ラーメン店の常識を変えた『博多一風堂』

 今から36年前の1985年、福岡大名の路地裏に小さなラーメン店が出来た。店の名前は『博多一風堂』(本店:福岡県福岡市中央区大名1-13-14 運営:株式会社力の源カンパニー)。現在では国内約150店舗、海外約300店舗を構える人気ラーメン店となっている。

 かつてラーメン店はどこか薄汚くて、女性一人では入れないような雰囲気の場所だった。しかし、清潔感がありジャズも流れるお洒落な雰囲気の中、丁寧な接客で臭みの無い豚骨ラーメンを提供した『一風堂』は瞬く間に大人気となった。さらに『新横浜ラーメン博物館』開業と共に出店し、知名度は一気に全国区へ。そして『一風堂』の登場から、世の中のラーメン店の雰囲気は明らかに変わっていった。

『博多一風堂』創業者の河原成美さん。今も時間があれば店へ足を運び厨房に立つ。
『博多一風堂』創業者の河原成美さん。今も時間があれば店へ足を運び厨房に立つ。

 「ラーメン屋は汚いもんだって誰が決めたんだって。今までこうやって来たんだからそれでいいだろう、って何も考えていない店がいかに多かったか。向上心や志が無いのが一番嫌いなんだよ。どうせやるなら今までと同じを良しとせず、新しいことに挑戦し続けなきゃ面白くないよね」(博多一風堂 店主 河原成美さん)

 河原さんはメディアにも積極的に出てラーメン屋という職業の地位を上げた。海外にもいち早く進出し、世界にラーメン文化を広めて後進の道を拓いた。河原さんは常にラーメン界をリードし続けているトップランナーだ。

長く愛されてきた大名本店のラーメンを一新

『博多一風堂』の本店は、福岡大名の路地裏に今もひっそりと佇んでいる。
『博多一風堂』の本店は、福岡大名の路地裏に今もひっそりと佇んでいる。

 今や世界各国に展開するグローバル企業となった『一風堂』の本店は、福岡大名の路地裏にある。『一風堂』と言えば「白丸元味」「赤丸新味」という二種類の豚骨ラーメンが看板メニューだが、現在本店のメニューには白丸も赤丸もない。2021年1月、本店のメニューが刷新され、今までとはまったく別のラーメンになった。一風堂のラーメンはこれまでも細かな改良が続けられてはいたが、ここまで全面的に一新されたのは久しぶりのことだ。

 新しいメニューは二種類。「博多とんこつらぁめん」は、豚頭のみを14時間煮込んで炊き上げたスープに、福岡県産小麦100%の自家製極細ストレート麺。一風堂が創業の原点に立ち返り、博多ラーメンを今一度見つめ直して辿り着いた新たな一杯。「博多しょうゆらぁめん」は、創業当時に出していた醤油ラーメンを進化させて復刻させたものだ。

ラーメンも店も変わっていかなければならない

『博多一風堂 大名本店』(福岡市)の新メニュー、「博多とんこつらぁめん」と「博多しょうゆらぁめん」。
『博多一風堂 大名本店』(福岡市)の新メニュー、「博多とんこつらぁめん」と「博多しょうゆらぁめん」。

 「赤丸や白丸は今からもう25年も前に出しているんだよ。新しいラーメンを作りたいっていう想いがまずは一番。そしてやはり本店は特別な存在なので、スープも現場でしっかりと炊いて、本店でしか食べられない一杯を作ろうと思ったんだ」(河原さん)

 店舗が増えて人も増えて、良くも悪くも「企業」になってしまったと語る河原さん。いくら店が増えても一人のお客さんと、一杯のラーメンがすべて。だからマネージャーなどの管理職も現場に復帰させて、徹底した「現場第一主義」を今一度磨き上げていく。河原さん自身も厨房に立って麺を上げてラーメンを作り、お客さんと触れ合う機会を増やし、店内でのスープ仕込みも再開した。創業当時の原点に立ち返るという強い決意が、この新しいラーメンに込められているのだ。

 「コロナによって世の中が変わったよね。人の動きも変わり飲食も厳しい状況になった。その時に考え方を変えたんだ。しばらくはより本質的でより個店的なものが求められる時代が続く。そこで今までと同じやり方が通用するわけないよね。だから一風堂も変わる。まずはこの本店から変えていく。ラーメンも店の在り方もね」

「変わらないために、変わり続ける。」一風堂の挑戦はこれからも続いていく。
「変わらないために、変わり続ける。」一風堂の挑戦はこれからも続いていく。

※写真は筆者によるものです。

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