人間関係を悪くする人の共通点「ラジカル・フィードバック」とは?
人間関係を悪くする人の共通点
人間関係を悪くする人は、コミュニケーションにおいて何らかの欠陥を持っていることが多いと言えます。(コミュニケーションは、言語コミュニケーションに限りません) 今回紹介する「ラジカル・フィードバック」とは、過激な反応、急進的なリアクションのことです。たとえば上司が、
「社長方針にあったように、4月から新規顧客開拓に注力する。今後、新規のお客様を増やしていかないと、とても来期の目標は達成できない」
とメールに書いて部下に送ったとします。部下はそのメールを読んで、
「わかりました。新規のお客様の開拓だけやればいいんですね? これまで私がどれぐらい既存のお客様との関係を維持するのに力を注いできたか知りもせずに、新規だけやればいいということなんですね?」
と、極端でかつ過激な反応を示したとします。これが「ラジカル・フィードバック」です。当然、上司は困惑します。
「何を言ってるんだ。誰も新規だけやればいいだなんて言ってないだろう」
「だって、メールにそう書いてあったじゃないですか」
「新規も、やってくれとメールに書いたはずだ。それに、少し考えればわかるはずだ。既存のお客様を放り出して新規のお客様だけ対応すればいいだなんて、社長や私が言うはずがない」
「そんなこと知りません。どうせ私はバカですから理解できなかったんでしょう」
「な……! いい加減にしたまえ」
文章で書くと、バカバカしいやり取りのように読めるでしょうが、こういう会話はビジネス上でも、ごく普通にあります。あたりまえですが、こんな極端で過激な反応(ラジカル・フィードバック)をしていれば、人間関係を悪くするに決まっています。こういった「ラジカル・フィードバック」は、誰かの発言や態度に対するフィードバックが、極端に単純化することで発生します。フィードバックが単純化される原因は以下の2つ。
1)非言語データの省略
2)選択的認知
コミュニケーションに重要なのは「非言語データ」。相手と面と向かって話をするときは「目つき」「表情の変化」「息遣い」といった非言語データが相手に伝わります。「電話」の場合も、相手の「声色」だったり「ため息」などが耳に入ってきます。いっぽうメールやLINE、チャット等、ネットを経由したコミュニケーションには「非言語データ」がほとんど含まれません。このようにコミュニケーションにおける重要なデータがネット上では削ぎ落とされているため、言葉に込められた感情やニュアンスが省略されてしまいます。
省略されたデータを補うのは、コミュニケーションの受け手です。つまり受ける側が、正しくそのデータを埋め合わすための情報(知識、体験、書き手の思い等)を持ち合わせていなければ、歪んだ受け止め方になります。
省略されたデータに「先入観」というフィルターがかかる
また、先入観や思い込みにより、認知する事柄を無意識のうちに選択してしまうことを「選択的認知」と呼びます。つまり何らかの「言語データ」と出会っても、そのデータを正しく認知することなく、自分の勝手なフィルターによって省略させたり、歪曲化させることがあります。
俳句と同様、削ぎ落とされた文章に触れたとき、句を味わう感性や、余韻を楽しむ精神の余裕がなければ正しい鑑賞ができません。選択的認知が働き、あるはずの「季語」を認知しなかったり、言葉の裏に隠された作者の思いを読み取れないのであれば、「なんのこっちゃ」「意味がわからない」となるでしょう。
「二元論」が極端な感情を生みだす
省略された非言語データ、選択的認知により、受け手がそのデータを正しく読解できない可能性があります。単純化されたデータは、感情をも単純化していきます。極端に単純化されると、感情の階層さえも省かれます。要するに、「1」か「0」、「白」か「黒」で物事を判断するようになる、ということです。物事を2つの相対立するファクターに基づいてとらえることを「二元論」と呼びます。二元論で物事をとらえる人を「二元論者」と呼び、「あれは良い/あれは悪い」「あれは支持できる/あれは支持できない」という両極端な感情で物事を判断するようになります。
「1じゃなければ0なんですね?」
「Aだけやればいいんですね? Bはしなくていいいってことなんですね?」
「どっちなんですか? ハッキリしてください。言われたとおりにしますから」
物事を極端にとらえるせいで、発信者の意図をまるで理解できないでいます。当然、人間関係を悪くします。ついつい過激な反応「ラジカル・フィードバック」をしてしまうと自覚できる人は、言葉を発する前にいったん距離をおきましょう。相手に反論する前に、
・その場所を離れる
・時間を置く
・思考を別方向へ向ける
……などをして、衝動のコントロールをしてください。(※参考:怒りやイライラを一瞬だけ抑える「衝動コントロール」の方法)
相手の「非言語データ」に触れていないと、どうしても省略されたデータのみで価値判断してしまいがちです。衝動を抑えづらい人は、メールやLINEなどネットを介したコミュニケーションは控えましょう。対面が一番ですが、会えないなら、せめて電話です。リアルで会話をしたほうが「非言語データ」が省略されないため、過激な反応をせずに済むことが多いからです。