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中日の柳 裕也がノーヒットノーラン未遂 MLBには一死も取れなかったノーヒッターがいる!!

横尾弘一野球ジャーナリスト
ノーヒットノーランの悲劇と言えば、西口文也が有名だが……。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 8月13日にバンテリンドームで行なわれた中日×広島18回戦に先発した中日の柳 裕也は、1回表に広島の先頭・小園海斗をショートのエラーで出塁させ、三番の上本崇司には死球を与える。だが、続く西川龍馬を二ゴロ併殺に打ち取って無失点で立ち上がると、2回から6回はひとりも走者を許さず、7回以降も2四球1失策の無安打無失点で9回を投げ切る。

 しかし、中日の打線も広島の先発・遠藤淳志から得点を奪えず、8回は栗林良吏、9回も島内颯太郎に抑えられてスコアレス。柳は9回まで無安打の好投を続けたものの、121球を投げていたこの回限りで降板。ノーヒットノーランを達成することはできなかった。

 9回まで無安打に抑えながら、味方の援護がなかった悲劇と言えば、昨年5月6日の中日×阪神で、10回二死までパーフェクト投球を続けながら、阪神の30人目の打者・佐藤輝明に二塁打を許した中日の大野雄大を思い出す。ただ、大野雄は2019年9月14日の阪神戦ではノーヒットノーランを達成している。

 ノーヒットノーランにまつわる悲劇と言えば、埼玉西武でファーム監督を務める西口文也だろう。9回まで完全が一度、ノーヒットノーランも二度あったが、いずれも味方の援護がなく延長に突入。10回に安打を許し、通算182勝をマークした現役時代に大記録を達成することはできなかった。

ワンアウトも取れなかったノーヒッターとは?

 このように、投手の大記録には得点や打線の援護といった要素も絡んでくるため、実力や自身の勢いだけでは成し遂げられない難しさがある。

 さて、日本のプロ野球より歴史が長く、様々な記録の宝庫であるメジャー・リーグ(MLB)にはユニークな記録がいくつもあり、ノーヒットノーランに関する記録も例外ではない。中でも一番面白いのが、一死も取れなかったのにノーヒッターに名を連ねている投手がいることだろう。

 その記録を達成? したのは、大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)が二刀流の記録をマークする度に、クローズアップされるベーブ・ルースだ。1917年にボストン・レッドソックスの投手兼外野手だったルースは、6月23日のワシントン・セネタース戦に先発登板する。そして、先頭打者に四球を与えると、その判定に怒り、球審に暴行して退場処分を受けてしまう。

 レッドソックスは、急遽アーニー・ショアをマウンドに送ると、このショアが一塁走者を牽制で刺し、そこから26人の打者を続けて打ち取る。実にユニークな形だが、アーニーは四死球や失策なく27個のアウトを連続で奪い、試合も4対0でレッドソックスが勝利したため、この試合は二番手登板したアーニーの完全試合と記録された。

 だが、MLBでは1991年に完全試合を「試合の開始から終了まで打者はひとりも出塁できない」と定義したため、この試合はルースとショアの継投によるノーヒットノーランとあらためられた。それにより、この試合に先発し、投球回数0回0/3だったルースも、ノーヒッターに名を連ねることになったというわけだ。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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