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必要のないものを買ってしまう「購買理由」ランキング10

横山信弘経営コラムニスト

非合理的な「購買理由」ランキング

私は営業のコンサルタントですから、お客様が商品を購入する購買心理については熟知しています。購買理由が、妥当性の高いものであれば、営業サイドはとてもスッキリとした気分となります。「トイレットペーパーが切れていて必要だったので購入した」「立地がよく、日当たりもいい物件だったので購入した」「電話とメールしかしないので、単機能の携帯電話を購入した」……というように、ある程度、お客様のニーズに合致した商品を購入するのであれば、購買理由を調査・分析し、営業・販売サイドは「打ち手」を考えることができます。

しかし、人が何かを購入する際、そのような合理的判断に基づいているかというと、必ずしもそうではありません。購入した後に、後付けで意味を添える「作話(さくわ)」するケースがとても多く、見逃すことのできない「購買理由」です。これらの購買理由をランキング形式で紹介します。(なお、ランキングの順位は私の独断と偏見で決めています) まずは10位から……。

第10位 営業・販売員の押しの強さ

おそらく多くの人が見逃すだろう「購買理由」です。「購買理由」「購買動機」を調査するマーケティング会社は、顧客側を対象にしているケースがほとんどですから、別の理由で意思決定しているのにもかかわらず、その決断を無意識にしているがために「デザインが私のニーズに合っていました」「ちょうどこのスペックの商品が必要だったんです」……といった後付けの「作話」を拾ってしまいます。

なぜ「押しの強さ」が判明するかと言うと、営業サイドは、お客様と知り合った時点から、購入後までのプロセスすべてに関わっているからです。調査会社は、購入後の「時点」でしかインタビューしていないため、購買に至るまでのお客様の「無意識な」心変わりを知ることができません。

最初は「こんな価格じゃあ、とても買えない」と言っていたお客様が「ま、そうはいっても、自分へのご褒美だからいいか。本場のイタリアで買ったらもっと高いだろうし」と自分で勝手に「作話」して自己肯定してくれたりします。客観的に購買プロセスを見ていた側からすると、

「単純に、販売員の押しの強さにやられただけじゃんか」

と言いたくなるときがあります。それぐらい、やはり「押しの強さ」というのは効果があります。今の時代、どんな営業コンサルタントも、営業の研修講師も「ごり押しで営業しろ」とは指南しません。「押して、押して、押しまくれ!」「押してダメなら引いてみろ。引いてダメなら押してみろ」だのを推奨する書籍やセミナーもないでしょう。

しかし実際に現場に入って営業コンサルティングしていると、我流でトップセールスになった人の大半がこのタイプです。人の話は聞かないし、相手の断り文句も耳に入らない。ブルドーザーみたいに前進していく人が知らぬ間にトップセールスになっていくのです。「再現性」がないため決してマネジャーには向きませんが、プレイヤーとして結果を出してしまうのです。こういう営業や販売員に押されて押されて押されまくって知らぬ間に商品を購入している人はたくさんいることでしょう。

第9位 勢い

「勢い」で買ってしまった、ということは誰にでもある経験です。「ついでにそれも一つ」という心理です。これは私のメルマガでもよく紹介する「フット・イン・ザ・ドア」というコミュニケーション技術にノセられると、次から次へと「勢い」で購入の意思決定をしてしまいます。「フット・イン・ザ・ドア」とは、最初の承諾が人間の心を拘束する心理術を応用しています。最初はガードが固くても、一度決断してしまうと、「じゃあ、そのオプションもつけてください」「それなら、いっそのことAパッケージじゃなくてSパッケージで」と、ダムが決壊したかのように次から次へと購入を決めていきます。営業サイドは、こういう心理を利用し、商品アイテムを揃えたり、チラシやWEBサイトの構築が必要です。アマゾンや楽天で買い物をしているときでもそうですね。いつの間にか必要のないものを「勢い」で買っているケースがあります。WEBサイトの「レコメンド機能」などがこの役割を果たしています。

第8位 雰囲気

「雰囲気」「空気」で購買の意思決定をさせる、ということはものすごくハードルの高いことですが、これが可能となると、きわめて「持続性」が高いと言えます。大してコーヒーの味がわからないのに、セブンイレブンの「セブンカフェ」ではなく、スターバックスのコーヒーを敢えて買いたいと思う人は、確実にその「雰囲気」に影響を受けています。高級ホテルやレストラン等、値段が高いものほど、その場の「雰囲気」に影響を受けます。車を購入するケースでも同じですね。「スペック」「価格」などを吟味すれば中古車でも良いはずなのに、せっかく買うのだから「きれいで整然としたお店で車を買いたい」という心理を持つ人は大勢います。たとえ同等の価値のものが「50万円」ほどの差があったとしても、です。営業が醸し出す「雰囲気」「空気感」もとても重要なファクターです。

