「情報収集家」が優柔不断になるワケ
「極端な確率」が人を優柔不断にする
なかなか物事を決められない人がいます。優柔不断で、もう少し環境が整ったら、もう少し心の準備ができてから……と、何事もすぐに決断できず先送りする人のことです。
行動経済学に「確実性効果」という言葉があります。ある現象が起こる確率が0%もしくは100%に近づくほど敏感に反応する心理効果のこと。わかりやすい例を書くと、手術が成功する確率を20%から10%にするより、5%の確率を0%にするほうに、人はより大金を払うという現象です。
優柔不断でなかなか意思決定できない人は、「100%正しい選択」「リスクゼロの決断」をしたがる傾向があります。しかしそのような選択は現実的に存在しません。必ずどこかで妥協するより他ないのです。しかしわかっていても「よりよい選択」があるに違いないと妄想を膨らませてしまうのは「確実性効果」が働いているせいでしょう。
優柔不断な人が陥る「選択のパラドックス」
迷ってばかりいて、吟味・評価する対象を増やす人がいます。IT技術が発達した現在、情報は簡単に手に入るようになりました。選択肢をいくらでも増やせるから、いつまでも「より良い」選択肢を求め続けることができます。「悩む余地なし」という状態になかなか到達しません。まさに「確実性効果」のトラップは、高度情報化社会が生みだした弊害と言えるでしょう。そして選択肢を増やせば増やすほど、どの選択肢も選べなくなってきます。これを「選択のパラドックス」と言います。
英会話を習いたいが、どんなスクール、どんな通信教育、どんな講師がいいのかと悩み、情報収集に明け暮れていると、よけいに決断できなくなります。ダイエットでも同じ、企業経営における意思決定も同じです。高度情報化時代になり、手軽に情報収集ができるようになって、優柔不断な人が増えています。決断力が落ちているのです。
ただでさえアジア諸国から日本人は「NATO」と揶揄されています。「NATO」とは、「No Action, Talk Only」の略。話してばかりで行動しない人というレッテルを張られています。アジア諸国を歴訪し、現地の視察はするのですが、いっこうに行動に移さない、決断しない日本人が多いのです。どんなに素晴らしい技術を持っていても、どんなに能力があっても優柔不断で行動しなければ、何事も先へは進まないですよね。
情報はあればあるほど迷いますし、後悔する確率もアップします。(選択しなかった事柄のほうが後になってよく見えるため、後悔する確率が上がるのです)
意思決定するのに情報収集は重要ですが、「知りすぎ」はよくありません。頭が「根腐れ」して、優柔不断の度合が高まっていきます。