義理チョコは「GNP営業」の精神
若手男性の9割が「義理チョコ不要」?
2月に入り、もうすぐバレンタインデーがやってきます。営業・マーケティングコンサルタントの私は、クリスマスや正月、節分、バレンタインデーなど、世間を賑わすイベントには注目します。それぞれの商戦に関わる企業は、イベントが近づくにつれ、相応の戦略を練り、仕掛けます。戦略効果によって年間売上や利益に影響が出る企業もありますから、コンサルタントの立場からすると、このようなイベントは大いに盛り上がってもらいたいと考えています。
ところが先ごろ、衝撃的なニュースを目にしました。若手男性の9割が「義理チョコは不要」と感じているという調査結果です。理由の多くが「お返しが面倒」とのこと。前述したとおり、コンサルタントの立場からするとホワイトデーも盛り上がってもらいたいですから、何とも寂しい調査結果です。
義理チョコは「GNP営業」?
ところで話は変わり、「GNP営業」という言葉を耳にしたことはありますか。GNPとは、「義理(G)」と「人情(N)」と「プレゼント(P)」を指しています。保険営業、保険外交員の伝統的な営業スタイルと言われますが、一般企業の営業でもこの手法は多く用いられています。
特に、他社と差別化できない商品を取り扱っている営業は、お客様のところへ足しげく通い、相手と信頼関係(ラポール)を築き上げる必要があります。単純接触を繰り返すことで関係が深まる心理効果を「単純接触効果(ザイアンス効果)」と呼びます。
相手のワガママを聞いたり、多少無理なことでも応じると、相手は「義理」を感じるようになるものです。これを「返報性の法則」と呼びます。何かをされ続けたら、何かお返ししないと悪いなと思えてくる、という心理です。また、何らかのプレゼント(ノベルティ)を受け取ると、「返報性の法則」はさらに強まります。有形物でなくとも、自分にとって有益な情報やニュースを営業が持ってくると、無形ではあるものの同じ「プレゼント」だと受け取るもの。ありがたいと思えるし、「義理」を感じるようになるでしょう。
しかしながら、この「GNP営業」のスタイルは意外に簡単ではなく、営業の人間性に効果は大きく左右されます。有能な営業が離職するだけで、企業の業績が不安定になる事態も出てくるため、現在の企業の多くは、営業スキルにそれほど依存しない手法を模索しています。とはいえ、この「GNP営業」は人間の心理をうまくついた営業スタイルであるため、現代でも大いに通じることは間違いありません。
(※お客様サイドからすると「GNP」にとらわれ過ぎて、肝心な商品の評価を怠ることは問題です)
感謝するから、感謝の気持ちがわき上がってくる
「義理チョコ」に話を戻すと、1年に1度のこととはいえ、「義理(G)」と「人情(N)」と「プレゼント(P)」の要素が入ったイベントとも言えます。普段からお世話になっている上司、先輩社員、お父さん……などに感謝の気持ちを伝える「口実」となるイベントです。
過去の「行動」に「感情」が整合性を保とうとすることを「一貫性の法則」と呼びます。「感謝をするから感謝の気持ちがわき上がる」のは、体の反応と心の反応とを一貫させようとする脳の機能が関わっています。「感謝の気持ちがないのに感謝なんてできない」「世話になっているわけでもないのに、義理チョコなど渡せられない」などと思っていると、なかなか感謝の気持ちが醸成されません。組織も家庭も、良い空気になりづらくなります。
繰り返しますが、コンサルタントの立場上、このような世間のイベントが大いに盛り上がることを祈っています。あまり難しく考えず「義理チョコ」のイベントは続いて欲しいというのが個人の意見です。日本全体が「返報性の法則」に従い、ホワイトデーも盛り上がるでしょうから。