第7位 みんなが持っている

多くの人が支持する、評価するものほど人に影響を与える、という心理効果であり、「社会証明の原理」と呼ばれています。「社会証明の原理」も私のメルマガでよく紹介しているコミュニケーション技術です。「当店ではこれが人気No.1ですね」「この2年で、40代女性の76%がこの商品を購入されています」等と言われるとその気になってしまいます。商品の内容ではなく、多くの人が所有していたり、支持しているものを手に入れたいという心理が働くからです。

第6位 ポイント

「ポイントが貯まっていて、利用期限があるからポイントを使うために何かを購買したい」ということもありますが、何と言っても気をつけたいのが、「ポイントを貯めたいがために購入する」という心理です。これは説明不要でしょう。

第5位 特典

「特典」に魅せられて必要のないものを購入する、ということは確実にあります。意外と小さな「特典」でも効果があるものです。10万円の商品のチラシに「500円分のQUOカード進呈」と書いてあるだけで、意識が「QUOカード」に向けられてしまう人がいます。

第4位 スペック

「スペック」「機能」が良ければいいじゃないか、と思う人もいるでしょう。営業サイドからすると、そういうお客様はとても「いいお客様」です。「どう考えても、あなたにはそんなフルスペックの一眼レフ、必要ないでしょう?」と言いたくなる人でも、「機能そのもの」に魅せられ、「今はこんなこともできる時代なんだ。凄いね」と言って買ってしまいます。買った後、こじつけのように言う言葉は「普段はこんな機能、要らないけど、あったらあったで使うかも」です。スマホや車、電化製品……など等を購入するときに気を付けたい「購買理由」です。商品を製作するメーカーサイドは、完全に「ネタ切れ」状態。テレビなど、典型例です。売上を確保するためには、必要がなくても「3D」「ネット接続」「4K解像度」……など、無理やり機能を複数搭載して、単価を上げるしか道がないのです。

第3位 安い

「安いから買う」という極めて短絡的な意思決定をする人が非常に多くいます。

「この機能でこの値段? すごい!」

「他社よりもこんなに安い。いま買っておかなきゃ……」

という心理です。実際は必要なくても「安いから買う」という心理が働くということは、必ず何らかの比較対象があります。「他社製品よりも安い」「この機能にしては安い」「この季節なのに安い」等。価格を見なければ買うつもりがなかったのに、価格を見た瞬間に心理的変化が起こっている場合、確実に「安さ」で釣られています。

第2位 限定

「100組様限定の商品が、あと2組様まで」「ここでしか手に入らない代物」「今回のセールは今週の土日まで」と、「個数」「期間」「地域」などが限定されている、というだけで購買動機が一気に高まる、ということがあります。これはとても重要な心理効果です。普段から欲しいと思っていたものが、たまたま「限定品」だというならいいですが、「限定」と知っただけで「限定の心理」が働きます。

第1位 選民意識

「選民意識」とは、「あなただけに」と仕向けられたときに抱く心理効果です。こちらも私のメルマガで「ハード・トゥ・ゲット・テクニック」という呼称で紹介しています。詐欺でも使われる強烈なコミュニケーション技術ですから、とてもインパクトがあります。だからこそ気を付けたいですね。

詐欺師は「あなたは特別な存在」を連発します。「あなただから私は助言しているのです。「大切なあなたのことが心配なのです」「他の人にはこんなことを言いません。あなただから私は敢えて申し上げているのです」……等と。

詐欺師のみならず、一般企業でも大いに活用できます。

「このイベントに参加したあなただけに紹介します」

「こちらのDMをお持ちしていただいたあなただけにご案内します」

という感じで。会員制のビジネスは完全にこの「選民意識」を利用しています。

さて、すべてのランキングを紹介し終わりました。何らかのお店の会員となり、会員となることでポイントが付与され、期間限定で高機能の商品がとてもお安く、しかも素敵な特典とともに「あなただけ」紹介されたら、ついつい買ってしまうことでしょう。しかも販売員に対面でグイグイごり押しされたら、ひとたまりもありません。

すべて必要なものだけが手に入ればいいと誰もが考えると、経済は活性化しません。購入プロセス自体が「エンターテイメント」だ、と割り切る余裕も必要かなと私は思いますが、あまりに必要のないものを買う癖は治したいですね。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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