「せっかくのGWに遊びに行けないなんて……」という社員の声に応えた企業の制度
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため「ステイホーム」が呼びかけられた今年のゴールデンウィーク、皆さんはどのように過ごしましたか?
どうせどこにも出かけられないなら、コロナ禍のあおりで溜まってしまった仕事を片付けたい、と考えた方も多いのではないでしょうか。
それを勝手にやると「サービス残業」ならぬ「サービス休日出勤」になってしまいますが、公式に「連休中の勤務」を認めた会社も複数ありました。
■祝日の振替やゴールデンウィークの延期を実施した事例
各社とも、出勤できる日にちや、振替休暇をいつ取るかといった点で細かな違いはありますが、「全員テレワーク」が原則で外出せずに仕事できる点、「感染拡大が落ち着いて外出ができるようになったときに代わりの休みを取れるようにすれば、社員のためになるのではないか」と考えている点は共通しているようです。
パターン1)ゴールデンウィークに勤務した場合、休日を後日に振替
SmartHR、ABEJA、READYFOR、ランサーズなどは、希望者が事前に申請した上でゴールデンウィーク中の祝日に勤務することを認め、勤務した場合は後日、振替休日を取ることとしました。
パターン2)ゴールデンウィークを営業日に変更
JX通信社は「ゴールデンウィーク延期」と銘打って、ゴールデンウィーク中の祝日(4日間)を営業日に変更し、既定の夏季休暇の休日を4日増やす特別休暇制度を新設しました。
同じくゴールデンウィーク中の祝日を営業日としたダイヤモンドメディアは、その分の休暇を各自が6月以降に取れることとしています(6月以降も外出自粛等が続く場合は追って検討)。
パターン2のように祝日を営業日に変更すると、基本的には全員勤務することとなります。家族の状況などによっては、連休中は休めた方がいいという人もいるでしょうから、「希望者のみ勤務できる」というパターン1の方が多様な事情に対応しやすくなります。まだ人数が少なくて社員全員の利害関係が一致しやすい会社や、営業日であっても個人の希望で休みが取りやすい会社などは、パターン2でも構わないでしょう。
■急な制度の変更、新設は意図とルールを浸透させることが重要
どの会社も、ゴールデンウィーク前に急遽、新しい制度を作ったようです。そのような場合、既存のルールと矛盾するところや、労務管理上の穴のようなものも生じがちです。
例えばABEJAは、社員が祝日に働くことのリスクとして以下の3つを挙げています。
同社の場合、考えられるリスクと社員や会社のメリット、リスクを回避するためのルールが遵守される可能性などを天秤にかけ、新しい制度の導入を決めたようです。
SmartHRでも、普段は休日出勤の際の振替休日は同月内に取るというルールで給与の未払い状態が生じるのを防止しているところ、今回は特例でゴールデンウィーク中の祝日に勤務した日の2ヶ月後の末日まで振替休日の指定を可能にしたとのこと。このようなシステムが間違った使い方をされないためには、社員に制度の意図とルールをきちんと理解してもらうことが必要でしょう。
■コロナ禍が休み方の見直しにもつながる可能性
ランサーズではゴールデンウィークに勤務できることになり、
「することがないので仕事ができるのはちょうどいい」
「振替休日を利用して外出自粛が解けたら旅行に行きたい」
といった声が挙がったそうです。
そして、実際にゴールデンウィーク中の勤務を選択した社員は全体の15%、その人達の勤務日数の平均は約2日でした。
もともとは実家への帰省を予定していたが取りやめたという社員からは、
「連休中は家で工夫をしながら過ごしていたが3日目を過ぎたあたりから時間を持て余してきたので、振休取得をする予定でいてよかった。溜まっている仕事も他の人が休んでいる間に進められるし、外出自粛解禁後に購買することでほんの少しだが経済にも役立てる。メリットしかないと感じている」
という感想が聞かれました。
感染防止のためにテレワークを導入する企業が増え、働き方の見直しが加速しそうですが、このような事例からは休み方の見直しの可能性も見えてきます。
以前から「日本人は休み方が下手」と言われてきました。だからなるべく休みやすいように、祝日を月曜日にして3連休にするハッピーマンデーの施策などが取られてきたわけです。しかしそろそろカレンダー上の祝日に頼らず、自分たちにとって一番良い休み方を各企業や個人が考え、実行していくことが、個人の幸せと企業の生産性を向上する鍵になるのではないかと思います。