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【第88回都市対抗野球大会第10日】延長で東芝、完封で日本通運、打線爆発で三菱日立PSがベスト4

横尾弘一野球ジャーナリスト
三菱日立PSの新人・龍 幸之介は、同点ソロに続いてダメ押しの2ラン本塁打を放つ

 ベスト4をかけた3試合は、黒獅子旗にかける選手たちの執念が一つひとつのプレーで表現され、勝敗を超えて観る者の心を打つ展開だった。

準々決勝/川崎市・東芝 5×4 東京都・JR東日本

 JR東日本の田嶋大樹は、今大会で唯一、一回戦から3試合連続で先発マウンドに立つ。この試合でも力みのないフォームからキレ味鋭いボールを投げ込み、3回まで東芝の打線を完璧に抑える。1回裏に東條 航にソロ本塁打を浴びたものの、東芝の先発・岡野祐一郎も、新人とは思えぬ落ち着いたマウンドさばきで2回以降は追加点を与えない。

 東芝は、4回表一死から堀米潤平が四球を選ぶと、山崎 錬(JX-ENEOSから補強)の内野安打、金子聖史も左前安打とたたみかける攻撃で同点に。6回裏にJR東日本が丸子達也の三塁打で勝ち越すが、7回表の東芝は代打の吉田 潤が同点弾を放ち、互いに一歩も譲らぬ好ゲームを繰り広げる。

 7回裏一死二塁から影山潤二の中前安打でJR東日本が三たびリードを奪うも、東芝は土壇場の9回表一死から松本幸一郎がライト線に落ちる二塁打を放ち、続くベテランの大河原正人が左前に弾き返して同点。ここでJR東日本は投手を古田康浩、三宮 舜と、明治安田生命からの補強勢につなぎ、逆転は許さなかった。

 3対3のまま延長11回までに決着せず、今大会2試合目のタイブレーク(一死満塁から攻撃)に。12回表の東芝は、先頭の佐藤 旭が左前に打ち返すと、二塁走者の井川良幸も好走塁で生還して2点。その裏のJR東日本は、二死から東條が押し出し四球を選んだが、東芝の二番手・柏原史陽(JX-ENEOSから補強)が踏ん張った。

 タイブレークで雌雄を決するのがもったいないと思えるほど、密度の濃い名勝負だった。

準々決勝/さいたま市・日本通運 2×0 大垣市・西濃運輸

 一回戦では不甲斐ない投球だった日本通運の高山亮太が、左腕エースと呼ばれるに相応しい快投を披露した。2試合続けて初回に猛攻を見せている西濃運輸の打線を3人で片づけるなど、序盤は二塁さえ踏ませない。3回裏に女房役の木南 了が先制ソロ本塁打を放つと、4、5回は2安打を許したが、丁寧に低目を突いて得点は与えない。

 一方、西濃運輸の先発・山下大輝も、強気の投球で流れを引き寄せようとする。日本通運は追加点のチャンスは築いたが、要所を抑えられて1対0のまま終盤になだれ込む。

 そして、8回裏――。日本通運は先頭の浦部剛史が四球で出塁し、続く内藤大樹(JFE東日本から補強)がレフトの左へ長打を放つが、本塁を突いた浦部はタッチアウト。無謀な走塁で流れが変わりそうになったものの、四番の北川利生がライト線に弾き返して内藤が生還し、大きな2点目を挙げた。

 これでやや楽になった高山は、9回表の先頭打者を味方の失策で出したものの、後続を討ち取って完封勝利。二回戦でノーヒットノーランを達成した阿部良亮に続く好投で、11年ぶりのベスト4に導いた。

準々決勝/横浜市・三菱日立パワーシステムズ 12×3 広島市・JR西日本

 1回裏に春原直登のソロ本塁打でJR西日本が1点を先制したが、直後の2回表に新人・龍 幸之介のソロ弾で同点とした三菱日立パワーシステムズは、4回表に2四死球と安打で二死満塁にすると、対馬和樹の左中間を破る二塁打で3者が生還。さらに、5回表には一死満塁から押し出し四球で1点を加えると、若林晃弘(JX-ENEOSから補強)が満塁本塁打を放ち、一気にリードを8点に広げた。

 その裏にはJR西日本も無死満塁と反撃し、2本の犠飛で2点を返す。それでも、7回表に龍のこの試合2本目となる2ラン本塁打など、さらに3点を加えた三菱日立PSは12対3で完勝。7年ぶりに準決勝に進出した。

 西日本勢から唯一ベスト8に残ったJR西日本も敗退し、今大会の4強は関東勢が独占した。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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