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WEB面接で好感度・志望度を上げる会社と下げる会社の違いは? 就活生の声から考察

やつづかえりフリーライター(テーマ:働き方、経営、企業のIT活用など)
(写真:アフロ)

■就活生の8割がWEB面接を経験

ウイルス感染予防のため、今年は採用活動をオンラインで行う会社が急激に増えました。

リクルートマネジメントソリューションズの調査によると、2021年春採用の選考に参加した全国の大学4年生、修士2年生の約8割がWEB面接を経験したそうです。

出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「大学生の就職活動調査2020」
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「大学生の就職活動調査2020」

学生側の希望としては、1次面接では「WEB面接」、3次面接以降は「対面面接」を望む割合が大きくなっています。

出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「大学生の就職活動調査2020」
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「大学生の就職活動調査2020」

選考の段階によってWEB面接を希望する割合が変わるのは、WEB面接にはメリットもデメリットもあり、目的やシチュエーションによって合う合わないがあるからでしょう。

■採用活動オンライン化のメリット

面接に限らず、会社説明会やインターンシップもオンラインで行う会社が出てきています。このことは、学生と企業の双方に以下のようなメリットが考えられます。

・コストの節約 → 選択肢の増大、場所による不利の解消

多くの会社を受ける就活生にとって、会社訪問のための交通費、宿泊費はバカになりません。採用活動の時期が集中しているため、複数の会社を受けたくても日程調整が難しい場合もあります。

この問題は、首都圏で就職したい地方の学生や、逆に地方にUターンやIターンを希望している学生にとって特に深刻です。

マイナビの「2021年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」によると、地元外に進学した学生が地元企業への就職活動で最も障害に感じていることのトップ3は以下の通りでした。

1.地元までの交通費(26.0%)

2.地元までの距離・時間(18.1%)

3.やりたい仕事がない(12.4%)

オンラインであれば費用が節約できるだけでなく、移動時間がかかりません。複数の会社を受けるための日程調整も容易になります。

企業にとっても、オンラインであれば応募者への交通費・宿泊費の支給を考えなくて良いですし、面接のための会議室の確保等も不要になります。

先のマイナビの調査によると、地元企業が「WEBセミナーを実施していると志望度が上がる」と回答した学生は53.3%と前年比13.0pt増加しています。

出典:株式会社マイナビ「マイナビ 2021年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」
出典:株式会社マイナビ「マイナビ 2021年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」

また、内閣府が今年5月から6月にかけて行った調査によると、「感染症拡大前に比べて地方での就職志向が高まった」という学生が16.6%います(「新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査」)。

地方の企業も採用をオンライン化することで、若者に目を向けてもらうチャンスが増えそうです。

・感染症対策・健康維持

(そもそも、そのために採用活動のオンライン化が拡がっているわけですが)会社説明会や面接会場に多数の人が集まることを避ける、遠方の学生が新幹線やバスなどで移動してこなくて良いようにすることなどは、感染症対策としてとても有効でしょう。学生と企業側の担当者と、両方を守ることになります。

また、学生にとっては慣れない電車などを乗り継いで会場に向かうのに比べて精神的・体力的な面での負担が軽減され、健康維持にも役立ちます。

・企業姿勢が伝わる

このような局面において、採用活動をオンラインで行うという決定を速やかに行い、学生に十分な案内ができたかどうかなどは、企業がリスクをどう捉えているか、社員や学生に配慮しているかなど、はたまたITの活用力があるかなどを示すことになります。

冒頭に挙げたリクルートマネジメントソリューションズの調査では、WEB面接中、非対面でもわかりやすいように大きなリアクションを返してくれた、接続トラブルに際して親切に対応してくれたといったことで、企業への志望度が上がったという回答が寄せられています。企業側も慣れない状況だからこそ、社員の学生に対する姿勢が現れやすいという面があるのかもしれません。

・WEBということに配慮して相槌をしっかりしてくれた。大きめにリアクションをしてくれて安心して話すことができた。

・回線トラブルで面接ができなかった時、日程を調整してもらった。不具合が起きたときすぐに対処してくださった。通信障害などの機器のトラブルは選考に影響しないと伝えてくれた。

出典:「大学生の就職活動調査2020」(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)

また、面接官も自宅から接続していることが分かって好感度が上がったという学生もいます。

・ 面接官の家族の声が聞こえた時に、在宅勤務かつ家族との時間がとりやすいことが分かり、志望度が上がった。

・面接官が自宅から面接して下さっているのがわかり、社会情勢を考慮している会社なんだと感じ、入社後に同じような情勢になってしまった時の事を想像でき、安心感が得られた。

出典:「大学生の就職活動調査2020」(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)

採用活動オンライン化で注意すべきこと

逆に、WEB面接中の実施方法や面接官の態度によっては、学生の志望度が下がることもあります。先の調査には、このような回答が寄せられています。

・URLが開始直前に送られてくる。声がほとんど聞こえない。

・面接官が、WEB面接ツールに不慣れであった。

・WEB会議の1画面に面接官5人が並んでいて、威圧感を感じた。

・相手が集中していないことが伝わってきた。視線を逸らし、何かを見てると画面越しによく分かった。

・自分が話しているにもかかわらず、スマホのバイブ音がしょっちゅう鳴っており、そのたびに画面を確認している様子がすべて画面越しで見えていた。

・通信の不具合が生じた時に、こちらの環境のせいのような言い方をされた。

出典:「大学生の就職活動調査2020」(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)

面接官としては、対面の面接の時と変わらない態度で臨んでいるのかもしれません。しかし画面越しに顔だけが大きく見えてしまうWEB面接の場合、いつも以上に表情や目線に気を使わないと「真剣に聞いていない」と感じられてしまうことがありそうです。

また、話の間合いが取りにくいなどオンラインならではの難しさもあり、面接官も急に「上手くやれ」と言われても難しい面があるでしょう。しかし、オンラインでのコミュニケーションが今後も定着していくであろうことを考えると、相手が話しやすいリアクションのとり方や事前の案内の仕方などを研究し、慣れていく必要があります。

そして、緊急事態宣言発令中のような時を除いては、採用活動のフェーズによってオンラインと対面とをうまく使い分けていくという考え方も必要です。先に触れたとおり、就活生自身も最終面接は対面が良いと考える人が過半数です。入社後もずっとリモートで働くのでなければ、採用を決める前に実際の職場を見て、会社の雰囲気を知る機会を作ることでミスマッチの発生を抑えられるはずです。

フリーライター(テーマ:働き方、経営、企業のIT活用など)

コクヨ、ベネッセコーポレーションで11年間勤務後、独立(屋号:みらいfactory)。2013年より、組織人の新しい働き方、暮らし方を紹介するウェブマガジン『My Desk and Team』(http://mydeskteam.com/ )を運営中。女性の働き方提案メディア『くらしと仕事』(http://kurashigoto.me/ )初代編集長(〜2018年3月)。『平成27年版情報通信白書』や各種Webメディアにて「これからの働き方」、組織、経営などをテーマとした記事を執筆中。著書『本気で社員を幸せにする会社 「あたらしい働き方」12のお手本』(日本実業出版社)

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