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アジア選手権優勝で評価を高めた社会人のドラフト候補たち

横尾弘一野球ジャーナリスト
最優秀選手の田嶋大樹(右端)ら、ドラフト候補がアジア選手権で個人賞も手にした。

 10月2日から台湾・新北市の新荘棒球場を中心に開催された第28回BFAアジア野球選手権大会に臨んだ侍ジャパン社会人代表は、見事に2大会ぶり19回目の優勝を果たした。しかも、兵役中の選手を含めてプロで固めた韓国、郭李建夫監督(元・阪神)の下で徹底して強化されているチャイニーズ・タイペイを投打に圧倒。両チームとの3試合で19得点1失点という完璧な戦いぶりだった。

 そして、ドラフト候補に挙げられていた社会人の逸材たちが、アジア王座を奪還したパフォーマンスで評価を一気に高めている。

 清宮幸太郎(早稲田実高)と並び、1位での競合が予想される田嶋大樹(JR東日本)は、現地入り直後の練習中にボールが頭部を直撃。大事には至らなかったが、偏頭痛で登板を回避していた。ただ、エースの責任感で決勝に照準を合わせて先発すると、5回を3安打無失点で優勝に貢献し、最優秀選手に輝いた。

「高校時代から田嶋を追いかけているが、三振を奪う球速やキレ以上に、打たせて取る投球術を身につけたのが大きい。清宮を超える1位入札も十分に考えられる」

 ある球団のスカウトがそう語るように、今回の目玉としての評価は揺るぎない。また、そのスカウトが、粗削りながらコンスタントに150キロを叩き出すパワー・ピッチングで、将来性ではナンバーワンと見るのが鈴木博志(ヤマハ)だ。

 これまではフォームが安定せず、投げてみなければわからないという状態だった。それが、代表候補の選考合宿でフォーム固めのヒントを得ると、みるみる安定感を高め、9月の日本選手権東海最終予選では1安打完封勝利を挙げるまでに成長。アジア選手権でも、パワーでは上回るチャイニーズ・タイペイの打者を力でねじ伏せた。「プロではストッパーを目指したい」という剛腕も、単独指名を狙って1位入札する球団はあると見られている。

 3試合、12回を無失点に抑え、最優秀防御率と大会ベストナインを手にした谷川昌希(九州三菱自動車)も、前出のスカウトによれば「指名を確実にしたと言っていい」。チームでは完投、連投が当たり前のフル回転の活躍を見せており、それで培った制球力とスタミナが自慢だ。攝津 正(福岡ソフトバンク)のようになれる可能性を秘めると、評価は鰻上りだ。

2年前の悔しさを糧に実力を高めた野手たち

 さらに、今回の侍ジャパン社会人代表は、一発勝負の国際大会ではなかなか使えない機動力を駆使して勝機を広げた。それで注目された野手陣の評価も、軒並み上昇傾向だという。

 二塁手の田中俊太(日立製作所)は、広島でリードオフに定着した田中広輔の実弟として知られていたが、社会人時代にアジア選手権で最優秀守備賞を手にした兄と同様、フットワークに優れた守備力が持ち味。甘いボールは長打にする打撃、判断力に長けた走塁も即戦力レベルで、水面下での駆け引きの末、上位で指名される可能性も高まっているようだ。

 また、田中と同様にスカウトを唸らせているのが藤岡裕大(トヨタ自動車)である。亜大ではベストナイン3回で身体能力に恵まれた三塁手。スカウトも熱い視線を送っていたが、「あれでショートならば……」と指名を見送った。それを理解する藤岡も、トヨタ自動車ではショートを志願。昨年は、源田壮亮(埼玉西武)がいたためにライトを守ったが、今季はショートを守り抜き、アジア選手権でもスピードと高い正確性を見せつけた。

 五番に座り、3三塁打をはじめ、勝負強さをアピールした菅野剛士(日立製作所)も、数球団が狙っているという。社会人の外野手は、どちらかと言えば長打力よりも守備や走塁を評価されるケースが多いのだが、菅野の場合は思い切り振れることと、そのスイング・スピードがプロでも中軸級という点が買われている。

 9打点をマークして打点王を獲得した神里和毅(日本生命)は、バットコントロールの巧さと加速のいい走塁が目を引く。「力を抜いて軽くスイングしたら、打球が飛ぶようになった」と神里自身が言うように、余分な力を入れないことで打撃に柔軟性が生まれ、出塁率も上がって足を生かせるようになった。

 田中、藤岡、菅野、神里の共通点は、大学4年時にプロ志望届を提出したものの、指名されなかったこと。それでも、強い決意で社会人に飛び込み、自分の課題を克服しながらスカウトを後悔させる活躍を続けている。このほかにも、強打の捕手・木南 了(日本通運)と大城卓三(NTT西日本)、攻守に堅実さが光る北村祥治(トヨタ自動車)、守備力を磨いた福田周平(NTT東日本)と、野手には実力派が揃う。

 目標としてきたプロの門を叩くのは誰か。10月26日のドラフト会議を楽しみに待ちたい。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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