『スシロー』『町田商店』にみるコロナ時代に生き残る飲食店の姿とは?

新型コロナウイルス感染拡大により、飲食業界への逆風はいまだ続いている(写真:アフロ)

感染者急増で飲食業界の復調が厳しく

迷走を続ける「GoToトラベル」「GoToイート」によって飲食業界も振り回されている。
迷走を続ける「GoToトラベル」「GoToイート」によって飲食業界も振り回されている。

 新型コロナウイルスの感染急増によって、飲食業界にとって試練の日々が続いている。政府は14日に「GoToトラベルキャンペーン」の利用を全国一斉に休止することを発表。さらに「GoToイートキャンペーン」においても、一部自治体では食事券の販売停止や利用自粛の呼びかけが行われている。感染者数も全国的に増え続けており、東京都では17日、1日あたりの感染者数が822人確認されるなど、状況はさらに悪くなる一方だ。

 2013年に1,000万人を越えた訪日外国人数は年々増え続け、2018年には3,000万人を越えた。そして今年は東京オリンピックにより更なる増加が期待され、飲食業界はインバウンドに照準を合わせていた。それが新型コロナウイルスによって訪日外国人の数は10月までの累計で約400万人と激減している(JNTO推計値)。

 さらにリモートワーク化が加速度的に進み、オフィス街の昼間人口が一気に減った。訪日する外国人が減り、街で働く人も減る中で、飲食業界はテイクアウトやデリバリーに活路を見出しつつ、収束を待って耐え忍んだ。そんな中「GoTo施策」がスタートし、10月以降は客足も戻りつつあり復調の兆しがみられたが、この感染者急増で復調はまた遠のいてしまった。

勝ち負けが明確に分かれて来た飲食業界

コロナ禍にもかかわらず好調が続くラーメンチェーン『町田商店』。
コロナ禍にもかかわらず好調が続くラーメンチェーン『町田商店』。

 とは言え、飲食業界すべてが凹んでいるわけではない。例えば、回転寿司最大手の『スシロー』を手掛ける『株式会社スシローグローバルホールディングス』は、2020年9月売上高で過去最高を記録するなど、復調どころか好調に売上を伸ばしている。また、ラーメン店『町田商店』などを擁する『株式会社ギフト』も、2020年10月期(2019年11月~2020年7月)で、コロナ禍にもかかわらず約80億円、19.8%増の売上になっている。しかしながら、同じ回転寿司やラーメン業態であっても、いまだに昨年対比50%程を推移しているブランドもある。つまり、飲食業界の中にも明確に勝ち負けが現れているということだ。

 その兆候は4月の「緊急事態宣言」発出後早々に見てとれた。人の移動が激減した事により、オフィス街や集合施設にある飲食店が壊滅的な打撃を受けている中で、住宅街やロードサイドの飲食店は比較的影響が少なかった。言うまでもなく人が集まるところにある店は強い。これまでは観光客やオフィスワーカーが多い街が有利だったが、新型コロナウイルスによって観光客需要のない郊外のベッドタウンや住宅街が有利になったのだ。『町田商店』は都市部よりも郊外やロードサイドに出店が厚かったため、緊急事態宣言下においても影響が比較的少なかった。

 さらにテイクアウトやデリバリーが日常生活に浸透したことにより、それらの対策が早々と打てたところはかろうじて踏み止まれているが、後手に回ったところは売上の減少に歯止めがかからなかった。『スシロー』が好調な理由はいち早くテイクアウトやデリバリーにシフトしたことが功を奏した。

生活様式が変わり街が変わった中でどう戦うか

日本を代表する観光都市「京都」は、コロナが収束すれば観光客が必ず戻ってくる街だ。
日本を代表する観光都市「京都」は、コロナが収束すれば観光客が必ず戻ってくる街だ。

 今回の新型コロナウイルスによって、私たちの生活スタイルは変わり、街も変わった。明らかに新しい別の世界が広がっている中で、立地にしろ、業態にしろ、今までの世界で勝てていた方法論が通じるわけがない。今の新しい世界にフィットした戦い方をしなければ、これから先も勝てるわけがないのだ。

 まずは立地について。例えば「新橋」と「京都」というふたつの街を比較する。かたやオフィスワーカーたちが溢れていた街、かたや観光客が詰めかけていた街の一例として挙げる。今はどちらも人がおらず飲食店に取っては厳しい街であるが、コロナ収束後にはおそらく京都にはこれまで同様に戻るだろうが、新橋が元に戻ることは厳しいと言わざるを得ない。

 京都は日本を代表する観光地であり、コロナ収束後に国内の移動が元通りになり、外国人も再び訪日するようになれば、また多くの人が訪れるようになるだろう。京都という街の性格は変わっていないからだ。しかしオフィスワーカーが多かった新橋の場合は、コロナが収束しても人は街に戻ってこないだろう。なぜなら、テレワークやリモートワークによって働き方そのものが変わってしまったからだ。オフィスに行かなくても仕事が出来、それによってオフィスそのものも撤退や減床が相次いでいる。コロナウイルスによって新橋という街の性格は確実に変わってしまったのだ。

「選ばれる理由」がある店が生き残る

 業態に目をやれば、テイクアウトやデリバリーの普及によって、外食と中食の区別がさらに曖昧になっていくだろう。すでにハンバーガーや牛丼などのファストフードや、回転寿司店などでは確立されつつあるスタイルだが、その時の状況や気分に応じて、客が店内で食べたり持ち帰ったりを選べるような、販売チャネルをいくつも同時に持った店や業態が求めらていくはずだ。さらに昼と夜で営業スタイルが異なる「二毛作」や、空き店舗や非稼働時間を「間借り」したり、デリバリーに特化した「ゴーストレストラン」のような業態もさらに増えていくだろう。

 そして、外食と中食が混在していく中で、外食をする意味や、飲食店としてのあるべき姿が同時に問われる時代が来るだろう。前述したように、今の状況でも客足を落としていない店はたくさんあり、行列店は今も行列を作り続け、予約が取れない店は相変わらず予約が取れないままだ。名物料理があったり、サービスが優れていたり、居心地が良かったり、店主が人気者であったり、利便性が高かったり、コストパフォーマンスが良かったりと、コロナ禍においても客が減っていない店は何かしら「選ばれる理由」がある。外食する意味がある店に人は足を運ぶようになる。

 誰もが経験したことのない未曾有の新型コロナウイルスショック。環境が変われば生活習慣も消費行動も市場も変わる。その変化をキャッチして対応出来る飲食店だけが勝ち残る。そのためには業態を変えたり、移転をしたりする必要もあるだろう。しかしそれは敗北でも何でもない。変化を受け入れて新しい事に挑む、ごく当たり前のことなのだ。

※写真は全て筆者によるものです(出典があるものを除く)。