結果を出すための、3つの「基本中の基本」
政府は産業競争力会議で、法律で定める時間より働いても「残業代ゼロ」になるような働き方を一般社員にも広げる議論をスタートしています。安倍首相は「時間ではなく、成果で評価される新たな仕組みを検討してほしい」と注文をつけていますが、物事はそんなに単純ではありません。女性活用の促進もそう。ワークライフバランスの浸透もそう。何らかの指針を掲げても、そう簡単に「結果」は出ないものです。
先日、テレビで新橋のサラリーマンに該当インタビューをしている光景を目にしました。
「アベノミクスで給料は増えましたか?」
という質問です。ほとんどの人が「ノー」と答えていました。これを見ていた視聴者は何を思うのでしょうか。というより、この番組は視聴者にどう受け取って欲しいのでしょうか。「アベノミクスの効果は薄い」「アベノミクスで潤っているのは大企業だけで、中小企業に勤めているサラリーマンの懐には届かない」というメッセージをお茶の間に届けたいのでしょうか。
どのような「結果」を求めてもいいですし、どのように期待してもかまいません。しかし結果を出すための基本ポイント3つを押さえておきましょう。
● プロセス
● 手順
● 必要期間
この3つです。つまり「労働時間抑制」も「女性活用」も「アベノミクスで給料アップ」も、何らかのプロセスを手順どおりに、それなりの期間、実行した後で享受される「結果」です。
安倍首相が「時間ではなく、成果で評価される新たな仕組みを」と言えば、すぐに働く人が価値で評価され「長時間労働」が抑制されるわけではありません。「アベノミクスで給料アップ」も同じことです。安倍首相の経済政策が奏功して景気が回復し、一般企業で働く従業員の給料をも押し上げるまでに、どのようなプロセスをどんな手順で、どのくらい実行することで実現するのか。それはもちろん個人によって異なるわけですから、「給料が増えない」「給料が増えない」と騒いでも仕方がありません。小さな子どもが「もっとお金持ちになりたい。お父さんの給料、どうして増えないの?」と言っているようなものです。
企業においても「結果主義」はアナクロな思想と言われるようになりました。社長が「とにかく結果を出せ」「売れる商品を作れ」「コミュニケーションを活性化しろ」と、プロセスも手順も必要期間もすべて無視して、いきなり結果を求めるのは時代錯誤です。
「語学習得」で考えればわかりやすいことでしょう。
「私の息子。先月からスペイン語のスクールに通い始めたのに、いまだペラペラにならない。講師の教え方に問題があるのかしら?」
……などというような感想を抱く人は少ないと思います。語学を習得するには、それなりのプロセスを手順通りに、時間をかけてトレーニングしないと習得できないと多くの人が知っているからです。
社会にはいろいろな仕組み、システムがあります。それぞれの3つの基本……「プロセス」「手順」「必要期間」を知っていないと、結果がなかなか出ない苛立ちを押さえることができなくなります。
「あれほど結果を出せと言っているのに、まだ全然結果が出ない」
「アベノミクス、アベノミクスって言うけど、夫の給料、全然増えてない」
「昔からワークライフバランスって言葉はあるけど、当社はまだ全然できていない」
身近なことも、世の中の出来事も、すべて何らかの「結果」を求め、期待するのは当然のことです。しかし結果が出るまでの3つの基本は頭に入れておいたほうが、メディアが報じるアジテーションを目にし、必要のない不安や不満を抱かずに済むことでしょう。
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