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落合博満が教える「大会前に効果的なフリー打撃の取り組み方」

横尾弘一野球ジャーナリスト
フリー打撃の取り組み方でも、自分の打撃レベルを向上させることはできる。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 高校野球では3年生にとって最後の公式戦となる夏の都道府県大会が始まり、社会人の都市対抗野球大会は7月14日に幕を開ける。そうした勝負の季節に、少しでもいい打撃成績を残すにはどうすればいいか。落合博満は「毎日の練習で取り組むフリー打撃の中でも、確実性を高めていく方法はある」という。

「フリー打撃で大切なことは2つある。ひとつは、自分のフォームを作り上げる(確認する)こと。もうひとつは、実戦と同じメンタリティで臨むということだ。指導者によっては『次のボールをヒットエンドランのつもりで打て』とか、流し打ちを決まり事にして行なうこともあるようだが、私はその名の通りフリーに、自由に練習するのがいいと考えている」

 素振りやティー打撃で準備をしてケージに入る。はじめの2~3球はバントを転がし、次は軽くミートの感触を確かめる。そして、次第にフルスイングで打ち込み、ラストの1球が思い通りに打てないと「もう一丁」。最後にスカッとする当たりを飛ばしてケージを出る。高校・大学生であれ社会人であれ、フリー打撃では次のようなシーンをよく見かける。だが、落合は「これは、いい練習方法とは言えない」と言う。

「指導者は、『練習のための練習はするな』と言う。それなら、ケージの中も実戦と同じととらえ、第1球から全力で“好球必打”だろう。そして、最後のボール、つまり実戦で言えば最後の打席で思い通りに打てなくても、次の試合まで取り返すチャンスはない。気持ちよく打って終わるのではなく、なぜラストの好球を打ち損じたか――このことをひと晩考え、翌日の練習でクリアする取り組みのほうが実戦的であり、勝負強さも身につけられる。もちろん、実戦と同じ意識で取り組むのだから、足場の固め方など細かな部分にも神経をつかわなければいけない。こういう方法で打ち込めば、特打ちなどで力をつけていく時期以外は、決まった時間、本数を打つ必要もない。自分が納得できれば、3分だろうが5本だろうが実になっていくものだ」

プロの練習法でアマチュアが採り入れてもいいものとは

 また、自分のフォームを作り上げる、あるいは確認する過程で大切なことは何か。プロの主力打者は、専属と言っていいほど同じ打撃投手で打ち込む。落合は、これもアマチュア選手が採り入れていい練習法だと指摘する。

「自分の打撃フォームというものは、実は自分自身が一番よく見えていない。それに、どんなに優秀な指導者でも、選手全員の日々の細かな変化まですべて把握するのは困難だろう。特に、大事な大会の前などに調子を落としたくないと思うなら、いつも同じチームメイトに自分のバッティングを見てもらうのが得策だ」

 疲れなどでスイングが鈍くなっている時は自分でも気づくが、投手に対峙する雰囲気の変化、顔つき、目つきなどの変化はわからないものだ。それらを観察し、変化していれば指摘してもらうことも、実戦でいい結果を残すためには重要だという。

 ならば、毎日の練習で同じチームメイトにチェックしてもらうのがいいと落合は考えている。チームメイトとペアになり、互いの打撃投手を務めながら、相手のバッティングを観察するのだ。

「高校生でも、やってみればいいと思う。チェックする側もいい加減なことは言えないし、打撃投手をしながら他の選手を観察して“見る目”を養うことにもつながる。何より、そうした経験は自分自身の技術向上にも生かしていけるはずだ」

 このように選手同士でも心技を高め合い、大事な大会に臨んではどうだろうか。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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