落合博満が惚れ込んだスラッガー・笹川晃平はプロの扉を開けるか

日本代表でも四番に座る笹川晃平に、26歳でドラフト指名はあるか。

 近年は全国の舞台で目立つ実績を残してきたものの、昨年は7年ぶりに都市対抗の出場を逃すなど、悔しいシーズンとなった東京ガスは、小林勇登を新キャプテンに2020年を力強く滑り出している。一気に悲願の日本一まで駆け上がりたいところだが、中でも悲壮な決意で臨むのが4年目の笹川晃平だ。

 浦和学院高では2年春、3年春夏と甲子園の土を踏み、24打数11安打の打率.458をマーク。四番に座った3年夏は2本塁打、3二塁打と自慢のパンチ力を存分に発揮し、大谷翔平(現アナハイム・エンゼルス)らとともに18U世界選手権(現・U-18ワールドカップ)の高校日本代表に選出された。

 さらなる成長を目指して進学した東洋大は、笹川が入学する前年秋に2部に陥落。3年までは1部に昇格できなかったが、春に首位打者となった2年時には21Uワールドカップ(現・U-23ワールドカップ)の日本代表に選ばれ、プロ、社会人、大学生の混成チームで鈴木誠也(広島)らとプレーした。そんな経験をしてきた笹川が、プロを志すのは自然な流れと言っていい。

 4年生になり、ようやく1部でプレーするも、春のリーグ戦は打率.209と苦しんだ。それでも、プロに進みたいという気持ちを打ち明けて周囲に意見を求めたが、「その成績では無理だろう。社会人で力をつけてからにしたほうがいい」と言われた。ほどなく、東京ガスに内定し、秋のリーグ戦では打率.417、3本塁打11打点と本領を発揮。首位打者とベストナインを手にし、2年後を見据えて社会人へ飛び込む。

将来的にはプロでもクリーンアップを打てる男

 社会人でも笹川の存在は光った。東京ガスで四番を任されると、日本代表でも主軸に抜擢される。打線には、藤岡裕大、菅野剛士(ともに現・千葉ロッテ)、田中俊太、大城卓三、若林晃弘(ともに現・巨人)、神里和毅(現・横浜DeNA)と、この年のドラフト指名を受ける選手が並んだ中での四番である。

 優勝したアジア野球選手権大会では、そんな先輩たちとの力の差を痛感させられたと唇を噛んだが、1年後にはそこまでレベルアップする自信もあった。実際、東京ガスでの公式戦成績も、1年目(2017年)の打率.276、4本塁打17打点から、2年目(2018年)は打率.336、6本塁打29打点と着実に引き上げる。

 そうしてドラフト指名を待ったが、笹川の名前が読み上げられることはなかった。

「悲観的にはならなかったんですよ。東京ガスで日本一を目指し、日本代表にも呼んでいただいている環境にはやりがいを感じていますから。だから、岡野祐一郎(現・中日)とか指名されなかった同期とは『もう一年、しっかりやろう』と話して、頑張ろうと思いました」

 だが、昨年は都市対抗予選で敗退するなど見せ場を作ることができず、3年目で指名された岡野や瀧中瞭太(現・東北楽天)を見送った。

 実は、そんな笹川を大学生の頃から高く評価している人がいる。中日でゼネラル・マネージャーを務めていた落合博満だ。

「右打ちで、あそこまでのパンチ力を備えた打者はなかなかいない。外野守備も悪くないし、将来的にはプロでも真ん中(クリーンアップ)を打てると判断して、私は指名したいと考えていた。けれど、スカウトから社会人入りが決まったと報告を受けて、残念に感じたのを覚えている」

 その記憶が強いからだろう。昨年、プロのルーキーは誰が台頭するかと話していた時、「笹川はどこへ入団したんだっけ?」と、記憶力が確かな落合にしては珍しく勘違いをした。「ドラフト指名されなかったでしょう」と返すと、実感を込めてこう持論を語った。

「アマチュアの世界では、プロに入れる実力があるか否かを考える。でも、そんなことは誰にもわからないんだ。プロ側のドラフトの考え方は、表現は悪いけど青田買い。ダメ元で可能性にかける。だから、プロでやりたければ、順位や条件は二の次に、まず何とか入ってしまうことが肝心だと思う」

 現状に充実感を覚えながらも、高校時代から一緒にプレーしてきた仲間がプロの舞台で躍動する姿を目の当たりにした時、「何だか胸のあたりがサワサワするんです」と本音を明かした笹川にとって、2020年はどんなシーズンになるのだろう。

 社会人OBでは、佐藤真一(元・ヤクルト)や熊野輝光(元・オリックス)が27歳でドラフト指名され、シーズン100安打以上をマークした。笹川にもそうした可能性はあるが、落合が口にした「26歳か。プロにはラストチャンスだな」という言葉のように、野球人生の中でも最も重みのある一年であることは間違いない。

(写真提供/小学館グランドスラム)