仕事で高いパフォーマンスを出す人は睡眠のとり方も上手

(写真:アフロ)

イギリスBBCのサイトに「Hirune」(昼寝)という日本語が登場しました(該当記事(英語)その内容を日本語で紹介した筆者の記事)。過酷な通勤ラッシュや長時間労働で知られる日本の企業が導入している施策として紹介されているのです。

「2週間にわたって睡眠を6時間以下に制限すると、2晩徹夜したのと同じくらいパフォーマンスが落ちる」という研究結果もあり(参考:Van Dongen HPらの2003年の論文)、企業が生産性向上を追求するなかで、社員の睡眠にまで関心を向けるようになってきたのだと考えられます。

2019年9月3,4日開催『Biz-Sleep Cafe』の会場の展示(筆者撮影)
2019年9月3,4日開催『Biz-Sleep Cafe』の会場の展示(筆者撮影)

実際、仕事でパフォーマンスが高い人は「睡眠のとり方が上手」という傾向もあるようです。

■都内会社員の7割以上が自身の睡眠に不満

“秋の睡眠の日“である9月3日とその翌日、六本木ヒルズには『Biz-Sleep Cafe』というスペースができました。MSD株式会社、KDDI、ドコモ・ヘルスケアの3社が共同で、ビジネスパーソンの睡眠をサポートするツールの展示・体験コーナーを設けたりセミナーを開催したりしたのです。

 株式会社ニューロスペース 代表取締役社長 小林 孝徳さん(筆者撮影)
株式会社ニューロスペース 代表取締役社長 小林 孝徳さん(筆者撮影)

セミナーのひとつでは、「ハイパフォーマーと一般のビジネスパーソンの睡眠のとり方の違い」が紹介されました。登壇したのは株式会社ニューロスペースの社長 小林 孝徳さん。同社は企業向けに「睡眠改善プログラム」を提供しており、これまでに1万人以上のビジネスパーソンの睡眠の実態を見てきているそうです。

同社が都内日勤企業を中心に会社員500名に対して行った調査では、7割以上が自身の睡眠に満足していない、という結果が出ました。場合によっては、職場の過半数の人が寝不足を感じているという可能性もあるわけです。

出典:株式会社ニューロスペース 「2018年度『企業の睡眠負債』実態調査」
出典:株式会社ニューロスペース 「2018年度『企業の睡眠負債』実態調査」

睡眠不足には様々な弊害があります。同調査では、仕事中に感じる眠気の影響として約6割の人が「業務効率の低下」を挙げています。

出典:株式会社ニューロスペース 「2018年度『企業の睡眠負債』実態調査」
出典:株式会社ニューロスペース 「2018年度『企業の睡眠負債』実態調査」

小林さんのお話で「怖い!」と感じたのは、睡眠不足の人は不機嫌になりやすいという話。睡眠不足がネガティブな感情を抑える脳の機能を低下させるのだそうです。これが職場の複数の人に起きていたら、個々人の業務効率の問題にとどまらず、十分に眠れている人まで不愉快な思いをし、それが組織全体のパフォーマンスを引き下げることになりかねません。

■ハイパフォーマーの睡眠パターン

ニューロスペースでは企業の人事部などを通じて社員の睡眠のデータを集めて分析しており、企業側で「この人は仕事のパフォーマンスが高い」と認識している人(ハイパフォーマー)とそれ以外の人とでは、典型的な睡眠のパターンに差が見出せたそうです。

以下はそれぞれの典型的なパターンを図にしたものですが、パッと見ただけでも、確かに「違い」が感じられますね。小林さんは、できるビジネスパーソンが実践している「良い睡眠」のポイントを4点教えてくださいました。

株式会社ニューロスペース 代表取締役社長 小林孝徳さんの講演資料より。(矢印:ベッドにいた時間、濃いグレー:寝ていた時間、薄いグレーの斜線:眠気を感じていた時間 を表す)
株式会社ニューロスペース 代表取締役社長 小林孝徳さんの講演資料より。(矢印:ベッドにいた時間、濃いグレー:寝ていた時間、薄いグレーの斜線:眠気を感じていた時間 を表す)

