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ドラフト候補が躍動し、社会人選抜がプロ5チームを撃破して初優勝【アジア・ウインター・ベースボール】

横尾弘一野球ジャーナリスト
2020年のドラフト候補・栗林良吏(トヨタ自動車)は圧巻の投球を見せた。

 11月23日から約3週間にわたって開催されたアジア・ウインター・ベースボール2019は、12月15日に台湾・台中市の洲際棒球場で3位決定戦と決勝が行なわれた。3位決定戦は、川崎宗則がコーチ兼内野手で所属する味全ドラゴンズが、7対0で台湾プロ先発に快勝した。

 NPB RED、社会人選抜、台湾プロ選抜、味全ドラゴンズ、NPB WHITE、韓国プロ選抜が15試合(各チーム2試合は雨天中止)を戦ったリーグ戦については、以下にリポートした。

NPB REDが首位でNPB WHITEは準決勝進出ならず

 NPB WHITEと韓国プロ選抜による5位決定戦は13日に行なわれ、2対2の引き分け。大会規定により、リーグ戦で上位のNPB WHITEが5位となる。

 14日はNPB REDと台湾プロ選抜、社会人選抜と味全ドラゴンズによる準決勝。NPB REDの先発を任された伊藤 翔(埼玉西武)は、1回表に2点を先制されたが、その裏に一死満塁からボークで1点を返すと、小郷裕哉(東北楽天)の内野安打で同点とし、川越誠司(埼玉西武)がライトへ逆転3ラン本塁打を放つ。

 心強い攻撃で立ち直った伊藤は、5回までを2点で切り抜け、6回以降は4投手が無失点リレー。打線も3回、8回に1点ずつを追加し、NPB REDはリーグ戦1位のチーム力を見せつけた。

 また、味全ドラゴンズを4対2で倒した社会人選抜では、2020年のドラフト候補と目される大卒ルーキーたちが躍動した。先発の森田駿哉(Honda鈴鹿)は、2回表に2点を失うと、続く3回表も二死二、三塁のピンチに立たされたが、ここを三振で切り抜けると波に乗り、4回から7回は4連続を含む8奪三振でひとりも走者を許さない。

 その熱投に応えるように、3回裏に二死から同点に追いついた打線は、5回裏二死三塁から逢澤崚介(トヨタ自動車)の左越え二塁打と中野拓夢(三菱自動車岡崎)の中前安打で2点を勝ち越し。8回からは栗林良吏(トヨタ自動車)がパーフェクト・リリーフで逃げ切る。

2020年のドラフト候補・栗林が連日のパーフェクト・リリーフ

 そうして迎えたNPB REDと社会人選抜による決勝。NPB REDは清水 昇(東京ヤクルト)、社会人選抜は岩本喜照(日本新薬)が先発し、3回まではスコアレスで進む。4回表に社会人選抜が中野の右前安打、向山基生(NTT東日本)の二塁打、一死から吉田叡生(Honda)の四球で満塁にすると、矢野幸耶(三菱日立パワーシステムズ)の左犠飛で1点を先制。なお二死一、二塁から、長澤壮徒(NTT東日本)が右中間を真っ二つに割る二塁打で2者が還る。

 その裏のNPB REDは吉田大成(東京ヤクルト)、野村大樹(福岡ソフトバンク)の安打、小郷の四球で二死満塁にすると、当たっている川越が中前に弾き返して2点を返す。6回裏二死一塁で川越を迎えると、左腕の中川一斗(JFE西日本)に交代して凌いだ社会人選抜は、7回表に長澤のソロ本塁打でリードを2点に広げる。

 それでも、最大のヤマがその裏に訪れる。社会人選抜は、四番手に本田洋平(日本生命)を注ぎ込むが、2四球と失策で一死満塁に。だが、村林一輝(東北楽天)は初球を叩くも遊ゴロ併殺に倒れ、NPB REDはどうしても追いつけない。

 社会人選抜は、8回から切り札の栗林を投入。栗林は先頭を右飛に仕留めると、そこから圧巻の5連続三振で試合を締め、社会人選抜はリーグ戦で2敗2引き分けと唯一、苦手にしていたNPB REDを破り、プロ5チームを相手に見事な初優勝を果たした。

 惜しくも敗れたNPB REDだが、古谷優人、笠谷俊介、尾形崇斗と福岡ソフトバンクの若手投手はイキのいい投球を見せるなど、この大会で腕を磨いた選手が来季にどんな成長を見せてくれるか楽しみだ。

(写真提供/小学館グランドスラム)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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