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飲食店を安心して利用するために コロナ禍における飲食店の正しい選び方と使い方

山路力也フードジャーナリスト
正しく感染予防対策をしている飲食店を使おう(提供:kagehito.mujirushi/イメージマート)

感染拡大防止に努めながら飲食店を正しく利用する

 政府は27日、新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言を愛知など8道県に新たに発令した。宣言に準じる「まん延防止等重点措置」には4県を追加し、いずれも期限は東京など同じく9月12日までとなっている。

 宣言地域では飲食店に酒類提供の一律停止、重点措置地域では原則停止を求める。デパートなどの大型商業施設では入場整理や制限を行うよう要請するほか、テレワーク徹底による出勤者数7割削減も呼び掛けることになる。

 長引くコロナ禍によって、飲食業界へのダメージは凄まじいことになっている。昨年春からの断続的な緊急事態宣言やまん防措置での要請に従い、飲食店は酒類販売の制限や営業時間の短縮を余儀なくされている。しかしながら、飲食店は営業を禁止されているわけではなく、不要不急ではない日常生活の一環として位置付けられているのもまた事実だ。

 外食産業の厳しさは日に日に増している。飲食業界や外食文化が途絶えてしまう危機が迫っている。飲食店は利用して良い。むしろ積極的に利用して欲しい。しかしながら、その行動が感染拡大に繋がってしまうのでは意味がない。感染拡大防止に努めながら、正しく飲食店を使うことが重要だ。

飲食店の衛生基準は著しく向上している

 2020年4月に初めて発出された緊急事態宣言時、「身体的距離の確保」「3密(密集、密接、密閉)の回避」「新しい生活様式」という今までにない概念が一気に私たちの生活に入り込んできた。それから一年余りが経ち、常時マスクを着用したり、身体的距離を確保したり、アルコールによる消毒を徹底するなど、私たちの生活スタイルは様変わりした。

 しかしながら長引くコロナ禍によって、私たちは良くも悪くも「コロナ慣れ」してしまっているのも事実だ。危機感に乏しくなってコロナ以前の生活様式に戻っているところはないだろうか。飲食店の利用時についても、平気で向かい合わせで大声を出しながら喋っていたり、お酒の回し飲みや料理の回し食いをし、まるでコロナが収束したかのような振る舞いをしている人も少なくない。これでは全く意味を成さない。

 その一方で、飲食店のコロナ対策は日々アップデートされている。テーブルや椅子を減らす、従業員も客もマスク着用を必須にする、ビニールシートやアクリル板で人と人の間に仕切りを作る、入退店時にアルコール消毒を義務付ける、ドアや窓などを開放して換気を良くしたりテラス席を設置するなどの対応は、飲食店にとっては完全に「当たり前」となった。さらに身体的接触を防ぐ意味合いでのキャッシュレスの導入なども加速度的に増えている。飲食店側はコロナ感染拡大防止に全力を尽くしているといって良いだろう。

 飲食店側のコロナ対策はこの一年で劇的に変わった。私たち客側がどう店の中で振る舞うかが問われている。飲食店と同じく感染拡大防止への高い意識を持って「うつらない、うつさない」という行動が必要だ。店と客で感染拡大を防ぐ協力体制を構築しなければならない。そのためにも今一度「安全な飲食店の使い方」を確認しておきたい。

安心安全な飲食店の基準とは

こまめなアルコール消毒をしている店を選ぼう。
こまめなアルコール消毒をしている店を選ぼう。写真:アフロ

 飲食店におけるコロナウイルスの主たる感染ルートは「接触感染(粘膜感染)」「飛沫感染」である。他にも「空気感染(飛沫核感染)」「媒介物感染」があるが、飲食店の場合は一般的に吸排気や換気に関してかなり神経を払った設計になっていることが多く、密閉空間にはなっていない店も少なくない。

 さらにファストフードやラーメン店など、人数が少なく短時間で喫食が済む店の場合は、居酒屋など長時間いる店と比べて飛沫感染や空気感染のリスクは低いと考えて良いだろう。飲食店で特に注意すべきは「接触感染」のリスクだ。

 「接触感染」の防止策としては、接触を避けることが大前提で、接触したらすぐに手洗いや消毒をすることが基本だ。入店時に消毒用のアルコールを設置したり消毒を義務付けていたり、こまめに卓上や券売機などのアルコール除菌を行っている飲食店は感染リスクが低いと考えて良いだろう。さらにスタッフや客の入店時における検温も実施している店であればより安心だ。

 また「飛沫感染」の防止策としては、理想はしっかりと席間が確保されている店を利用することだが、現実問題としてそういう店ばかりがあるわけではない。カウンターに横並びで喫食する場合はそこまでリスクは高くないが、注意すべきは向かい合わせで座るテーブル席などの場合だ。真正面に他人が座るような状態は間仕切りがない限りは極力避けた方が無難だろう。

 安全なソーシャルディスタンス(2m以上)が確保出来ない場合は、やはりマスクを着用する必要があるだろう。スタッフにマスク着用を義務付けていたり、客に対してのマスク着用を促している飲食店はリスクが低いと考えて良いだろう。

一人一人が意識を高めて飲食店を利用しよう

 しっかりと感染防止対策をしている飲食店を、客も意識を高く持って利用する。感染拡大を防ぐためには、飲食店と利用客の両方が出来ることを徹底することが重要だ。不用意に恐れることなく、ウイルス感染の基本をしっかりと理解した上で、安心で安全な外食を楽しんで頂きたいと切に願う。

・体調不良、高熱の場合は外出しない。

・マスクを着用して入退店時には手指のアルコール消毒をする。

・喫食中も何かを触ったらこまめに手洗い、消毒をする。

・可安全なソーシャルディスタンス(2m以上)が確保出来ている店を選ぶ。

・大勢で行かずに少人数で利用する。

・普段行動を共にしている人と利用する。

・行列時や会計時の密集に留意する。

・向かい合わせの席は極力避ける。

・おしゃべりは控えめにして、喫食時以外はマスクを着用する。

・料理やお酒の回し食い、回し呑み、大皿料理の取り分けはしない。

フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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