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サンフランシスコで大行列のラーメン店が東京に凱旋出店!

山路力也フードジャーナリスト
アメリカ人を唸らせたラーメンがついに東京へ逆輸入(写真:MENSHO)

サンフランシスコで大成功を収めた「MENSHO」とは

サンフランシスコに2016年オープンした「MENSHO TOKYO SF」。オープン以来行列が途絶えることのない人気を誇る(写真:MENSHO)
サンフランシスコに2016年オープンした「MENSHO TOKYO SF」。オープン以来行列が途絶えることのない人気を誇る(写真:MENSHO)

 日本のラーメンが世界各国を席巻している。「RAMEN」は万国共通の言葉になっているほど、中国で生まれ日本で進化を遂げたラーメンは世界中で愛されるようになっている。その背景には実力のある日本のラーメン店による積極的な海外進出がある。90年代後半から2000年初頭にかけては、香港、台湾、中国、シンガポールなどのアジア圏への進出が多かったが、2010年以降はアメリカやヨーロッパ、オセアニアなどへ広がりをみせている。日本の国民食であるラーメンは、世界食のRAMENになったのだ。

日本の旗艦店となる「MENSHO」(護国寺)はラーメン店のイメージを覆すコンセプトが人気に
日本の旗艦店となる「MENSHO」(護国寺)はラーメン店のイメージを覆すコンセプトが人気に

 2016年2月、サンフランシスコにオープンした「MENSHO TOKYO SF」も日本のラーメン店が出店したもの。運営する「株式会社 麺庄」(代表取締役社長 庄野智治)は、2005年に「麺や庄の」(市ヶ谷)を創業以来、つけ麺業態の「二丁目つけめんGACHI」(新宿三丁目)やラムを使った「MENSHO TOKYO」(春日)、日本の食材にフォーカスした「箸とレンゲ」(阿佐ヶ谷)など、出店するたびに異なるコンセプトとブランディング、メニューを提案して7店舗を展開。2016年、満を持してアメリカ西海岸へと乗り込んだ。

オープン当初は日本人が多かったが、今ではローカルの人々も多い「MENSHO TOKYO SF」(写真:MENSHO)
オープン当初は日本人が多かったが、今ではローカルの人々も多い「MENSHO TOKYO SF」(写真:MENSHO)

 アメリカの人たちにも、東京で人気の味や日本の本物のラーメンを提供したいという思いで出店したという「MENSHO TOKYO SF」。2016年のオープン当初から現在まで、店のオープンからラストまで常時数十名の行列が続く人気店になっている。オープンの頃は日本人が多かった客層も、今では多くの欧米人や現地の人々にも受け入れられるようになったという。

 「本物のラーメンの美味しさや楽しさをお伝えしたくて、アメリカでも日本と同じように限定メニューもお出しして、ラーメンの奥深い魅力を伝えています。また、現地の方たちに受け入れてもらえるように、現地の食材を使用することも意識しています」(代表取締役社長の庄野智治さん)

アメリカで人気の味を東京へ逆輸入

7月13日、「新宿ミロード」にオープンした「MENSHO SAN FRANCISCO」(写真:MENSHO)
7月13日、「新宿ミロード」にオープンした「MENSHO SAN FRANCISCO」(写真:MENSHO)

 そんなアメリカで人気を博した「MENSHO TOKYO SF」が、ついに7月13日に東京へ凱旋出店を果たした。場所は新宿駅に直結した商業施設「新宿ミロード」(運営:小田急電鉄株式会社)。20代の女性をターゲットにしたファッションフロアや、新宿地区最大規模を誇るレストランフロアを擁する人気の施設だが、2018年7月13日にレストランフロアがリニューアルオープン。その目玉として出店したのが「MENSHO SAN FRANCISCO」(東京都新宿区西新宿1-1-3 新宿ミロード7F)だ。

日本でも新たなラーメンファンを開拓したいと語る代表の庄野智治さん
日本でも新たなラーメンファンを開拓したいと語る代表の庄野智治さん

 サンフランシスコで人気を集めている雰囲気をまるごと日本へ持ってきたというコンセプトデザイン。白を基調にした店内は太陽が降り注ぐ西海岸のイメージそのまま。ラーメン店というよりもオシャレなカフェのようなイメージが実に印象的だ。

 「ラーメンは美味しい食べ物というだけではなく、オシャレな食べ物にもなると思っているのですが、海外では特にそういった傾向が強いので、今回はその空気感ごと逆輸入しようと思いました。ファッションビルという、女性のお客様が多い施設であることも出店を決めた理由です。女性にはまだまだラーメンの魅力が伝わりきれていないと感じているので、おしゃれで健康的なイメージのラーメンで日本の女性にもラーメンを好きになって頂きたいと思っています」(庄野さん)

アメリカ人を唸らせた新感覚のラーメンたち

「A5黒毛和牛らぁめん PREMIUM(厚切り)」は午後5時からの限定メニュー
「A5黒毛和牛らぁめん PREMIUM(厚切り)」は午後5時からの限定メニュー

 「MENSHO SAN FRANCISCO」のメニュー構成は、基本的にはサンフランシスコの店と同じになっている。提供されるすべてのメニューに使われる自家製麺にはキヌアを練りこんであるが、キヌアやケールなど健康に留意した食材を使用しているのも、西海岸で人気を集めている食材だから。逆に調味料や調理法などには日本ならではのものを取り入れることにより、ラーメンのみならず日本の食文化もアメリカの人たちに伝えている。

 使用する食材は庄野さん自ら生産者のもとへ足を運び、産地の環境や安全性も確認した上で選んだものばかり。生産者と客の距離を縮める役割を担いたいという「FARM to BOWL」のコンセプトが貫かれたメニューの中でもインパクトある一杯が、黒毛和牛のスライスを大胆にも乗せた「A5黒毛和牛らぁめん」だ。和出汁と牛骨で取った出汁に仕上げで追い鰹した和洋折衷の味わいのラーメンは、食べ進めていくうちに和牛の旨味がスープに溶け出して味わいが深まっていく。絶妙な火入れが施された牛肉は、背中の部位である「リブロース」の芯の部分を使用。厚切りの「PREMIUM」は100gというボリュームで存在感も十分。

看板メニューの「鶏白湯らぁめん」はバリエーションが4種類
看板メニューの「鶏白湯らぁめん」はバリエーションが4種類

 サンフランシスコで一番人気のメニューが「鶏白湯らぁめん」。鶏の白濁スープは極力油分を排してヘルシーに仕上げ、そこに豆乳クリームをブレンドすることでマイルドで食べやすくなっている。アメリカ同様、ノーマルの他にチーズ、抹茶、スパイシーと味のバリエーションを揃えることで、好みの味を選ぶ楽しさも提案。麺を啜るという文化がない欧米人に合わせて短く切り出された自家製麺や、西京漬の手法で作った味玉などもしっかりと再現されている。

 「日本の本物のラーメンを伝えたいという思いがサンフランシスコの方たちに受け入れて頂けました。今度はサンフランシスコで流行っている雰囲気と味を新宿で感じて頂けたらと思っています」(庄野さん)

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※写真は筆者の撮影によるものです(出典があるものを除く)。

フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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