、多種多様な手法を試したいと考え、いつも気持ちが揺れているからです。「達成主義者」は情報過多な時代でも、あまり関係がありません。多少、遠回りでも「別にいいや」と気にしないからです。そのせいで、「達成主義者」はいろいろなことを成し遂げている割には、趣味も多彩で、余暇を楽しんだりします。結果的に、時間にも、精神的にも、余裕が出てくるからです。私はこのような、大胆不敵な「達成主義者」になることを、支援しています。

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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