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2019年に注目すべき「新ラーメン激戦区」とは?

山路力也フードジャーナリスト
2019年に都内で注目すべき新たなラーメン激戦区は意外な街だった

人が集まるところが激戦区になる

渋谷や新宿などのターミナル駅周辺は、常にラーメン店が入れ替わるラーメン激戦区だ
渋谷や新宿などのターミナル駅周辺は、常にラーメン店が入れ替わるラーメン激戦区だ

 新たな一年の始まりとなる1月、雑誌やテレビなどのメディアでは今年一年を占うかのような特集や企画が組まれることが多い。ラーメンで言えば「2019年注目の店」や「今年のブームは?」「今話題のラーメンは?」などといった企画だ。その中でなかなか難しいテーマの一つが「今、東京で最も熱いラーメン激戦区は?」というものだ。

 いわゆる「激戦区」というのは、同じジャンルの飲食店などが密集したような場所であり、身も蓋もない言い方をしてしまえばそうそう毎年コロコロと変わることはない。ラーメンブームと呼ばれて久しいが、新宿や渋谷などのターミナル駅周辺にはやはり実力店が多く集まっている激戦区であるし、高田馬場や池袋などの学生街も昔から激戦区と言われ続けている。

 しかし新宿や渋谷を「ラーメン激戦区」として、メディアで今さら取り上げるわけにもいかない。そこで新たなホットスポットを探していくわけだが、その新たな激戦区も時間が経てばニュース性は薄れていく。最新の情報を扱うことが多いメディアゆえに「今、東京で最も熱いラーメン激戦区は?」というテーマはなかなか厄介なのだ。

ラーメン激戦区になる「条件」とは

 しかしながら、新たな激戦区になるであろう可能性を秘めた街はいくつか存在する。近年では「錦糸町」に行列店や話題店が相次いで登場しており、今後の出店次第では激戦区になっていってもおかしくはない。

 激戦区になるための条件として、まず重要なのは誰もが知っている街であること。いくら話題になっていても、客が行き辛い場所では激戦区にはなれない。客にとっては交通の便が良い、直感的に場所が分かるような街が激戦区になりやすい。そして、ラーメン店側からしても利便性が高く集客が見込まれる街が出店しやすく、結果として多くの店が集まるようになっていくのだ。

 そしてもう一つの条件は、その多くの店の中でも注目を集める店が何店舗か出店していること。数多くのラーメン店が出店されなければ、その街は真の激戦区にはなり得ないが、実力のある数店舗が同じエリアに集中している街の場合、後発の店たちが出店に際して売上げなどの予測も立てやすいため、他の地域よりも出店スピードも早く数も多い。すでに行列店が徒歩圏内に2〜3軒あるようなエリアは、激戦区になる素地や可能性を秘めている。

 今年、2019年に注目すべき新たなラーメンの街はどこなのか。2018年に話題を呼んだラーメン店はどこに出店しているのか。今後、渋谷や新宿にも匹敵するような真の激戦区になる可能性がある街はどこか。私なりに悩んで選んだ3つの「新ラーメン激戦区」をご紹介していこうと思う。

学生街とオフィス街の顔を持つ「田町」

田町の『麺屋武蔵 五輪洞』と『とんこつラーメン藤参』
田町の『麺屋武蔵 五輪洞』と『とんこつラーメン藤参』

 田町、三田のエリアは言わずと知れた慶應大学のお膝元で、かつ数々の大企業が本社を構えるオフィス街でもある。慶應大学の側には『ラーメン二郎』の本店が鎮座している街であり、さらに全国や海外にも出店を重ねている『三田製麺所』の本店や、老舗人気店『麻布ラーメン』の支店もある、以前から実力のあるラーメン店がいくつもあった街だ。

 そんな田町が再注目を集めたのは2018年10月のこと。すでに田町では芝浦側に出店していた人気店『麺屋武蔵』が、新たなコンセプトの新店『麺屋武蔵 五輪洞(ごりんどう)』を三田側に出店。目の前で鰹節を削り、熱々の油を注いで香味油を作るという斬新なスタイルで話題を呼んだ。

 また同じ日に『とんこつラーメン 藤参(ふじさん)』というニューカマーが、五輪洞から歩いてすぐの場所にオープン。こちらは名乗ってこそいないが、横浜を発祥とする「家系ラーメン」の流れを汲む正統派の豚骨醤油ラーメンを提供。慶應大学の目の前で人気を集める家系ラーメン店『武源家』との「家系対決」にも注目が集まっている。

