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プロ注目のWエースで千葉黎明が初出場を目指す【第100回夏の甲子園東西千葉大会が7月11日に開幕】

横尾弘一野球ジャーナリスト
重量感ある速球が武器の渡部翔太郎(右)と140キロ台中盤をマークする林 直樹。

 大きな節目の第100回を迎える全国高等学校野球選手権大会は、6月23日に南北北海道と沖縄で開幕した地方大会で熱戦が繰り広げられている。今回は通常の北海道、東京に加えて埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪、兵庫、福岡の7府県も2枠で、史上最多56代表が甲子園に駒を進めるが、163校が東83、西80に分かれる千葉は、いよいよ7月11日に開会式が行なわれる。

 強豪校、伝統校がバランスよく分かれ、例年以上に熾烈な戦いが予想される中、創立95年目に悲願の初優勝を狙うのが、東大会でAシードの千葉黎明高だ。2011年に成東高出身の荒井信久監督が就任。荒井は明治大、神戸製鋼で捕手としてプレーしたあと、1992年のバルセロナ五輪で日本代表コーチを務める。さらに、神戸製鋼、明治大で監督を歴任するとプロの世界に転じ、横浜(現・横浜DeNA)とオリックスでスカウトを担う。

「野球人生の集大成という時期に、故郷に近い千葉黎明で、野球の原点とも言える高校野球に携われるのは有難いこと」

 そう語る荒井は、自身の経験を惜しみなく生かした指導で選手を鍛え、常に優勝を狙える位置までチーム力を高める。そして、初優勝の原動力にと期待を寄せるのが、プロ球団のスカウトも熱い視線を送る二人の右腕エースだ。

プロも注目するWエースのフル回転で悲願の初優勝へ

 林 直樹は、166cmと上背には恵まれていないが、強気のマウンドさばきで1年時から登板機会を勝ち取り、回転のいいストレートは140キロ台中盤をマークするまで成長した。背番号1で臨んだ昨夏は五回戦で敗れ、メンタル面に課題を感じたという。

「自分の打席が不本意な結果だった直後や、味方にエラーが出た場面でコントロールを乱してしまうことが多かった。下半身を強化しながら、粘り強く投げ抜くことをテーマにやってきて手応えはある。先発として、しっかり試合を作りたい」

 その林と競い合いながら、この夏にエースナンバーを背負うのが渡部翔太郎である。178cm・79kgの身体を柔らかく使い、重量感のあるストレートを軸にリズムのいい投球を展開する本格派は「2年生の夏に、マウンドに立てないまま負けた悔しさを原動力にやってきた」と言い、こう続ける。

「ボール球でも意味を持って投げ込めるよう、投げ込みと走り込みでコントロールを磨いた。野手から信頼されるピッチングで、林と力を合わせてチームを勝たせたい」

 そんな二人を、オリックスの牧田勝吾チーフスカウトは高く評価する。

「渡部君は、春の関東大会で見た時から、担当スカウトに追いかけるようお願いしました。ストレートに力がありますし、甲子園の大舞台を経験すれば一気に伸びる可能性も秘めている。また、林君はうちの山岡泰輔のように、小柄でも外角低目の制球力を生命線に活躍できるタイプ。身体能力が高く、イキのよさにも魅力があります。この夏の結果次第で大学や社会人に進むとしても、ずっとチェックしたい存在ですね」

 昨秋の県大会では、関東大会を制覇して選抜に出場した中央学院高に2-3と善戦し、今春は関東大会で二回戦に進出。打線も破壊力をアップさせているだけに、まずは14日にZOZOマリンスタジアムで行なわれる予定の初戦(成田国際高と東金商高の勝者と対戦する二回戦)を手堅く滑り出し、頂点まで快走したい。

 名将の下で、豊かな将来性を備えた二人のエースが夏の主役に躍り出るか注目だ。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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