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自分を飾らないで「ありのまま」でいたいという「ありのままワガママ」

横山信弘経営コラムニスト
飾らない自分でありたいけど……

「ありのまま」でいたいと思っているとワガママになる?

自分を飾っていると疲れる。だから飾らないほうがいい。ありままの自分でいたい。と言う人がいます。誰かの歌の歌詞、どこかのポエムから引用しているのでしょうか。おそらく自分自身でそのように思ったのではなく、誰かからの助言・アドバイスでそう思い込もうとしているのかもしれません。多くの場合「勘違い」ですので気を付けましょう。

たとえば、「恋人に気を使っている」「姑との人間関係で悩んでいる」「慣れない職場で緊張している」といった具合に、誰か「人」との関係がまだ熟していないため肩の力が入ってしまっている、ということはあります。しかしながらコラム「肩の力を抜く方法」で書いたとおり、「心構え」だけで緊張を緩めることなどできません。つまり「自然体」になることはないのです。一定の期間は緊張が続くものですから、その状態から抗おうと思うほどストレスがたまりますので、諦めたほうがいいのです。ストレスから逃げないことでストレス耐性はアップしていきます。

ところで、自分を「飾る」とはどういうことでしょうか。「背伸びをする」「相手によく見せようとする」というニュアンスで使われることが多いように思います。おそらく自分が持っている本来のポテンシャル以上のものを表現しようとするから「疲れる」ということなのでしょう。

自分のポテンシャルが「10」だとすると、

● 自己ポテンシャル「10」より大きな力を発揮しようとする → 【疲れる】

● 自己ポテンシャル「10」と同じ力でこなす → 【普通】

● 自己ポテンシャル「10」より小さな力でやり過ごそうとする → 【ラク】

……ということなのでしょう。しかし書き換えると、

● 自己ポテンシャル「10」より大きな力を発揮しようとする → 【成長する】

● 自己ポテンシャル「10」と同じ力でこなす → 【成長しない】

● 自己ポテンシャル「10」より小さな力でやり過ごそうとする → 【退化する】

……とも、表現できます。そのときのシチュエーションと、レベルによって違うのだと思います。つまりどんなときに自分を「飾る」のか、どのぐらいのレベル感で自分を「飾る」のか、ということです。ですから、

「最近、自分を出せないときが多くて疲れる」

と友人から相談を受けたとき、

「自分を飾ろうとするからよ。もっと自然体でいいんじゃない?」

といったテキトーなアドバイスはやめたほうがいいかもしれません。「どんなときに自分を出せないの?」「どれぐらい自分の実力以上のことをしているわけ?」と具体的な質問を重ねないと、正しいアドバイスできないどころか、

「そうだよね。自然体が一番だよね」

と言って勘違いさせてしまう危険性があるからです。

自分を飾って合わせることで成長できることがある

それほど重要ではない人間関係ならともかく、家庭や職場、恋人・友人との関係において、避けられないものであるなら、周囲とペースを合わせる(ペーシング)ことはとても大切です。「合わせる」というのは表面的な言葉づかいや行動のみならず、思考やスキルといった深い部分も指します。家庭や友人関係なら多少のワガママは許されるでしょう。しかし職場ではそういうわけにいきません。自分を成長させることなく、あまりに「ありのまま」でいたいと言っていると、「ありのままワガママ」と呼ばれてしまいます。

そもそも何が「ありのまま」であり「素の自分」であるかは冷静にとらえる必要があります。脳のプログラムが、過去の偶発的な体験の「インパクト×回数」でできている以上、しょせん人の価値観や思考パターンは過去の環境で作り上げられたものであり、生まれ持ったものなどごくわずかです。

自分の目指すロールモデルを作り、その人の思考や行動をモデリング(真似る)することで自分自身が成長していくことがあります。最初は「飾る」必要があるかもしれませんが、慣れてくると「しっくり」くるようになり、以前の自分より成長した自分のほうが「ありのまま」になっていきます。いま現時点の自分が「ありのまま」だと思い込んでいると、単にストレスから逃げることになりストレス耐性が上がっていきません。

前述したとおり、シチュエーションとレベル感によりますが、自分を飾ろうと思ってもいろいろな事情で「飾る」ことさえできない人はいます。もし成長につながることなら積極的に自分をデコレートしてみてはいかがでしょうか。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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