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ドラフト候補・岡野祐一郎が開幕戦で快投【第73回東京スポニチ大会レポート1】

横尾弘一野球ジャーナリスト
アジア・ウインター・ベースボールの奪三振王・岡野祐一郎は、今季初先発を白星で飾る

 野球界に春の到来を告げる第73回東京スポニチ大会が、3月11日に神宮球場、大田スタジアム、岩槻川通公園球場の3会場で幕を開けた。

 今季の社会人で一番の注目ポイントは、昨年のアジア・ウインター・ベースボール(AWB)で活躍した選手がドラフト解禁の2年目を迎えること。神宮球場の開幕戦では東芝と東京ガスが対戦し、東芝は岡野祐一郎、東京ガスは臼井 浩と、その注目株が先発で激突した。

 6回までは息詰まる投手戦だったが、7回裏に4安打を集中して東芝が3点を先制すると、岡野は8回途中まで3安打無失点の好投。3投手のリレーで東京ガスを完封し、今シーズンを首尾よく滑り出した。

 岡野は聖光学院高3年春夏の甲子園に出場し、夏の一回戦では日大三高を4安打1失点に抑えて勝利に貢献する。大会後には18U世界選手権の日本代表に、大谷翔平(現ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム)や藤浪晋太郎(現・阪神)とともに選出される。青山学院大でも1年春からリーグ戦に登板し、昨年、名門の東芝へ入社した。

 すると、ちょうどエース不在だったチームで頭角を現し、都市対抗では一回戦の先発を任されるエース格に。都市対抗ベスト4、日本選手権ベスト8の原動力になり、AWBのメンバーに選ばれる。

アジア・ウインター・ベースボールで奪三振No.1に

 AWBに出場した社会人日本代表候補は、38名の選手を大会前後半に分けたが、先発の柱と期待される岡野は全日程に参加。5試合に先発してチーム最多の28回を投げ、11月30日のイースタン選抜戦では7回で12三振を奪うなど、大会最多の38奪三振で防御率も1.93をマークする。対戦した打者からも「社会人代表は好投手が揃っていたが、中でも勝負球のコントロールが抜群だった」と評された。

 プロのスカウトから注目される今季も、愛媛県松山市で行なわれた春季キャンプを順調に過ごし、新たに指揮を執る平馬 淳監督も迷わず開幕投手に。その期待に十分応える投球を見せた。

 宮城県石巻市出身の岡野にとって、勝負のシーズンを3月11日にスタートさせたことには大きな意味がある。

「7年前の東日本大震災の時は高校生で郷里を離れていましたが、子供の頃に遊んだ場所や小学校など、実家の周りは変わり果てた景色になってしまった。初戦の先発は期待されているということですし、それが3月11日だったのも大きな意味がある。努力を重ねて、今シーズンがいい方向になれば」

 昨年はボールがシュート回転する日は苦しいマウンドになるという課題があったが、AWBではそれも解消され、社会人日本代表候補の右腕では頭ひとつ抜けた実績を残している。最大の目標は、東芝を8年ぶりの都市対抗優勝に導くこと。それに加えて、8月24日からインドネシア・ジャカルタで開催される第18回アジア競技大会でも、日本に金メダルをもたらす快投を見せてほしい。

 アジア王座へ最大のライバルと目される韓国は、すでに大会期間中の公式戦を中断し、プロのトップクラスでチームを編成することが決まっている。ただ、2006年の同大会では、小松 聖(現・オリックスコーチ)や高崎健太郎(元・横浜DeNA)の継投で、元福岡ソフトバンクの李大浩らプロの強打者を並べた韓国を倒している。

 そんな痛快な試合を再現するためにも、岡野のさらなる飛躍に期待したい。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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