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2019年ドラフトの注目株【2】――着実に力をつけた「九州四天王」のアンカー・太田 龍(JR東日本)

横尾弘一野球ジャーナリスト
都市対抗は三回戦で敗れたが、太田 龍の力強い投球に対する評価は変わらない。

 第45回社会人野球日本選手権大会の地区予選の中でも、ドラフト候補が揃う関東最終予選が8月30日に大田スタジアム、9月2日には埼玉県営大宮公園球場で幕を開ける。プロ球団のスカウトが熱い視線を注ぐ逸材が揃うJR東日本では、ドラフト指名解禁を迎える3名の投手が競い合っている。

 3年前にも北海道日本ハムから6位指名されたサウスポー・山口裕次郎は、一時の不調を脱してイキのいいボールを投げ込むようになってきた。マウンド上での笑顔が印象的な西田光汰は、主にリリーフとして着実に実績を積み重ねている。そして、190cm・91kgという体格も魅力の太田 龍は、エースらしい投球を続けて注目度をさらに高めている。

「誰にも負けたくない。先発したら、しっかり試合を作って完投を目指したい」

 そう強い意気込みで臨んだシーズンは、最速153キロのストレートを軸に、フォークボールやチェンジアップを織り交ぜる投球の完成度を高める。真価を問われる都市対抗東京二次予選でも、第三代表を獲るまでの全5試合に登板。16回を投げて防御率3.94は物足りないにしても、15奪三振の力強さは高く評価された。

 勝負の東京ドームを前にした強化練習では、外角低目を狙ってストレートを10球連続で投げ込む練習に取り組み、「7~8球ストライクを投げられなければ、プロでは通用しない」と徹底して反復。そうして初戦(二回戦)の先発を任されると、勢いのあるヤマハ打線に決定打を許さない。5回1/3を5安打1失点、無四球にまとめて勝利を引き寄せる投球をスカウト陣は「丁寧に低目を狙う意識の高さは、プロでも成長につながる」と絶賛。太田自身も「ストライクゾーンで勝負できた」と充実した表情を見せた。

着実に成長してきた「九州四天王」のアンカー

 中1日で再び先発したNTT西日本との三回戦は、ボールが高目に浮いたところを狙われ、不運な安打もあって1回表に5失点。3回でマウンドを譲ったが、「緊張感の中で63球を投げ、中1日でどんな投球をするのか見られたのは大きな収穫」と語るスカウトがいたように、若獅子賞を手にした昨年からの成長ぶりに、高い評価は揺るがないようだ。

 鹿児島・れいめい高時代は、都城高の山本由伸(現・オリックス)、九産大九産高の梅野雄吾(現・東京ヤクルト)、福岡大大濠高の浜地真澄(現・阪神)と「九州四天王」と呼ばれた。太田を除く3人は高校からプロへ飛び込み、山本は1点台の防御率で6勝、梅野はチームが不振の中でもリリーフで58試合に登板、浜地もプロ初勝利を挙げるなど20試合に登板(いずれも8月25日現在)と、今季は将来が楽しみな歩みを見せている。

 また、社会人でも都市対抗でベスト8進出に貢献した河野竜生(JFE西日本)、トヨタ自動車の補強で活躍した立野和明(東海理化)、力強さも備わってきた浜屋将太(三菱日立パワーシステムズ)ら、チームメイト以外にも目立つパフォーマンスを発揮する同期が注目を浴びている。

 スカウトが期待するのは、ドラフト前の最後の公式戦となる日本選手権予選でのアピールだ。好投して代表権を獲得すれば、それは育ててくれたチームへの恩返しにもなる。「九州四天王」のアンカーは、気迫あふれるマウンドさばきで、いよいよ山本らが刺激し合う世界に飛び込むか。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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