 さらに2018年12月には、芝浦側に人気店『すごい煮干ラーメン凪』が進出するなど、この数ヶ月で注目を集める店が相次いで田町に出店している。隣接する話題の「高輪ゲートウェイ」エリアも含めて、今年以降注目のエリアになることは間違いない。

行列店が相次いで出店している「新宿御苑前」

新宿御苑の『SOBA HOUSE 金色不如帰』と『本家 第一旭』
新宿御苑の『SOBA HOUSE 金色不如帰』と『本家 第一旭』

 新宿は駅周辺はもちろん、歌舞伎町エリアや小滝橋通りなど、街全体がラーメンの街と言っても良いほどのラーメン密集地帯であるが、そんな新宿の中でラーメンマニアたちが注目しているホットスポットが「新宿御苑前」である。

 海外でも人気を集める『MENSHO(麺庄)』グループが、新宿二丁目に『二丁目つけめん GACHI』をオープンしたのが2011年のこと。さらに2013年には新ブランドの『麺や庄の gotsubo』を相次いでオープン。市ヶ谷で創業した麺庄が着実にドミナント出店を進めている場所だった。

 そんな新宿御苑前に2018年5月、幡ヶ谷の人気店『SOBA HOUSE 金色不如帰』が電撃移転し、オープン初日から長蛇の行列を作る店が登場した。その人気は止まることを知らず、11月発売の「ミシュランガイド東京2019』でラーメン店としては3軒目となる「一つ星」を獲得すると、その行列はさらに長いものとなっていった。

 それを追いかけるように、2018年12月には京都で70年以上の歴史を持つ老舗ラーメン店『本家 第一旭』が新宿御苑に都内初出店。『第一旭』と名がつくラーメン店は分派などがいくつもあるが、この店は本家本流が出店したもの。こちらもオープン初日から行列を作り話題になっている。

老舗から話題の新店まで揃う「銀座」

銀座の『銀座 八五』と『銀座 魄瑛』
銀座の『銀座 八五』と『銀座 魄瑛』

 最後に注目したい街はズバリ「銀座」。古くから東京一の繁華街として多くの人が集まる銀座は、どちらかと言えば高級グルメのイメージが強い街かも知れないが、人気実力を兼ね備えたラーメン店が多くある。大正時代に屋台として創業し、1929(昭和4)年から銀座の地に店を構えると内屈指の老舗『萬福』や、1964(昭和39)年に創業したタンメンの名店『中華 三原』、さらには1967(昭和42)年創業の『直久』など、今も老舗が元気な街だ。

 そんな銀座のラーメンに熱い視線が注がれるようになったのは、2013年のこと。狭小な路地裏にオープンした『銀座 篝(かがり)』に長い行列が出来るようになり、ミシュランガイド東京にも掲載されたことと、外国人観光客の増加なども手伝って、銀座が一躍ラーメン激戦区として再び注目されるようになった。

 さらに『むぎとオリーブ』『自家製麺 伊藤』など、ミシュランガイドに登場する新店が相次いだほか、数々の人気ブランドを手掛けて海外にも展開する『けいすけ』グループが、河豚を使った『ふくだし潮 八代目けいすけ』と、鴨を使った『銀座鴨そば 九代目けいすけ』を相次いで出店し、外国人観光客などもラーメンを目当てに銀座を訪れるようになっていった。

 2018年になってもその勢いは止まらない。5月にオープンした『銀座 魄瑛(はくえい)』は、江戸前のシジミをスープに使う「江戸前つけ麺」が話題を呼んだ。さらに12月のオープン当日から、連日長い行列を作り続けている『銀座 八五(はちごう)』は、水道橋などに店舗を構える人気店『勝本』の新業態。ラーメンの常識であるタレを使わない斬新なラーメンが、ラーメンマニアや食通たちによって支持されて、一躍人気店の仲間入りを果たしている。

 毎年多くの店がオープンし、同じ数だけの店が閉店していく、ラーメンの世界は常に戦国時代だ。そして注目を集める街も常に入れ替わっていく。今回選んだ3つの「新ラーメン激戦区」が真の激戦区になっていくのかどうか、ぜひ注目して頂きたい。

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※写真は筆者の撮影によるものです。

フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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