ポイント1)ベッドで「寝る以外のこと」をしない

ハイパフォーマーの睡眠パターンからは、ベッドに入ってから寝付くまでの時間が短いことが見てとれます。

一般のビジネスパーソンは、ベッドに入ってから本を読んだりスマートフォンをいじったりして、すぐに寝るつもりでベッドに入っていない、という傾向があるようです。

人間の脳は、場所とそこで行った行為をセットで記憶する特徴があるので、ベッドでスマートフォンを見たりすると、脳は「ベッドは情報をインプットする場所」と覚えてしまい、寝付けなかったり眠りの質の悪さにつながります。「ベッドは眠るだけの場所」という正しい記憶を作っていくことが大事だとのことです。

ちなみに、ベッドに入った瞬間に眠りに落ちてしまうのは慢性的な睡眠不足である可能性が高く、決して自慢できることではないとのこと。3分くらいまどろんでから眠りにつくくらいが良いそうです。

ポイント2)帰宅後ベッド以外でのうたた寝をしない

また、一般のビジネスパーソンの図では、朝9時前や21時から24時の間にベッドでない場所で寝ていることがわかります。朝は通勤電車の中、夜は自宅のソファなどでうたた寝をする、という方は多いのではないでしょうか。特に夜の仮眠は、ベッドで本格的に寝ようとしたときになかなか寝られないという問題を引き起こすため、やめたほうが良いようです。

ポイント3)昼過ぎに眠気を感じたら昼寝

2019年9月3,4日開催『Biz-Sleep Cafe』の会場の体験コーナーには、職場のデスクで昼寝をするためのクッションや耳栓も(筆者撮影)
2019年9月3,4日開催『Biz-Sleep Cafe』の会場の体験コーナーには、職場のデスクで昼寝をするためのクッションや耳栓も(筆者撮影)

12時から15時の間、一般のビジネスパーソンの図では「眠気を感じている」ことを表す斜線が描かれています。一方でハイパフォーマーの方は「寝ていた時間」を表す濃いグレーが。つまり、昼寝をしているわけです。

夜によく眠れていたとしても、人間の睡眠と覚醒のリズムの問題で、この時間帯に眠気を感じるのは仕方がないこと。こういうときにカフェインを摂取して我慢する人は多いと思いますが、それは眠気を感じなくするだけで、疲れを取るという根本的な解決にはなりません。ここで短い仮眠をとるのが理想的な眠気の解消の仕方だということです。

ポイント4)起きる時間を一定に

良い睡眠をとる上で、ベッドに入る時間を規則正しくしようとは、あまり考えなくても良いそうです。「まだ寝る時間ではないから」と眠いのを我慢して起き続けていると、眠気のピークを過ぎて逆に眠れなくなってしまうこともあります。「ポイント2」でお伝えしたとおり、「ちょっと仮眠」のつもりで夜にソファで寝たりするのも、本格的な睡眠の質を低下させます。

ハイパフォーマーの人に共通しているのは、「早く眠くなったら早くベッドに入る」ということ。これは日頃の睡眠負債をしっかり解消することにもつながります。また、ベッドに入る時間が遅くなったとしても起きる時間が一定に保たれているのも、共通して見られる傾向だそうです。

■睡眠時間を確保できる働き方も重要

以上、ニューロスペースの小林さんのお話を紹介しました。個人的には、上に挙げた4つのポイントに加えてもうひとつ、「寝る時間を確保すること」が非常に大事だと思います。

働き方改革関連法には勤務終了後から翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設ける「勤務間インターバル制度」の導入が「努力義務」として盛り込まれました。努力義務なのでやらなくても罰則はありませんが、十分に眠る時間をとるためには有効な策だと思います。「よく寝ることは組織全体にとっても良いことだ」という認識を広めるために、上司と部下、同僚同士のコミュニケーションで「眠れてる?」と声をかけあったりしてみるのも良いかもしれません。