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超集中状態「ゾーン」に入っているか? を見分ける方法

横山信弘経営コラムニスト

極端に追い込まれたり、プレッシャーを感じるとき、人間はフロー状態になります。「フロー状態」とは、心理学者チクセントミハイによって名付けられた、人間があることに没入している超集中状態を指し、これを俗に「ゾーンに入る」と呼びます。日本では人気漫画「黒子のバスケ」の作中でよく描かれ、この言葉も有名となりました。(※超集中状態「ゾーン」に入る方法を参照してください)

「ゾーン」に入ることで、時間が止まったかのような、研ぎ澄まされている感覚を味わい、短い時間の中で適切な判断ができるようになります。しかも「ゾーン」に入っているときは、恍惚感、多幸感を抱くことも特徴。これは「痛み」を「快感」に変える神経伝達物質「エンドルフィン」が脳内で分泌することによる作用と言われています。

もともとはスポーツの世界で使われた言葉ですが、ビジネスにおいても、日常生活においても「ゾーン」に入ることは可能です。「ゾーン」に入ると、「先送りをなくす」「苦手意識を克服する」「最後までやり通す」……といった、多様なメリットを享受することができます。

さて「ゾーン」に入るためには、極端に追い込まれること、強いプレッシャーを受けることが必要なのですが、このとき、「ゾーン」に入っているかどうかを見分ける方法があります。それは、「超集中状態のときに、何らかの理由で妨害されたとき、気分を害さないかどうか?」で判断します。

たとえば、電車に乗り遅れないように駅に向かっている状況をイメージしてみましょう。多くの人で駅の構内が混雑しています。しかしあと数分で電車が行ってしまう状況の中で、ごった返す人ごみの中を、ゲーム感覚ですり抜け、切符を買い、改札口を抜けてプラットホームまで落ち着いた足取りで早歩きができる――この研ぎ澄まされた状態が「ゾーン」に入っている証拠です。たとえ途中で「切符売り場はどちらにあるのでしょうか?」と誰かに問い掛けられても、「切符売り場なら、あの改札口の右手にありますよ」と微笑みながら答えられます。「ゾーン」に入っていると時間間隔が歪みますので、突発的に想定外のことが起こっても冷静に対処できます。

しかし「ゾーン」に入っていないと、ごった返す人ごみの中をイライラしながら走り進むことになります。人にぶつかり、「どけよっ」「邪魔だよっ」と心の中でつぶやきながら、改札口を目指すことになるでしょう。そんなときに「切符売り場はどちらにあるのでしょうか?」と誰かに問い掛けられたら、「知りません!」「私に聞かないでよ。急いでいるのがわからないのっ?」と感情的に対応してしまうことになります。

ビジネスにおいても、そうでしょう。突如として上司から仕事を頼まれ、1時間で見積り資料を2枚作ればいいかと思っていたところ、それに加え、来期の行動計画書や、一週間前の研修報告書まで提出しなければならないとわかったときでも、「ゾーン」に入れば感覚が研ぎ澄まされていきます。

超集中状態で仕事をこなしている最中に、同僚から「さっき送ったメール見てくれた? 先日のイベントで撮った写真を添付したんだけど」と呑気に言われても、「ああ、ありがとう。6時までに見積り2枚と来期の計画書、そして研修報告書も作らないといけないから、その後にチェックするよ」と穏やかな口調で返事ができます。しかし「ゾーン」に入っていないと、感情的な受け答えをしてしまうことでしょう。「そんな暇ないよ! さっき課長から突然、来期の行動計画書を作れって言われてさァ。冗談じゃないって……。それならそれで、もっと前から言ってほしいし、しかも先週の研修報告書まで6時に出せって……。聞いてねーよ、そんな話ィ……」と愚痴をこぼしたりします。

「ゾーン」に入るためには、強烈なプレッシャーを自分に課す必要があります。そうでないと「エンドルフィン」が分泌されず、「痛み」を「快感」に変えることができないからです。感情的になってしまうのは、闘争本能を呼び起こす神経伝達物質「アドレナリン」が過剰分泌するからでしょう。

感情的になると、行動の「質」が劣化します。前述の例だと、6時までに見積り資料2枚、行動計画書、研修報告書を作成したとしても、上司から「全然違うよ、資料の作り方が。誰がこんな風に作れと言った? 資料の作成方法がわからないんなら、どうして私に聞かなかったんだ? そのほうが速いだろう? やり直しだ。7時までに作りなおして持ってくるように」などと言われてしまうかもしれません。感情的になって作業をこなした本人は、「やってられねーよ!」と、さらに感情的になるでしょう。

感覚が研ぎ澄まされていると、落ち着いて最良の判断をしようと縞します。適当に資料作成をすると、あの上司のことだから容赦なく、やり直しをさせられるかもしれない。少し気が引けるが、こういうときは上司に質問したほうが速いだろう。……このような状況判断ができ、結果的に質の高い仕事を短時間でこなすことができます。

正しく「ゾーン」に入るためには、「期限」と「ノルマ」の2軸で、自分にプレッシャーをかける必要があります。これは資格試験の勉強においても、朝のお弁当作りにおいても、営業先でのプレゼンテーションでも同じことです。短い時間で高いクオリティの結果を出すという、トレードオフの関係にありそうな2つの事柄を両立させようとするために極限状態に入るのです。

進化した電子デバイスにより、いつでもどこでもネットワークがつながる時代です。今は特に「集中力」が成功の鍵と言えるでしょう。日常生活を平穏に過ごすためのキーワードであることは間違いありません。最近、先送りしてしまうことが多い。ネットに依存してだらしない日々を送っている……という人は、「よし! 今からゾーンに入るぞ」を掛け声に、1日に1度や2度、研ぎ澄まされた感覚を味わう経験をしてみてはいかがでしょうか。繰り返すことでだんだんとコツがわかってきます。キーワードは「多幸感・恍惚感」です。たとえ「やらされ感」たっぷりではじめたことでも、やり遂げた後に気分が高揚してきたら「ゾーン」に入っていた証拠です。

【参考記事】

超集中状態「ゾーン」に入る方法

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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