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大阪・兵庫・宮城「まん延防止等重点措置」適用へ 飲食店はどうなるのか?

山路力也フードジャーナリスト
大阪府は感染拡大に終わりが見えない

大阪・兵庫・宮城で全国初の措置適用へ

 31日、大阪府は新型コロナ対策本部会議において、「まん延防止等重点措置」の適用を国に要請することを正式決定した。これにより政府は大阪府に初めて適用する方向で最終調整に入り、兵庫県と宮城県にも出される見通しとなった。措置が適用されると、知事は時短要請に従わない飲食店に対して「命令」を出すことが出来、従わない場合には20万円の「過料」を科すことが出来る。

 「まん延防止等重点措置」は、今年2月に施行された新型コロナウイルス対策の改正特別措置法に新設されたもので、都道府県単位で発出される緊急事態宣言とは異なり、政府が対象とした都道府県の知事が、市区町村など特定の地域を限定することが出来る。措置を講じる要件としては、新規陽性者数などの状況を踏まえ「都道府県で感染の拡大のおそれがあり」「医療の提供に支障が生じるおそれがあると認められること」と定められている。

 都道府県が飲食店などに行える措置としては「従業員への検査受診の勧奨」「入場者の整理」「発熱などの症状がある人の入場の禁止」「入場者へ感染防止のための措置の周知と、それを行わない人の入場禁止」などがある。また知事が事業者に対して、営業時間の短縮などを「要請」し、応じない場合には「命令」することが出来、いずれの場合も事業者名を公表することが出来る。さらに必要な範囲で立ち入り検査などを行うことも可能となる。逆に、緊急事態宣言下では可能である「休業要請」は行えない。

 これに伴い、大阪府下の飲食店に対しては、現状21時までの時短要請が20時までに短縮される可能性を大阪市の松井市長が示唆している。協力金の金額に関しては一日6万円が想定はされているが、現段階では未定だ。

飲食店側は対策を頑張っている

 フードジャーナリストという仕事柄、日々飲食店に足を運ぶ生活をコロナ禍の中でも続けているが、正直な感想としては昨年の緊急事態宣言下と比べると、明らかに今年の方が緊張感に欠けている客が多いと感じている。具体的には、平気で向かい合わせで大声を出しながら喋っていたり、お酒の回し飲みや料理の回し食いをし、まるでコロナが収束したかのような振る舞いをしている人も多く見かけるようになった。

 その一方で、飲食店のコロナ対策はこの一年で着実にアップデートされている。入退店時の検温とアルコール消毒は当たり前と感じている人も多いだろう。テーブルや椅子を減らす、従業員も客もマスク着用を必須にする、ビニールシートやアクリル板で人と人の間に仕切りを作る、積極的に換気するなど、飲食店側はコロナ感染拡大防止に全力を尽くしているといって良いだろう。

 しかしながら、どれほど飲食店が対策を施したとしても、自治体が要請をして営業時間を短くしたとしても、上述したような意識の低い客がいれば意味がなくなってしまう。大切なのは店の対策や営業時間だけではなく、客側の感染拡大防止意識の向上なのだ。

「三密」「5つの場面」を避けた行動の徹底を

 昨年の緊急事態宣言の時に、政府は国民に「新しい生活様式」を示し、「3密回避」「ソーシャルディスタンス」などのキーワードと共に行動の変革を求めた。しかし、良くも悪くも私たちはその言葉や行動に慣れてしまい、緩みも出ているのではないだろうか。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会会長の尾身茂さんは、今月出演したテレビ番組内で、新型コロナ感染拡大を防ぐため「これだけは守ってほしい」という点について、「三密、特にリスクの高い5つの場面(を避ける)。これで終わりです」と説明した。それは一年前に提言されたことと何一つ変わっていない。つまり、私たちがやるべきことはシンプルなのだ。

 リスクの高い5つの場面とは「飲酒を伴う懇親会、大人数や長時間に及ぶ飲食、マスクなしでの会話、狭い空間での共同生活、居場所の切り替わり」のこと。ほとんどが飲食店利用に関連することばかりだ。飲食店を利用する時は少人数で会話を控えめにして、長時間滞在したりハシゴしたりを避ける。これさえ皆が遵守して飲食店を利用すれば良いのだ。

客側の意識と行動を変える呼び掛けを

大阪の繁華街は夜になっても賑わいをみせている
大阪の繁華街は夜になっても賑わいをみせている

 政府及び各自治体には、飲食店への対策を強化するのであれば、同時に利用者である国民や市民に対して、より一層強い感染拡大防止意識を持った行動を呼びかけて頂きたい。それが期待出来ないからこその、強制的な時短要請なのかも知れないが、それではしっかりと対策をしている店や客が浮かばれない。また、飲食店従業員をはじめ、遅い時間帯に食事を取らざるを得ない人たちもいる。皆が飲み会をやりたいわけではないのだ。

 何度もこの場でも書かせて頂いているが、しっかりと対策を施している飲食店からすれば、感染拡大防止意識の低い客の方がよほど怖い。飲食店が上述したような客を拒否する事が出来れば良いが、客商売なのでそれはなかなか難しいだろう。だからこそ行政がしっかりと客側にメッセージを出して、感染拡大を防ぐ飲食店の使い方をアピールして欲しい。飲食店側の対策と客側の利用法はセットでなければ、感染拡大を防ぐことは出来ないと思うのだ。

 また飲食店への要請や制限の運用に関しても、杓子定規に一律で営業時間を短縮するのではなく、合理的かつ柔軟な運用は出来ないものだろうか。例えば20時以降であっても個人客や少人数の客は受け入れ可能にするとか、滞在時間を2時間までに制限するとか、最悪アルコール提供に関しては20時で切るが、営業は深夜まででも可能にするなど、実態に即したいくらでもありそうだ。

 飲食店の利用は日常の買い物や運動と同様に制限されるものではない。飲食店の利用は不要不急ではなく、生活に必須な活動だ。感染を拡げずに街に出て経済を回す。国民一人一人が感染拡大防止と経済活性化の両方を意識して日々の生活をすることが求められている。

※写真は筆者によるものです。

※大阪府の他に兵庫県、宮城県も措置適用になった旨追記しました(4月1日)

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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