焼肉店に掲げられたもう一つの暖簾

『ヤキニクラーメンフタバ』(福岡市)に掲げられた「ラーメン」の暖簾と提灯。
『ヤキニクラーメンフタバ』(福岡市)に掲げられた「ラーメン」の暖簾と提灯。

 福岡市中央区警固。市内を横断する「国体道路」沿いに、2017年オープンした『ヤキニクラーメンフタバ』(福岡市中央区警固1-14-3)は、焼肉とラーメンが二枚看板の人気店。焼肉は厳選した伊万里牛を使った本格派で、ラーメンも今まで福岡にはなかった関東スタイルのラーメンを提供し、一躍人気店となった。

 しかし、長引くコロナ禍によって売り上げは低迷。感染者が多い福岡も緊急事態宣言やまん延防止等措置が繰り返され、飲食店にとって厳しい状況が続いている。そんな緊急事態宣言中の9月半ば、『フタバ』の店先に古びた暖簾が掲げられた。そこには『長浜豚骨まるえいラーメン』の文字が染め抜かれている。

 「この暖簾は今から約20年前に、私が千葉で始めたラーメン店の暖簾なんです。以前より千葉で出しているラーメンを福岡でも出したいと考えていましたが、今回のコロナ禍で新しい手を打たねばならないと思い、ラーメンを一新しました」(ヤキニクラーメンフタバ店主 栄浩司さん)

千葉で焼肉店とラーメン店を経営

千葉県山武市で栄さんが営む二軒のラーメン店。その隣には焼肉店「栄や」も営んでいる。
千葉県山武市で栄さんが営む二軒のラーメン店。その隣には焼肉店「栄や」も営んでいる。

 店主の栄浩司さんは福岡生まれの福岡育ち。大学進学と共に上京し、当時東京で大人気を誇ったラーメン店『なんでんかんでん』(閉店)でラーメンを学んだ。その後、人気焼肉店に就職して焼肉の世界へ入り、1997年に独立して千葉成東で焼肉店『栄や』を開業した。

 5年後の2002年には、成東で念願の豚骨ラーメン店『長浜豚骨まるえいラーメン』を開業。さらに昨年には『まるえい』の隣に『ラーメンイレブン』もオープンするなど、現在も千葉を拠点にしているが、生まれ育った福岡の地で飲食店をやる夢を叶えるべく、2017年に焼肉とラーメンを出す店として『ヤキニクラーメンフタバ』をオープンしたのだ。

 「自分が関東で衝撃を受けたラーメンを、地元の福岡の人にも食べてもらいたい」「豚骨以外にも美味しいラーメンがあるのを知って欲しい」という思いから、敢えて福岡では得意な豚骨ラーメンを封印。今は無き名店『イレブンフーズ』の味を再現したラーメンは、ラーメンファンをはじめ多くの人に人気を博していた。

 しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大によって、外食する人たちの数は激減。焼肉とラーメンという業態は、特に夜の利用ニーズが高く、ランチ営業を強化する必要に迫られた。2021年からは豚肉と鶏肉の焼肉を45分間食べ放題で980円というランチを提供し話題を集め、新たな一手として長年封印していた豚骨ラーメンを今回提供することとなったのだ。

濃厚で深みのある味わいの豚骨ラーメン

『ヤキニクラーメンフタバ』で新たに登場した「ラーメン」。20年の経験が生かされた一杯だ。
『ヤキニクラーメンフタバ』で新たに登場した「ラーメン」。20年の経験が生かされた一杯だ。

 焼肉店で出す豚骨ラーメンと侮るなかれ。千葉で20年にわたり豚骨ラーメンを作り続けてきた栄さんが作る一杯は、言うまでもなくベテランの域に達した本物の豚骨ラーメン。『なんでんかんでん』で教わったラーメンをベースにしつつも、試行錯誤を繰り返して現在の味にたどり着いた。栄さんの20年のラーメン人生が反映された一杯になっている。

 前日のスープをベースに新たなスープを合わせていく「呼び戻し」製法で作られる豚骨スープは、濃度も高く深い旨味を蓄えた味わい。このラーメンを作るために千葉で長年炊いてきた豚骨スープを福岡に持ち込んでベースにした。まだ福岡で炊き始めたばかりだが、これから日に日に旨味が増していくはずだ。20年の付き合いがある地元福岡の製麺所の低加水細ストレート麺は、ザクッとした歯切れの良さが特徴だ。

 新たな豚骨ラーメンはランチタイムはもちろん、夜もラーメンのみで注文が可能だ。豚骨ラーメンの提供初日から多くの人が訪れ、早くも手応えを感じているという栄さん。豚骨ラーメン激戦区の福岡に、いきなり実力派の豚骨ラーメンが誕生した。

※写真は筆者によるものです。

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