劇的に進化し続ける「海老フライ」の世界

洋食の王道メニュー「海老フライ」が驚きの進化を遂げている

明治時代から愛されている「フライの王様」

「とんかつ(カツレツ)」も明治時代に日本で生まれた洋食メニューだ
「とんかつ(カツレツ)」も明治時代に日本で生まれた洋食メニューだ

 洋食の定番メニューとして、レストランでも家庭でも人気の「海老フライ」。実はトンカツなどと同様に日本で生まれた洋食メニューだ。その発祥には諸説あるが、いずれにせよ明治中期にはすでに海老のフライ、海老のカツというメニューが存在しているため、百年以上の歴史がある料理といって良いだろう。

 海老フライはシンプルゆえに奥深い料理だ。海老の種類やパン粉、そして揚げる油の組み合わせによって、その表情は変わる。一つとして同じ海老フライはなく、その店ごとの個性が海老フライには現れる。今は洋食店だけに止まらず、とんかつ専門店やフレンチレストランなど、他ジャンルの料理店も独自のアプローチで本気の海老フライを作っている。さらに海老フライだけをメニューに置く「海老フライ専門店」も登場するなど、今海老フライが面白いことになっている。

海老そのものを見つめ直した海老フライ

『かつ吉』(渋谷)の「天然特大海老フライ」は世界最大級の天然海老を使用する
『かつ吉』(渋谷)の「天然特大海老フライ」は世界最大級の天然海老を使用する

 1962(昭和37)年、日本橋で創業。半世紀以上にわたり、古くは三島由紀夫や川端康成などの文豪にも愛された老舗とんかつ専門店『かつ吉 渋谷店』(東京都渋谷区渋谷3-9-10)の海老フライは、圧倒的な大きさが特徴。世界最大級の大きさという特大天然海老をぜいたくに使用。揚げる直前に最高級の生パン粉で衣をつけ、新鮮な植物油で「低温で煮るように」じっくりと揚げる。こうすることで素材が持つ旨味を最大限に引き出すことが出来るのだ。圧倒的な大きさの海老フライは、一匹でも十分満足出来る食べ応えだ。

『洋食入舟』(大森)の「ニューカレドニア産天使の海老フライ」は「天使の海老」をぜいたくに使う
『洋食入舟』(大森)の「ニューカレドニア産天使の海老フライ」は「天使の海老」をぜいたくに使う

 大森の洋食店『洋食入舟』の創業は1924(大正13)年。四代にわたり百年近い歴史を持つ「お座敷洋食」の老舗として地元で愛されている。ハンバーグやポークソテーなど代々続く洋食のメニューはそのままに、使用する素材を徹底的に吟味して、上質な食材を使ったワンランク上の洋食を提供している。海老フライには南太平洋の美しい海で育てられた、ニューカレドニアのブランド海老「天使の海老」を使用。海老そのものの甘さと香りが感じられる海老フライは、多い時には一日300本も出るほどの人気メニューになっている。

フレンチスタイルから肉巻きタイプまで

『レストラン サカキ』(京橋)の「エビフライ」はたっぷりのタルタルソースが嬉しい
『レストラン サカキ』(京橋)の「エビフライ」はたっぷりのタルタルソースが嬉しい

 素材だけではなく調理法に新たなアプローチを取る海老フライもある。1956(昭和31)年、京橋に創業した『レストラン サカキ』(東京都中央区京橋2-12-12)の営業スタイルは二毛作。昼は昔から続いている定番の洋食メニューを提供する洋食店。夜はフレンチレストランになる。キッチンに立つ四代目シェフはフレンチで修業後に渡仏したフレンチ一筋の人。だからこそ、早めに上げて最後は余熱で仕上げたり、オリジナルのタルタルソースをたっぷりと敷き詰めるなど、通常の洋食店とは違う手法とアイディアで海老フライと向き合っている。

『君に、揚げる。』(池袋)の「肉巻きエビフライ」は、ブランド豚で海老を巻いた斬新なもの
『君に、揚げる。』(池袋)の「肉巻きエビフライ」は、ブランド豚で海老を巻いた斬新なもの

 群馬のブランド豚「嬉嬉豚」のアンテナショップでもある『君に、揚げる。』(東京都豊島区南池袋2-13-10)の海老フライは、嬉嬉豚のスライスで海老を巻いてから揚げる斬新な肉巻きスタイル。キツネ色に揚げられた大きな海老フライを一口かじると、豚肉の肉汁と脂身の甘みがジュワッと口いっぱいに広がり、海老の美味しさと一つになる。海老フライの新たな美味しさと可能性を感じさせる逸品だ。

 たかが海老フライ、されど海老フライ。どれも同じではない、海老フライの奥深い世界が貴方を待っている。

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※写真は筆者の撮影によるものです。